自身も両実家に助けてもらいながら2児を育てた、NPO法人孫育て・ニッポン理事長のぼうだあきこさんは、祖父母の育児介入のメリットを次のように話す。
「例えば、保育園に通う息子がインフルエンザになったとき、仕事を休めないパパママの代わりにばあばが駆けつけて看病してくれた、という話をよく聞きますよね。これ、当たり前のようで実はすごくありがたいこと。民間のシッター会社に同じことを依頼したら、一体いくらかかるのか一度計算してみてください。金額に換算したら、そのありがたみが身にしみるはずです。電話一本で来てくれて無償で看病してくれる存在なんて、祖父母以外にまずいませんから」(ぼうださん 以下同)
パパママにとってはありがたい限りだが、孫と関わることは祖父母たち自身にもいい影響を及ぼすのだという。
「女性陣はおしゃれになる方が多いです。外に出る回数や他人と会う機会が増えるので、身なりにも気を遣うようになります。孫育てを通して若返ったおばあちゃんたちを今までたくさん見てきました」
では、おじいちゃんになった男性陣はどうだろう?
「不思議なことに、みなさん口をそろえて『孫の顔を見た瞬間、もうこれでいつ死んでもいいと思った』とおっしゃる方がとても多い。女性は出産を通じて生殖の役割を終えた実感を得られるけれども、男性はわが子だけではまだ足りないのか、子の子、つまり孫の顔を見てようやく自分も動物的役割を全うできた、と思えるようです」
●世代を超えた交流がもたらすメリット
そしてもちろん子どもたち自身の成長にも、じいじ・ばあばとの交流は目に見えないたくさんのメリットがあるという。
「親の愛情と祖父母の愛情は似て非なるもの。祖父母は言ってしまえば孫の“絶対の味方”です。親以外にも愛情とぬくもりを与えてくれる存在がいるという事実は、子どもの情緒を安定させ、自己肯定感を育んでくれます」
さらに、祖父母と一緒に過ごす時間が多いほど、子どもには自己肯定感にプラスして、多様性を受け入れる心も育まれていくという。
「家族というのは社会の縮図。祖父母とのコミュニケーションを通じて、子どもは親以外の価値観や世界を知っていきます。じいじ、ばあば、パパ、ママ、それぞれが違う趣味を持ち、違う考え方をするという多様性を肌で知ることで、子どもの心には他者への思いやりや理解が育まれます」
世代を超えた交流は親、子、祖父母、それぞれに多くの学びと笑顔をもたらしてくれるのだ。
(阿部花恵+ノオト)