もしも子どもに、言ってはいけないひとことを言ってしまったら…

第2回 10歳からの子育てを見直す!
思春期を迎え、反抗し、まったく言うことを聞かなくなったわが子に、つい言ってしまう余計なひとこと。「そんな子は、もう出て行きなさい!」「なんでこんなにできないの! バカじゃないの!」「そんなに言うことを聞かないなら、もうお母さん、病気になって死んじゃうから…」大人げないと反省しつつも、また暴言を吐いてしまう毎日。それでは、子どもに言ってはいけないひとことを言ってしまったとき、親はどう対処すればいいのか。「花まる学習会」代表で、数々の育児書を手掛ける高濱正伸氏に聞いた!

●子どもに反抗や暴言が見られたら…育児はまずまず成功!

「もちろん暴言がいいとは言えませんが、親も人間なので、時にそんなこともあるでしょう。でも、10歳までの間に、しっかりとした親子間の絆が育まれ、愛を感じてきた子は、少々の暴言をはなたれたとしても、あまり問題はないと言えます。派手な親子喧嘩をして、後に反省したら、少し時間を置いて、子どもにしっかりと“さっきはごめんね。お母さん、言い過ぎたよね”と謝れば、その思いはきっと子どもに伝わります。親も子も、そういった問題を繰り返し繰り返し経験してこそ成長していくのです」(高濱氏 以下同)

「元気で学校に通っているだけで合格! 親がそれ以上を望むから、言いたくない暴言をはなつ結果になる」と高濱氏は語る。

「今のお母様方はとても真面目なので、いつも“ベストな教育”が頭にありますよね。器からはみ出してもそれは個性。“そのままでいいんだよ”と親が認めてあげれば、子はホッとしていられるんです。勉強の出来不出来に目を向ける時間があるのなら、子どもが家に帰って来て、何よりホッとできる環境を作ってあげて下さい」

子に言ってはいけないひとことを言ってしまったら…

「今の思春期は、親世代の思春期と大幅に変わってきている」と語る高濱氏。

「今の親世代にとって、思春期の問題行動と言えば“非行”でした。その頃に比べ、今は“いい子”が多い。従順で大人しく、かつて非行に走り、抑えようのない反発心や悶々とした葛藤をストレートに社会にぶつけてくるようなパワーを持った子どもたちは、すっかり減ってしまいました。でも、それだけで“問題がなくなった”と考えるのは楽天的すぎる。思春期に葛藤しないまま大きくなった人間が、引きこもりや不登校など、あちらこちらでより深刻な問題を引き起こしているからです。思春期に“葛藤の毒”をスポーツや勉強など、外に向けて吐ける子は、おおむね心配はいりません。子どもの反抗や暴言が親に向けられているとしたら、一時期親はつらいと思いますが、それもまずまず育児は成功したと思っていいでしょう」

子の主張をネガティブにとらえず、自立の一歩だと受け止める。子の暴言に対等に立ち向かわず、「これも育児が成功したことの証なんだな」とスイッチをひとつ切り替えるだけで、ママの気持ちも少しは楽になるはず。「私は健全な子育てをしてきたんだ!」と、胸を張ってもいいのではないだろうか。

(取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

花まる学習会代表・高濱正伸氏
高濱正伸
㈱こうゆう 花まる学習会代表
昭和34年、熊本県生まれ。東京大学・同大学院修士課程卒業。 学生時代から予備校等で受験生を指導する中で、学力の伸び悩み・人間関係での挫折とひきこもり傾向などの諸問題が、幼児期・児童期の環境と体験に基づいていると確信。 ‘93年、小学校低学年向けの「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員を務め、ボランティアとして、いじめ・不登校・家庭内暴力などの実践的問題解決の最前線でも活動経験を持つ。著書に、「働くお母さんの子どもを伸ばす育て方」「お母さんの笑顔が子どもを伸ばす LIFE IS HAPPY」など多数。
昭和34年、熊本県生まれ。東京大学・同大学院修士課程卒業。 学生時代から予備校等で受験生を指導する中で、学力の伸び悩み・人間関係での挫折とひきこもり傾向などの諸問題が、幼児期・児童期の環境と体験に基づいていると確信。 ‘93年、小学校低学年向けの「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員を務め、ボランティアとして、いじめ・不登校・家庭内暴力などの実践的問題解決の最前線でも活動経験を持つ。著書に、「働くお母さんの子どもを伸ばす育て方」「お母さんの笑顔が子どもを伸ばす LIFE IS HAPPY」など多数。