「卒婚」とは文字通り「結婚を卒業する」ことだそうだけど、そもそも「離婚」でも「別居」でもない「卒婚」ってどういうもの?
2004年に“卒婚カップル”たちを取材し、『卒婚のススメ』(静山社文庫)を執筆した杉山由美子さんに聞いた。
「『卒婚』という言葉は、最近は長い結婚生活のなかで相手を嫌になり、避ける意味で使われることが多いですが、もともとはもっとプラスの意味のもの。子育て期が終わったシニア層などが、人生の後半戦を考え、結婚生活を続けながらも自分のやりたいことをしようという考え方なのです。必ずしも結婚=同居にこだわることなく、夫婦のきずなを保ちながらも別々に暮らすこともあります」(杉山さん 以下同)
長生きが当たり前になった時代。それはもちろん素晴らしいことだが、自分の後半の人生を「夫の世話」「実父母・義父母の世話」に明け暮れて終える女性も少なくないという。
●結婚にも「メンテナンス」や「リフォーム」が必要
「人生がすごく長くなっているいま、夫婦のあり方、結婚の形も見直す必要があると思います」と話す杉山さん。そこで提案するのが、「夫婦のメンテナンス・リフォーム」だ。
「家だってずっと住んでいたら、あちこちにガタがきますよね。結婚生活や夫婦関係だって、それは同じ。10年経ったら、子育てが終わったらなど、人生の節目ごとに見直すメンテナンスやリフォームが大切なのです」
長年一緒に暮らしていると、相手を完全に理解した気持ちになってしまうもの。あるいは、「この人は、こういう人だ」と一方的に思い込んでしまうことも多い。
だが、自分も変われば、相手も変わるもの。子育て時代は互いに忙しく、猫の手も借りたい状態であるため、互いの気持ちや変化に気づかず過ぎていくが、一段落したときなどに「ズレ」に気づくというパターンが多いそうだ。
「人生の後半戦に、夫婦でひきこもってしまうのはもったいない。意識を外に向けて活動すると、もっと楽しくなると思うのです」
人生の節目ごとに結婚生活や夫婦関係を見直してみる。そのうえで、互いに直せるところは直し、さらに新しい一歩を踏み出すことを選ぶのが「卒婚」の本来の意味といえそうだ。
(田幸和歌子+ノオト)