過干渉とは?
子育てに正解はなく、親の方針は家庭によって違います。自分が正しいと思って行っていても、世間的な視点とはずれていることもあるでしょう。育児における過干渉とはどのような言動を示すのでしょうか。
親の価値観で子どもを制限すること
過干渉とは、子どもの選択に親が関与しすぎる状態のことをいいます。例えば、子どもが「やってみたい」と思ったことを親がメリットを感じないためさせなかったり、逆に親にとって自慢の子どもにしたいがために、乗り気でなくても強制的に何かをやらせたりします。
子どもはまだ世の中のことを知らないため、何かと親が管理することが多く、気づかぬうちに過干渉になってしまうこともあるでしょう。
しかし子どもであっても一人の人間であり、自我があります。どのような距離で接していくのかは、子育てにおける大きな課題といえるでしょう。
過保護とは意味が違う
過干渉と過保護と混同しがちですが、親と子どものどちらが主導権を握っているかで意味が変わってきます。
親のものさしで測り、子どもの行動を決めてしまう過干渉とは真逆で、過保護は子どもの要求を何でも受け入れてしまうことを指します。
どちらも親が必要以上に子どもの世界に踏み込みますが、過保護は子ども主体でかなえてあげたいがゆえに、本人でもできそうなことも親がやってしまいます。俗にいう「甘やかし」という言葉の同義語といえるでしょう。
過干渉な親に共通する行動
親目線ではよいことでも、子どもにとっては思わしくない行動になっているかもしれません。どのような言動が過干渉になってしまうか確認していきます。
友だちや遊ぶ相手に口を出す
子どもが成長するうえで親からの教育も大切ですが、周りの環境も重要です。子どもはよく遊ぶ友だちの影響を受けやすい傾向があります。友だちといることで、親にとって理想と反する言動を示すようになると「〇〇さんと一緒にいるせいだ」と考え、遊ぶことをやめさせようとします。
ある程度の年齢で自分の主張がしやすい子どもであれば介入することは難しいものの、親の存在が絶対的な幼いころにそう言われてしまうと、仲良くしたいと思っても親の顔や言われた言葉が浮かんでしまって自分の希望を飲み込んでしまいます。
子どもより先に話し始める
過干渉になりやすい人は、常に自分主体で物事を進めがちです。色々話したいという気持ちが強い子どもが話しかけても、手が離せない状況であれば話を聞いてあげなかったり、聞くよりも先に自分のターンにしたりしてしまいます。
例えば、第三者が存在する面談や話し合いにおいても、子どもに質問していることを代わりに答えてしまうなど、自分の意見を押し通してしまう強引さがあります。
勝手に進路を決める
親は生きている時間が子どもよりも当然長いため、「人生の先輩として正しい道筋を立ててあげたい」と考える人がほとんどです。
その考えが行き過ぎると、子どもの人格形成において重要な学校生活をどこで送らせるかなどを、本人の意思に関係なく決めてしまいます。アドバイスするのは親の務めであるものの、親の意見や理想を押し付けてしまうのは過干渉といえます。
褒めるのは思い通りになったとき
赤ちゃんや幼児期は生活における何気ないことでも、達成したときにはオーバーリアクションを取りながら褒めていたのに、いつしか親にとって都合のよいことにしか反応しなくなってしまいます。
子どもがよかれと思ってした行動でも、親が気に入らなければ否定したり、「こうしてほしかった」など自分の意見をぶつけたりします。
また成功したりよい成績を出せたりしたらご褒美を与え、できなかったらペナルティーを科す、というのも好ましくありません。
過干渉になりやすい親の特徴
子育てとは自分自身を成長させるのと違って、別の人格を育てていくため常に模索をしながら進めていくものです。子どものことを思っているつもりでも、過干渉になってしまう親はどのような考えを抱えているのでしょうか。
子どもは親の一部だと思っている
血がつながっていることで、子どもをまるで自分の分身のように感じてしまう親は少なくありません。十月十日一心同体で過ごし、この世に生み出した母親の方が、よりその状態になりやすいでしょう。
また、これまでの人生で何か失敗をしたり、「こうなりたい」と描いていた理想をかなえられなかったりした記憶が色濃く残っていると、子どもには同じ道を進ませたくないと考えます。
できなかったことを代わりに子どもにやってほしいと思い、本人の意思に関係なく推し進めてしまっても、「自分が生んだ人間だから大丈夫」と考えてしまうのです。
子どもが失敗するのを極端に嫌う
子どもの姿に自分を投影してしまう人も少なくありません。子どもが何か失敗してしまったとき、自分が失敗したような気持ちになってしまいます。また、「子どもの評価は自分への評価」と考えるため、子どもが失敗をすることを恐れます。
