私たちが知らず知らずのうちに「罠」に陥ってしまう理由
ヴィクトリアは私たちの身近にひそむ「罠」の特徴として以下の4つを示します。
1. 魅力がたっぷりに見え、知らぬ間に引き寄せられてしまう
アレックスが陥った「金・借金」の罠はまさにこれ。世の中には、家や車、素敵なレストランでの食事など、お金を消費することで手に入れられる魅力的なものがあふれています。
きちんと計画を立ててお金を管理しなければ、流されるまま、遊びや楽しいことばかりを優先してしまい、あっという間にお金はなくなります。収入の範囲内で暮らすためには、規律と覚悟が欠かせません。
それがなかなかできないのは、カードやローンといった姿の見えないお金でとても簡単にものを手に入れられる時代になっているから。サイン一つで手に入るものにどれだけの価値があるのか意識することなく、簡単にお金が使える快楽に引き寄せられてしまうのです。
2. いっときは楽しく過ごせるが、やがて、苦しい思いを永遠にすることになる
お金を使う快楽は返済の苦しみと表裏一体です。返済の目途がつくからとさまざまな買い物をした結果、収入に見合わない返済に追われ続けることがあります。また、いま借金をしていなくても、子どもの教育費・老後の資金などを考慮して資金計画を立てなければ、いずれ借金の罠に陥ることになるのです。
このように罠は、人間関係、仕事、学びなど、人生におけるさまざまな場面で私たちを惑わしてきます。そして、私たちは「あとで苦しい思いをすることになろうとも、今のこの心地よさには代えられない」と考えて現実から目を背けてしまうのです――。
「このことを忘れないで。借金は、あなたの敵以外の何ものでもないこと、そして泥沼状態になってしまうことを。それから、借金がどんどん増えていくことに関しては、それにかかる利子が、とくに問題ね」(本書96ページより)
3. 落ちたら最後、抜け出すのは至難の技。抜け出し、二度と落ちないようにするためには、これまでにないアプローチを使う必要がある
「最悪のことが起きる前に抜け出せばいい」
誰しもがこのように考えるものです。しかし、いざ最悪の事態が目の前に迫ったとき、ありがちなアプローチを使ったところで抜け出すことは容易ではありません。
アレックスの場合もそう。計画を立ててそれをきちんと守り、どんなに大変な時でも自制心を働かせ借金を返済すると決めた後も、結局はお金の魅力に抗えず、かえって借金を重ねる結果に――。そこで、1つのアプローチとしてヴィクトリアは「借金返済お助けヘビ」という、独自のスコアボードを作ることを提案します。
方法は簡単で、ロール紙に長い胴体のヘビを書き、借金1000ドルごとに、線で区切りをいれていきます。その長い長いヘビを部屋の中の目につく場所に張り出し、少しでも返済するたびに、ヘビの胴体に入れた区切りの線を切っていくのです。
これを取り入れたことで、形としてあやふやだった借金の総額、返済の目標を実感することができるようになり、アレックスの行動も少しずつ変わっていきます。
そもそも、罠にかかる人は正しい道に戻るための意志が弱い傾向にあります。だからこそ、正当法とは違うアプローチに目を向けてみる必要があるのでしょう。
4. 目標に向かって前進するのを不可能にし、私たちの行動を制限する
「金・借金の罠」に限らず、自身の意見や考え方が正しいと決めつけることによって人間関係を壊してしまう「夫婦・恋人関係の罠」、取るに足らないものに夢中になり、目標を見失ってしまう「焦点の罠」、仕事に対して情熱を失ってしまう「キャリアの罠」など、わたしたちの行動を制限するのが、罠の罠たるゆえんです。
気づけば引き寄せられ、入り込んだら最後、つかのまの心地よさに浸っているうちに目標を見失ってしまう。
だからこそ、私たちは罠に対して、もっと神経をとがらせる必要があるのです。思いどおりの状態(自分が望む状態)になるために、現在の状況を認識する。それが罠から遠ざかるための第一歩といえるのです。
著者は『7つの習慣』の著者、スティーブン・コヴィー氏の息子
著者の1人であるデビッド・M・R・コヴィー氏は人材教育・研究の分野における世界的に著名な専門家として知られています。また、人生哲学の決定版『7つの習慣』の著者、スティーブン・R・コヴィー氏の三男として生まれ、その考え方の中で育ち、思想を受け継ぐ人物です。
同じく人材教育・研究の分野における専門家である、スティーブン・M・マーディクス氏と強力なタッグ組み、読者が仕事や人生で成功しやすくなる原則と、それを妨げる7つの落とし穴(罠)を伝えたいという思いから本書が生まれました。
人生の定理ともいうべき成功原理や法則は数多くあります。その一方で、その成功を妨げる人生の落とし穴に人々は知らず知らずのうちに陥るものなのです。人生にひそむ罠を回避するためには、まず、それが「罠だ」と気づく必要があります。
主人公アレックスの気づきを、自分の経験と照らし合わせたとき、すでに陥っている・これから出くわすかもしれない罠に気づく人もいるかもしれません。
罠は、きわめて魅惑的であり、はっきり罠とわかるとは限りません。物語のなかで、アレックスはヴィクトリアとの対話を通して自身が陥っている罠に気づきます。さらに、そこから抜け出すことを選択し、行動を起こしていきます。この物語の目的は、身近に潜む7つの罠がどのように私たちをとらえ、どう抜け出せなくするかという点に、スポットライトを当てることにあります。
さらに本書は様々な罠から抜け出す方法を具体的に明示し、私たちを導いてくれます。
ときに反発しながらもアレックスをサポートしてくれる2人の可愛い子どもたち、罠から抜け出そうとするたびにさまざまな誘いでアレックスの邪魔をする同僚など、個性豊かな登場人物たちも本書の魅力の一つです。
人生の落とし穴を明らかにし、人生を輝かせる手助けをしてくれる『やってはいけない7つの「悪い」習慣』。読み終えたとき、あなたの人生にとって「本当に大切なもの」が見えてくるのではないでしょうか。
引用書籍:やってはいけない7つの「悪い」習慣
著者:デビッド・M・R・コヴィー、スティーブン・M・マーディクス 著/野津智子 訳<
世界的ベストセラー『7つの習慣』のスティーヴン・コヴィーの息子らによる「成功を妨げる7つの習慣」とは? 幸せな人生を歩んでいた主人公の転落から、メンターのアドバイスによる再起のストーリーを通して「落とし穴」を避ける・抜け出す方法を伝授する。
記事提供:日本実業出版社
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