やまざきこどもクリニックの院長・山崎公恵先生はこう話します。
「子どもの肥満は、まだ成長段階の途中であるということから、大人の肥満とは大きく違います。幼稚園から小学校にかけて、非常に背が伸びますので、一時的に太っていたとしても身長の伸びとともに自然にスッキリ細くなることも多いんです。極端なダイエットなどは決してしてはいけない時期ですし、太っていても、元気があり、規則正しい生活をし、過食をせず、スポーツを取り入れた生活をしているのであればあまり問題はありません。それ以上太らないようサポートしてあげれば十分です」
ただし、中等度、高度肥満などの場合には、やはり注意が必要だそう。
「子どもの場合、大人のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のように、見た目が痩せているのに実は内臓脂肪がたまっているということはまずありません。ほとんどが“皮下脂肪型肥満”ですが、中等度、高度肥満のお子さんの場合には、内臓脂肪がついてくるので動脈硬化などの生活習慣病と結びつく恐れがあります。こういった場合には、適切な指導のもと減量も必要となってきます」(山崎先生 以下同)
●子どもの健やかな成長は、身長と体重のバランスが重要
子どもの肥満対策には、まずお子さんの成長状況と体型をきちんと把握することが何より重要。
「お子さんを肥満にさせないためには、定期的に身長と体重をチェックし、推移の異変を見逃さないことです。子どもの場合は、身長がどんどん伸びますので、身長の変化も重要なチェックポイントなんですね。つまり、体重だけでなく身長とのバランスを見逃してはいけません」
肥満度は、身長と体重から知ることができる。
「大人の肥満度の判定で一般的に使われるのがBMI(ボディ・マス・インデックス)という方法。BMI値=体重(kg)÷身長(cm)×身長(cm)で、25以上が肥満とされます。子どもの場合もBMIを使いますが、年齢や身長によって標準値が変化しますので、調べるときはその点には十分注意をしてください」
ほかにも、文部科学省が発表している性別・年齢別・身長別標準体重を求めて、そこから肥満度を割り出すという方法もあるそう。
「肥満度の場合は、肥満度(%)=実測体重(kg)-身長別標準体重(kg)÷身長別標準体重(kg)×100で計算し、肥満度が20%以上だと肥満ということになります」
これらの計算が面倒と思われる方は、ネットなどで身長と体重の数値を入れるだけで子どものBMI値や肥満度を計算してくれるサイトもあるのでおすすめ。さらに、子どもの成長状況を把握するのに、“発育曲線”を使う方法も。
「乳幼児なら母子手帳に、児童なら学校の身体測定のカードなどに必ず“発育曲線”というグラフがあります。これは、その年齢の子どもたちの身長・体重のデータをもとに平均を割り出し、お子さんがどのへんに位置するかの目安をチェックするグラフです。このグラフにお子さんの測定結果を記入していき推移をチェックしましょう」
ただし、このグラフは見方が重要ポイントだそう。
「このグラフをみるとき、親御さんはどうしてもわが子が平均に当てはまっているかどうかを気にされますが、これはあくまで目安。大事なことは、成長の曲線に添ってその子なりにキレイなカーブを描いているか、そのバランスです。突然身長に対して体重が急カーブを描いていたりするときは要注意。目で見てお子さんの成長の変化がわかるのでとてもいい方法だと思います」
なかなか日々の生活をあれもこれも改善しようと思ってもできないもの。でも、定期的なチェックをしっかり心がけるだけでも、お子さんの肥満への危険信号にいち早く気づけるのではないでしょうか。
(構成・文/横田裕美子)