この不妊の原因のひとつといわれるのが“卵子の老化”だ。卵子が老化すると、妊娠・出産にどのような影響を及ぼすのだろうか。東邦大学医療センター大森病院産婦人科准教授の片桐由起子先生に話を聞いてきた。
「卵子が老化すると、細胞が分裂する際に遺伝情報をつかさどる染色体が均等に分けられなくなる確率が上昇します。その原因として、卵子の細胞質の中にあるミトコンドリアの機能低下があげられます。」(片桐さん 以下同)
細胞のなかには46本の染色体があり、左右に引っ張られて分裂する。受精が起こる際に本来なら染色体が23本ずつ分かれるものが、ミトコンドリアの機能低下が生じると分裂するときに均等に分ける能力が低下し例えば22本と24本というようになってしまうのだとか。
「ミトコンドリアの機能低下は、染色体の数的異常が増える原因になります。染色体の数的異常症の中には、21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミーなどがあります。トリソミーとは、本来2本であるはずの染色体が1本多く、3本あることを指します」
年齢を重ねてから子どもを産むと、障害児が生まれやすいという声もある。たしかに染色体の数の異常をもった子どもが生まれる可能性は上昇するが、それ以外の先天性疾患の子どもが生まれる可能性は年齢では変わらないそうだ。
「卵子の老化はほかにも、『妊娠しにくくなる』『流産しやすくなる』などのリスクをはらみます。着床率の低下や流産は、染色体の異常がある受精卵が自然淘汰されて起こっている場合が多いのです」
加齢に伴い、卵子の質の低下は進んでいく。ところで、1人目を生んだことがあれば、2人目も妊娠しやすいかというとそうではないそう。
「経産婦は妊娠した経緯があるので、『妊娠できない理由が新たに起きていない限り、おそらく大丈夫であろう』という目安に過ぎないだけなのです」
卵子の老化を知っていたらもっと早くに計画したのに…とならないよう、女性の体の変化について知っておくことが肝心といえそうだ。
(石水典子+ノオト)