「子どもの肥満の場合は、太っているからといって大人のように生活習慣病に直結するということはまれです。ただ、一部の中等度・高度肥満の子どもには、実際に生活習慣病になるケースもあるので注意と改善が必要です」
そう話すのは、やまざきこどもクリニックの院長・山崎公恵先生。小学校高学年くらいからは要注意の時期だという。
「乳児期は、ぷくぷくしていて体脂肪も多いのが普通。さらに幼児期・小学校低学年くらいまでなら多少ぽちゃっとしていても害がないことのほうが多いです。ただ、この時期に太りすぎてしまうリスクとしては、どうしても動きが悪くなり、運動も嫌いになり、運動が嫌いだからもっと動かない…という悪循環に陥ること。つまり、肥満への芽はすでこの時期にあるということです」
高学年くらいになってくると、今度は健康面へのリスクが出はじめるそう。
「高脂血症や高血圧、Ⅱ型の糖尿病になる子もでてくるんです。こういった病気は、普通は20代、30代から積み重なるものですが、10歳、11歳の時期から血管に異変があればそれは怖いこと。やがては動脈硬化、さらに心筋梗塞にもつながりかねませんね」
また、意外な病気が肥満の子どもに起こるという。
「よく大人の間で話題になった“睡眠時無呼吸症候群”が高度肥満の子どもにみられることもあるんです。肥満などが原因で気道が狭くなるころから、睡眠中に呼吸が浅くなったり、呼吸が一時的に止まったりする病気で、もともと扁桃腺が大きい子どもがさらに太っていることで圧迫されて空気が通りにくくなってしまうわけです」
●子どもの肥満は、コンプレックスにつながるリスクも
また、小児肥満のリスクは、健康面だけにとどまらないという。
「子どもの場合、太る時期によって性格に影響してしまうこともあるといわれています。小さい頃は、ぽっちゃりしていても周囲は可愛いと思ってくれることが多く、本人も太っている自覚がないためのびのび明るくふるまいます。しかし、小学校高学年ぐらいに太り出してしまうと、周囲から悪口を言われるなどしてコンプレックスを持ってしまい、性格も卑屈になってしまうケースもありますので、早期に改善してあげることが必要です」
また、最近ある時期の子どもに多くなっている肥満への落とし穴についても、山崎先生が教えてくださいました。
「もともとスポーツをしていたお子さんが、中学校受験を機に一気に肥満になってしまうケースが増えています。塾通いなどで運動ができなくなる環境になっても、食欲はスポーツをしていたときと変わらないんです。しかも、塾で遅くまで勉強して帰ってきて食事をするなどして、あっという間に太ってしまいます。この時期にさしかかるお子さんは、ぜひ注意してあげてください」
肥満は進めば進むほど改善が大変なもの。肥満のリスクを回避するためには、どんなリスクがあるかを正しく知り、お子さんの年齢や生活環境の変化などに応じて早いうちにきちんとした対策を講じることが必要ですね。
(構成・文/横田裕美子)