●“性=性行為”ではなく、“性=生”と捉える
「“性=性行為”と捉えるから、親も学校も敬遠しがちですが、本来は“性=生”と捉えるべき。“性教育”とうたうと、どうしても、“月経と精通”“SEXってどうするの?”という問題に集中しやすくなりますが、思春期に、“生殖能力が身に付く”“パートナーを求めるエネルギーに気づく”と言った点では、性別を問わず、起きていることはみな同じなのです。さらに性の理解は、他者の受容と多様性の理解につながり、それは豊かな人間関係、誰もが生きやすい社会へとつながっていくのです。家庭内でも、“いやらしい”と言って目を背けず、“性って何だろう?”ということを、子どもと一緒に考えることからスタートしてほしいですね」(池上氏 以下同)
「なぜ男の人と女の人がいるの?」と子どもに聞かれたら、どう答えるべきなのか。
「まず、オスとメスによって生命が増えていくことを“両性生殖”と言い、この場合、卵に精子が合体する(受精する)必要があります。人間も両性生殖で生まれる生き物なので、そのために男女が存在します。人間の場合、女性のおなかのなかに卵があるので、その卵に男性の精子を届けるにはどうしたらいいか…精子が空気中で生きていけないとしたら、女性のおなかのなかの卵に精子を届けるパイプが必要になりますよね。それがペニスというわけです。パイプ役をしないときは小さく邪魔にならないようになっていますが 、時々大きくなって勃起するのは、大人になってパイプ役をするための準備運動なんだよ…と、まずはそう説明してみてはどうでしょうか? 恥ずかしがらずに、楽しく安心して語れることが肝要なのです」
第二次性徴期に差し掛かったら、家庭内の性教育において、ぜひおさえてほしいポイントがあるという。
「先ほども言いましたが、月経も精通も同じ意味を持つということ。つまり、男女ともに“親になる力”がついたということです。ですが、力がついたからといって親になっていいということではない。親になれることと親になることは別だと考えること、親になるということは、自分と相手の生き方や責任とストレートに結びつくことを想像させる。これこそが、性差別を問わず、家庭での性教育の着地点ではないかと思います」
そして、「相手を大事に思うからこそ避妊すべきなんだと、家庭でもしっかりと教え、伝えてほしい」と池上氏は語る。
「性行為とは、挿入することで一体になるのではなく、“相手の愛しさが自分の愛しさに…相手への思いやりが自分への思いやりに溶け込んで膨らんでゆく…”それこそが、本当の意味で“一体になる”ことなのだと、ぜひ家庭でも教えてほしいですね。 “面倒くさい”“雰囲気が壊れる”などと言って、避妊しない高校生が増えていると聞きますが、避妊への非協力はデートDVにもなると言えます。相手の心身に健康リスクを負わせないためにも、しっかりと避妊はしてください。望まない妊娠を予防できるのは、人間だけが発揮できる生きる知恵なのです。であれば、その知恵を子に伝授するのは、一番身近な先輩である“親”の務めではないでしょうか。そして最後にもうひとつ…失敗は人生の終わりではないということ。失敗から学んで立ち直るのも生きる力で、その力を支えるのは、周囲にいる仲間や大人です。妊娠させた男子を罵倒するのは簡単ですが、そんな時こそ、親や仲間が“どうしてそうなってしまったのか”を共に考え、当事者に学ぶチャンスを与えて、いち早く立ち直ることができるように手助けしてあげて欲しいものです」
性をタブーにせず、子どもたちが安心して相談できるような意識を持つこと。ネットからの刺激的な情報ばかりでは、子どもたちの“本当の意味での性”は成長しえない。
(取材・文/蓮池由美子)