●さらに厳しさを増す、老後の家計
藤川さんは、これからの時代「老後貧乏」家庭はどんどん増え続けると予測します。その原因は、年金などの社会システムの問題だけでなく、晩婚化といったライフスタイルの変化にも関係があるのだとか。
「老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられていることをご存じの方は多いでしょう。それなのに、多くの企業では60歳でいったん定年退職させられ、それ以降は『継続雇用』となって収入はグッと下がってしまうわけです。
それに加え、近年は子どもを産む年齢が高齢化しており、定年後にも教育費の負担が続くケースも増えています。子どもが就職せず大学院に進学する、フリーターやニートになってしまい教育費がかかり続けることもあり、そうなると老後貧乏一直線です」(藤川さん、以下同)
こうなると、もはや自分たちの老後資金どころではなく、定年後もたとえ低賃金でも働き続けるか、少ない年金を切り詰め切り詰め、爪に火をともすような生活を強いられることになってしまいます。
●頼みの年金も2割減、受給開始時期の引き上げも
さらに、その年金でさえ、これからはかなり目減りしていくと予測されています。
「いまの若い世代が年金受給者になる頃には、受け取れる年金の価値が2割削減されるといわれています。また、現在は65歳から支給されている受給開始時期も、68~70歳くらいまで後ろ倒しになることが予想されます。これまでは、国の年金や会社の退職金で老後は悠悠自適だったわけですけど、同じようにはいかないと思われますね」
聞けば聞くほど厳しい時代。そんな逆風のなかで、一般のビジネスパーソン家庭が自分たちの老後資金を確保するためには、教育費や養育費がかからなくなる「子どもの独立後から定年退職までの間が勝負になる」と藤川さんはいいます。
「これまでのビジネスパーソンは、年功序列で収入が上がったため、教育費を払いつつ老後資金も貯められました。そのため、現在の子育て世代の親世代にあたる50代60代が働いていた頃は、あまり工夫をしなくても家計って運営できたんです。
でも、これからは一生懸命働くのは当たり前で、さらに家計を工夫していかないと老後に人並みの生活が送れない時代。何も考えないと老後に貧乏が待っているという時代になっていますね。例えるなら、下りのエスカレーター。止まっているとどんどん落ちる一方です。人並み以上の暮らしをするなら、下りに逆らって上らないといけない。そういう時代なのです」
もはや老後の貧乏は他人ごとではない様子。今なんとかやっていけるから大丈夫、とはいかない時代に突入しているようです。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)