しかし、そんな子どもとテレビの関係について、「見せるのが問題ではなく、どう見せているかが問題」と語るのは、子どもの生活と保護者の関係を研究しているベネッセ教育総合研究所の木村治生さん。どう見せると、テレビと上手に付き合えるの?
「テレビは見方次第で、考える力を育てられます。ニュースを見てどう考えたか、ドラマを見て何を感じたか、こうしたことを日々の会話を通じて引き出していきましょう」
テレビは黙っていても情報が流れてくる“受動的”なメディア。これを「能動的なものに変えていくことが大切」なのだという。さらに、こうしたコミュニケーションにおいては、「親の見方を伝えることも必要」と木村さんは続ける。
「たとえば、子ども向けの映像などでしばしば見られる勧善懲悪のストーリー。これは子どもにとって感情移入しやすく、とても分かりやすいもの。ただ、異質な他者を暴力で排除するという見方も成り立ち、“差別”にもつながりかねません。そういうときは、『お父さん(お母さん)はこんな解決の仕方もあると思うけど、どう思う?』と聞いてみましょう。子どもはそうした問いかけによって、別の見方を学び、考える力を育みます」
●テレビは子の性格や環境に合わせて柔軟に取り入れる
しかし、木村さんはこうしたやり取りのすべてを「教育のため」と割り切る必要はないと言います。
「テレビは本来、娯楽的要素の強いもの。特に習いごとや塾などで忙しい日々を送っている子どもたちには、受動的に見ることが“息抜き”になっていることもあります。また、幼児にとっても、好きな映像が心を落ち着かせるために必要な場合もあります。すべてが教育であると考えると、子育ては窮屈になります。子どもの性格や環境に合わせて、テレビを柔軟に取り入れていくことが大切です」
テレビが「悪者」だった時代は今や昔。先入観に捕われることなく、上手に付き合っていきたいものだ。
(根岸達朗+ノオト)