自我が芽生えてからの双子の育て方

第4回 双子の育児ってどんな感じ?
顔や体格がそっくりな双子でも、大きくなるにつれてそれぞれにしかない特徴が現れてくるもの。それぞれに自我や個性が生まれてからは、どんな風に接していけばいいのだろう? 

似ていても別の人格を持つ、双子ならではの育児で気をつけるべきことは? 双子育児の実体験を描いたコミックエッセイ『双子の親になりました』の著者で漫画家・イラストレーターの三豊ちぇりさんに話を聞いた。

●親のエゴで競争心をあおらない

「うちの双子姉妹はもう小学2年生に。性格も体質もよく似ていたので、2人同時に接することへの悩みは小さいころはほとんどありませんでした」(三豊さん 以下同)

だが、2歳を過ぎてあいさつや食事、着替えなど、基本的な生活習慣を少しずつ身に着けていく段階になってからは、「競争させないこと」を強く意識していたという。

「早く食事を済ませてほしい、おもちゃを片付けてほしいとどんなに内心では思っていても、『どっちが先に食べ終わるかな?』『早く片付けたほうが勝ち!』と競争させることは絶対しないように心がけていました」

競争意識をかき立てて、行動を急がせること。双子ママならずとも、子育て中の親ならやったことがある人は多いだろう。だが互いの距離が近すぎる双子だからこそ、大人のエゴで優劣を競わせる関係にはさせたくなかった。

「年齢が離れたきょうだいの場合はわかりませんが、同じ年齢、同じ性別の双子の場合は、ささいな競争心が将来の劣等感や不仲の原因になってしまうのでは、と心配でした。たとえゲーム感覚でも、家庭内では互いを競わせるようなことはしないよう気をつけました」

双子の男の子

●周囲の安易な比較が、双子の性格形成に影響を及ぼすことも

だが、成長とともに行動範囲が広がってくると、いくら家庭内で気をつけても今度は周囲の「評価」が双子たちの性格形成に影響することも。

「『こっちの方が喋るね』『こっちはおとなしいね』など、親である私に言ってくださるのは大丈夫なのですが、双子本人の耳に入ると『私は元気なんだ!』『私はおとなしいんだ』と子どもらが意識的にそう振る舞ってしまうこともありました」

その影響で、「元気」と言われた双子姉がときにTPOをわきまえずあえてやんちゃに振る舞ってみたり、「おとなしい」と言われた双子妹が「(姉は挨拶しているけど)私はおとなしいから挨拶しなくていい」と開き直ったりした時期もあったそう。

「姉が『お姉ちゃんはやっぱりしっかりしてる』と言われると、妹は『私は妹だから~』とちょっとすねて変な甘えが出てきたことも。2人ともお姉ちゃんになりたかったらしいんですが(笑)、そんな風に本人たちが“2人でワンセット”という意識になる時期もありましたね」

他人から見れば姿形が似ている分だけ、「じゃあ中身(性質)はどうなの?」と不思議に思ってしまうのも無理はない。だが本人たちの前では、安易な比較は口にしないのが大人の務めといえるだろう。身近に双子ちゃんがいる人は心しておこう。

●それぞれの長所を褒めて伸ばしていく

その後、三豊家の双子姉妹がそれぞれの長所を伸ばす転機となったのは、小学校に入学して別々のクラスになったことだった。

「環境が変わったことで、性格の違いがさらに明らかに。それぞれのいいところを褒めて接していくうちに、今ではお互いの長所・短所を尊重しあうとても仲の良い姉妹になりました。お菓子は自分たちで話しあって、1粒単位まできっちり平等に分けあっています(笑)」

自分たちが育てているのは「双子」というセットではなく、違う個性を持った2人の人間だということ。双子育児中のママ&パパはそのことを常に肝に銘じておこう。
(阿部花恵+ノオト)

お話をお聞きした人

三豊ちぇり
三豊ちぇり
1974年兵庫県生まれ。2003年よりイラストレーターとして雑誌・書籍の挿絵、絵本、漫画など多方面で活動。32歳で双子姉妹を出産。著書に『双子の親になりました』がある。
1974年兵庫県生まれ。2003年よりイラストレーターとして雑誌・書籍の挿絵、絵本、漫画など多方面で活動。32歳で双子姉妹を出産。著書に『双子の親になりました』がある。