●病気についての正しい知識を
母親の年齢によって確率に違いはあるとはいえ、子どもの先天性異常は誰にでも起こりうること。もし先天性異常が分かったとき、私たちはどのような心構えを持っておくべきなのでしょうか。胎児の病気や遺伝疾患にも詳しい、東京マザーズクリニックの林聡院長に話を伺いました。
「『先天性異常』という言葉だけ聞くと、怖いイメージを持ちがちですが、病気によってはしっかり治療をすることで、普通の子どもと同じように成長できるんです。なかには、漠然と恐怖感だけで育てられないという判断をされる方もいらっしゃいますが、まずは病気についての正しい理解をしっかりしていただくことが大事です」
出生前診断の是非については議論が絶えません。ただ、もし検査で赤ちゃんの病気や異常が見つかった場合、育てていく当事者であるお母さん、そして家族が覚悟をするためにプラスになる検査であると林院長は言います。
「たとえば、生まれてから病気が分かった場合、突然のことでパニックになってしまって、『子どもを受け入れられない』『治療も受けさせたくない』という親御さんもいらっしゃいます。もちろん、出生前診断で事前に分かった場合でも、相当なショックを受けることに変わりはありませんが、時間の経過とともに徐々に受け入れることがほとんどです。そのうえで、病気についての正しい知識を学び、頑張ろうと思える。それには時間が必要なんです。検査によってお子さんの病気と十分に向き合える時間を作れるという意味では、出生前診断は良いものだといえるのではないでしょうか」
●正しい知識のもと決断を
また、病気と異なり治療法がないダウン症や成長障害、心疾患の原因となる染色体異常についてはどうでしょうか。
「染色体異常の場合は、お子さんの能力をいかに引き上げてあげるかというケアが必要になりますが、育てていくことに限界を感じる方もいらっしゃいます。最終的には育てられないという判断にいたる方も多いのは事実だと思います。もちろん十分に考えたつもりでも、後悔してご自分を責められる方もいます。苦しみをともなうことではありますが、正しい知識を得たうえで決断をしていただきたいと思います。これは正解がないことなので、個人的には医師としてその決断を尊重したいと思っています」
いずれにせよ、そうした重い決断を迫られる可能性もあることをふまえ、出生前診断を受けるか否かを判断する必要があるのかもしれません。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)