実は、この自律神経の機能低下が、子どもの学力低下にも大きく影響するという。
早稲田大学人間科学学術院教授で医学博士の前橋 明先生は、こう話します。
「生活リズムの乱れは、脳内ホルモンとの関係にも影響を及ぼします。脳内では、夜中の0時ごろをピークにメラトニンというホルモンが出て脳の温度を下げ、3~4時頃に体温が一番低くなり、動けない時間帯になります。そして、明け方くらいからβ-エンドルフィン、コルチゾールというホルモンが分泌のピークを迎え、脳温を上げ、体温が上がって動けるようにしてくれるのです」
しかし、生活リズムが乱れると、自律神経機能が低下し、ホルモン分泌のタイミングもズレて乱れてしまい、午前中は低体温のまま寝ているのと同じ状態。つまり、日中に活動できず、集中力・学習意欲の低下という悪循環から学力低下に結びつくという。
「就寝時刻が22時以降と遅い子どもの割合が多い地域は、全国テストの正答率が低い傾向にあるという興味深い研究結果もあるのです。また、睡眠は、疲労回復効果だけではなく、子どもたちが見聞きした情報を脳内に記憶として整理して定着させていく役割があります。このことからも、睡眠の問題をはじめとする生活リズムの乱れは、学力と深く関係してくるのです」
●自律神経は、“生きる力”そのもの
自律神経の大切さは、さらなる将来にも影響を及ぼすという。
「自律神経は、まさに“生きる力”そのものなんですね。主体的に考え、行動するにはなくてはならない機能なので、成長期に自律神経をしっかり鍛えることが大事。私が教えている大学の学生でも、伸びていく学生は、よく遊び、よく眠り、よく学びといったメリハリある子ども時代を過ごし、大学に入ることを目標にし、勉強ばかりで寝る間も削ってきたような学生は、伸び悩んだり、他者との関わりも苦手な人が多いように思います。これでは、社会に出ても心配です。どうか、お子さんの成績を嘆いたり、“勉強しなさい!”と毎日叱る前に、まずは幼少年期より自律神経を高めるべく、規則正しいメリハリある生活を習慣づけてあげてください」
“規則正しい生活習慣”が生きる力そのものにつながる。まずは、ここをしっかり改善することが、低体温のみならず、多くの問題解決につながるのかもしれませんね。
(構成・文/横田裕美子)