■入浴後&綿棒はNG! 耳アカを溜めてしまい逆効果に
──耳掃除は綿棒を使うイメージが定着していますが、これは正しい方法なのですか?
「いいえ、綿棒はおすすめしていません。市販の綿棒は先端が耳の穴より少し小さいくらいの大きさで、耳掃除道具としては太すぎます。また、綿棒は柔らかいイメージがありますが、実際は固く巻かれています。この太く固い綿棒を耳に入れると、逆に耳アカを奥に押し込んでしまうのです」
──入浴後に耳掃除する人も多いと思いますが……。
「お風呂上がりはさらに良くない。耳の中がふやけ、耳アカも粘土のように柔らかくなっているので、その状態で耳掃除すると、耳アカをより奥へ押し込んでしまいます。また、炎症やかゆみの原因になることもあります。
なお、耳の中がかゆいと綿棒で掻く人もいますが、これもNG。かゆみは炎症を起こしているということで、そこを触ってしまうと余計に炎症がひどくなり、耳の中が腫れ上がることもあります」
──耳の中をきれいにしようとしていたのに、逆効果だったんですね。
「耳アカは急に膨れ上がるわけではなく、こうした間違った耳掃除のしすぎで日々堆積していきます。溜まりすぎた耳アカが耳の中を塞ぎ、急に耳が聞こえにくくなってしまうこともあるのです。耳アカが原因で耳が聞こえにくくなる人は、『耳の中は綿棒でよくきれいにしている』と言う人が多いんですよ」
■耳アカは自然に取れる! 耳掃除は基本不要
──では、どのような耳掃除法が適していますか?
「基本的に耳掃除は必要ありません。耳の中は手足の皮膚と同じ性質のものからできています。手足の皮膚からターンオーバー機能でアカが取れるのと同様に、耳の中の老廃物である耳アカも自然に外に排出されるようになっています。
まったく耳掃除をしなかったから耳アカが溜まり、聞こえなくなってしまう、ということはまずありません。もしそんなことがあったら、動物は外敵を察知できず、ほかの動物に食べられてしまいます。人間の身体も基本的に動物と同じで、よくできているんですよ」
──何もしないと、耳アカが自然に取れるまで耳の中で溜まっていくのが気になってしまいそうです。
「耳アカがたくさん溜まることで起こるトラブルはほとんどありません。逆に、耳アカを一生懸命取ろうとして綿棒でゴリゴリとこすり、炎症を起こすことの方が何十倍も多いです」
■耳掃除したい時は竹の耳かき&耳鼻科で!
──耳掃除したい場合はどのような方法が良いですか?
「100円ショップにも売っている、昔ながらの竹の耳かきがおすすめです。竹は弾力があり鋭利ではないので、耳の中に入れる道具として適しています。頻度は月1回程度で十分です。
また竹の耳かきは先端が少し曲がっていますが、人間はこのような形状の物が耳の中に入ってくると恐怖感を覚えます。『痛くないかな』と神経を尖らせて、そーっと耳掃除するので、綿棒を使った時のように耳の中をガリガリとこすってしまうこともありません。
耳の中は危険を知らせるために、鼓膜に近い場所ほど神経が密になっていて、痛みを感じやすい。痛みがあったら『これ以上奥に入っちゃダメだよ』というサインなので、それ以上はやらないようにしましょう」
──耳アカにはカサカサしたタイプと、水分の多いタイプがありますが、水っぽい耳アカだと竹の耳かきでは取りにくいのでは?
「水っぽい耳アカに綿棒を使う場合も、粘土状になった耳アカを奥に押し込めてしまうことになるため、竹の耳かきが有効です。『瓶の周りに付いたものをヘラで取る』ようなイメージですね」
──自分では取りにくい、耳の奥の耳アカはどうしたら良いでしょう?
「耳鼻科を受診して、医師に取ってもらってください。耳の奥を傷付けずにきれいにするには、耳鼻科医に診てもらうのが安心です。特に、先述した水っぽい耳アカの人は取りにくいので、自分で耳掃除するよりも耳鼻科を受診するのが早道ですよ。耳掃除だけで耳鼻科を受診する人もいるので、遠慮せずに来てください。
ちなみに、カップルなどがよく膝枕で耳掃除したりしますが、あれは危険です。耳鼻科医ではない一般の方が耳の中をいじると、余計なところを触って傷つけてしまう可能性があります。耳掃除するなら痛みのない場所までは自分で、それ以上奥の掃除は耳鼻科を受診するようにしましょう」
耳アカがたくさん取れることはちょっとした達成感がありますし、気分も爽快です。でも、そもそも耳アカは躍起になって取らなくても良いものだと、覚えておきたいところ。これまで綿棒一択だった人は、ぜひ竹の耳かきをゲットしてみてくださいね!
(五十嵐綾子+アリシー編集部)
※この記事は「アリシー」から提供を受けて掲載しています
<取材協力> 日本橋大河原クリニック