●「何をしたらいいのですか?」と聞くエリートが急増
「最近では文科省も、“予測困難なこれからの時代において、主体的に考え、行動できる人材を育成することが望ましい”と強調している。主体性はこれからの教育の柱です」と語るのは、数々の教育書を手掛け、「V-net教育相談事務所」を主宰する松永暢史氏。
「主体性とは何か? 実はそれこそが、本来学問をすることの主要目的なのです。主体性とは、“自分で判断して自己責任で行動できる”ことを指し、近年の新入社員、特にエリートたちに不足している要素でもある。主体性がないから責任ある行動がとれず、自分の人生も見極められないために幸福な道を歩めないのです」(松永氏 以下同。)
ペーパーテストでは素晴らしい成績をおさめるにも関わらず、いざ研究会議になると、誰も発言せずに下を向いてしまう…能力は高いのに、何かを思いつくことができずに、「僕は何をしたらいいのですか?」と聞くエリートたちが急増しているという。
「小さい頃から与えられたことをこなし、友だちと外で思いきり遊ぶ代わりに塾へ通い、厳しい受験勉強を経て、通学時間がかかる進学校に入学…念願の東大に入ったところで、エネルギーも発想力もない。そういう人材が多くなってきている。それはおそらく、日本の教育システムや試験制度が間違っているからだと分析します」
文科省はこの状況を、「極めて遺憾だ」とやっと気づき始めた。「東京オリンピック」で賑わう2020年には、センター試験が廃止され、新たな大学入試制度がスタートする予定。この新たな入試制度のキーワードになっているのが、この「主体性」であると松永氏は語る。
「10倍以上の倍率を誇る都立の中高一貫校では、早くもその取り組みが行われています。資料やグラフを掲げて対話文を読ませ、答えを文章で記述するものや、パズルを解くように自分で考えて答えを出さなければならない問題、600字の課題作文が出題され、これらの能力を兼ね備えた子どもたちが合格を手に入れるのです。ここで求められるのは、主体的に判断し、行動考察してそれを言語化する能力そのもの。今後は私立中でも、この傾向が強くなることが予想されます」
その主体性は、遊びのなかで獲得できることもあるという。
「主体性は、友だちと夢中で遊んだときの一体感や好奇心、感受性に目覚めているときにこそ育まれるもの。“人生を楽しむこと”が上手な人間に育てることが大事なのです。大人になって必要とされるエネルギーを獲得するためにも、子どもは遊ばなければならないのです」
日々の声かけ、ライフスタイルを見直すことで、将来を見据えた子育てを…子の主体性獲得に向けて、今から始めてみては!?
(取材・文/蓮池由美子)