これまでエリートで失敗をあまり経験してこなかった人や、他人の目を気にしがちでプライドが高い人、過程よりも結果重視のマインドの人は陥りやすいかもしれません。
子どもを傷つけたくないと思いつつ、その本質は自分を守りたいがゆえに過干渉になってしまいます。
過干渉による子どもへの影響
何をするにしても反対され、自分の意思が摘み取られた子どもはどうなるのでしょうか。親主導で成長したその先に影響された特徴を見てみます。
何事にもやる気がなくなる
これをしたいと思っても、常に意見されたり、反対されたりするとだんだん諦めるのが当たり前になってきます。何でも親が決めその通りに行動していることで、自分で考えなくてもよくなってしまうため、積極性が失われてしまうのです。
そして「やってみたい」「これが好き」という要望を思いつくこともなくなり、何に関しても無気力になります。体は大きくなっても思考力が育たず、親がいなければ何も決めることができない状態になってしまう可能性も否定できません。
自信が持てなくなる
過干渉の親は自分の評価ばかり気にするため、子どもが何か結果を残したとしても褒めることをあまりしません。どんなに頑張っても認めてもらえず、何かするときは親の許可が必要となることで、自分に自信が持てなくなります。
そうなると子ども自身が行動を起こしづらくなり、結果「この子は親がいないと何にもできない」と過干渉がさらに進みがちです。子どもは「自分はダメな人間なのかな」と思いながら体だけ大きくなってしまいます。
周囲の目を気にするようになる
親の基準や気分次第で評価を受け続けていると、子どもは「自分はこうしたくても親はどう思うか」という考えが一番に浮かび、常に親の顔色を見て生活するようになります。
個人的な希望がかなわないことよりも、まずは相手の反応の善し悪しが気になってしまうため、親だけに留まらず友人関係にも影響が出るかもしれません。
受け入れてもらえなかったり、仲間はずれにされたりするのが怖いため、周囲の空気に必死に同調するようになります。自分で決めることができなくなっているので、友人の意見を優先してしまうのです。
過干渉にならないための方法
子どものことを考えるあまり、周りが見えなくなってしまうことは誰にでも起こり得ます。過干渉にならないための対処法を紹介します。
信じて見守る
赤ちゃんの時代は何でも先回りして世話をしていて、「かわいい我が子には悪いことが起こってほしくない」と考えるあまり、何でも親がやってしまいがちです。こうなると自主性が育ちません。何でも親基準で行動をさせていると、子どもは挑戦しづらくなります。
自我が芽生えて希望を伝えたとき、親の思いと反していても受け入れてあげることが大切です。ちょっと難しそうで失敗が前提なことをやりたいと希望したときも、命の危険がない限りはまずやらせてあげましょう。
なかなかできなくて手を貸しても、「最後は自分でできた」という実感を持たせてあげれば自信がつきます。失敗させたくない親心があるのは当然ですが、まずは子どもの力を信じて見守ってあげましょう。
選択権を奪わない
悩んだときに、子どもの方からどうしたらよいか相談を受けることがたくさんあります。そのとき、親の思い通りに進めてしまうと、自主性が育ちません。
まだ幼いうちはゼロからすべてを考えるのが難しいため、ヒントとして選択肢をいくつか示してあげましょう。最後は子ども自身に選んで決めてもらうことで、自分で考え判断できるようになるはずです。
決めたことが親目線ではイマイチだったり、「失敗しそうだな」と思ったりしても、そのまま見守ります。失敗することがあっても、よい経験となるはずです。命の危険や他の人へ危害が及びそうなことは避けながら、子どもの意思で行動させてあげましょう。
自立後のことも考える
子どもが親元を旅立つ日はいずれ訪れます。ずっと一緒に暮らしていたとしても、何か事故などが起きない限りは親の方が先にこの世を去るため、残された子どもは何もできないまま生活しなければなりません。
ついつい口出してしまうことはあっても、それが本当に子どものためになるのか、自分のためでないかを今一度考えましょう。親から離れたとき、どのような人になっていてほしいかということを忘れないようにするのが大切です。
まとめ
子どもにはこうなってほしい、という思いは親になれば誰しも持つものです。自分が色々してあげないと最初は生きることすら難しいため、その考えのまま何かと手や口を出してしまいがちです。
しかし体は小さくても子どもは一人の立派な人間で、個人の意思を持っています。愛情はかけても過干渉にならないよう、子どもを信じて見守りながら育児をしていきましょう。