【おうちごはんインタビュー vol.25】むっちんさん

【おうちごはんインタビュー vol.25】むっちんさん

日々のおうちごはんをInstagramに投稿し、ご自身の世界観を発信している方に迫るおうちごはんインタビュー。今回は、料理家・フード系ライターの“むっちん”こと横田睦美さん(@muccinpurin)。料理を始めたきっかけから、2021年5月27日に発売された初のレシピ本のことまでたっぷりお話を伺いました!

どうせとるならおいしいカロリー!時短もおいしいも諦めない、むっちんさんのおうちごはん

プロフィール

むっちん(横田睦美)

料理家・フード系ライター

日本菓子専門学校を卒業後、パティスリーに勤務。料理道具専門店、食品メーカーの営業を経て、料理家として活動中。食品メーカーへのレシピ提案、Webメディアでのコラム執筆等で活躍する。一度食べたら繰り返し作りたくなるような魅惑のレシピが人気。

Instagramアカウント:@muccinpurin

食いしん坊から料理家に!むっちんさんにインタビュー

――簡単家庭料理からエスニック料理に洋菓子まで、幅広いジャンルの料理を得意とするむっちんさん。いつごろから料理をするようになりましたか?

もともと食べることが好きで、母の台所仕事の足元に付きまとっていたそうで(笑)。つまみ食い好きのぽっちゃりとした子どもでした。

実際に作り始めたのは小学生のとき。子ども用のレシピ本や電子レンジの付属本を見て、作ることに興味を持ったのがきっかけです。

すべては“食べるため”だったと思います。とにかく食いしん坊!

――食いしん坊は料理上手への近道ですね! なかでも得意な料理や好きな料理はなんですか?

具だくさんの豚汁ですね。豚肉や根菜、こんにゃく、油揚げなどとにかく具材をたっぷり入れています。我が家では豚汁=おかずなので、白ごはんと豚汁さえあれば生きていけます。

大鍋2個にたっぷり作って冷凍しておくことも。特に母が作る豚汁の2日目の朝バージョンが好き。ちょっと味が濃くなって、ごはんが進みます。

今でも実家に帰ると伝えると、2日目になる前日から作っておいてくれます。もはや日常過ぎて、SNSには一切登場しないレベルですが……。

▲こちらは「具沢山もつ煮込み」。むっちんさん的にはもつ煮込みも「おかず」で、味は少し濃いめ。これが驚くほどごはんが進むそう!

――具だくさんの豚汁、最高ですね! 前日から作っておいてくれるお母さんの愛情もおいしさと元気をくれそう。むっちんさんが料理する上で、心掛けていることや大切にしていることは何でしょうか?

時短簡単が当たり前の時代ですが、個人的にはあまり得意ではなくて。もちろん、仕事や家事、育児でお忙しい方には必要で素晴らしいメソッドだと思うんです。

でも、レンジを使うことでラップが余計に必要だったリ、火で調理する場合と比べて味がやや劣ったりすることも少なからずあって。何度か取り出してかき混ぜるのも手間と感じてしまうズボラなんです。

逆にガスで調理したほうが一連の流れに乗れるので、早いんじゃないかとも思ったり。食材の変化も目で見られますしね。

レンジ調理が一般的でなかった昭和生まれとしては、ちょっとくらい余計に時間がかかっても一番おいしい状態で食べたいな、って思っちゃう。時短とおいしいを天秤にかけたとき、おいしいを選ぶ食いしん坊なんだと思います。

レシピを考えるときは、なるべくおいしさを損なわずに、抜いていいところと抜いちゃダメなところの線引きをしっかりとしたい、と常に心掛けています。“どうせとるならおいしいカロリー”がモットーです。

▲「鶏肉となすのねぎまみれ」のなすは、揚げ焼きにする方法とレンジで加熱する方法の2通りが。レンジの方が油が少なくて済むが、皮の色は悪くなる。

――たしかにレンジは便利だけれど、火を使った方がいい場合もありますもんね。そうして考え抜かれたレシピはInstagramでも公開されていますが、Instagramにはどんなモチベーションで投稿していますか?

コロナ禍になる前からフリーランスで一人で仕事をしているので、人と接する機会が極端に少なくて。見てくださる方と会話している気分でキャプションを書いています。

あと、レシピを見てくださった方の「作りました~」の声を「ごちそうさま」だと思って受け取って勝手に喜んだり。

写真は目下勉強中で、沼にハマったり、迷子になったりの連続。そちらはまだまだなので、キャプションでちょっとでも寄り道してくれる人が増えたらうれしいな、なんて思っています。

――料理のお写真、いつもおいしそうですけど、むっちんさん的にはまだまだだと感じているんですね。現在はどんなふうに撮影されていますか?

ライティングが苦手なので、自然光オンリーで撮影しています。日当たりが良い部屋ではないので、雨が続くと仕事もはかどらずブルーに……。

撮影は11~13時ごろが多いですかね~。夜は早く寝たい派なので、昼間に作ったごはんをランチと早めの夕食として食べるようにしています。

Instagramでは真俯瞰がウケるとどこかで聞いたことがありますが、「いただきます!」の目線で見える斜俯瞰が大好きなので、大体いつも斜めからの構図が多くなります。

食卓というよりは1皿の料理を撮影することがほとんどなので、ついつい寄りがちです。余白の妙というものが私の辞書にはないようで……今後の課題です(笑)。

Photoshopが使えないので、Instagramのアプリだけで加工しています。かなり優秀ですし、何よりシンプルで使いやすい!

カメラはそこまで新しくないミラーレスを使っていて、気分によって単焦点レンズをつけることも。完全に独学なのでプロから見たら「???」な点も多いと思います(カメラ教室の先生スミマセン!)。

▲日本菓子専門学校で学び、パティスリーで経験を積んだむっちんさんは、お菓子作りもお手の物!

初のレシピ本は「極上だれ」がテーマ!

――そんなむっちんさんの初のレシピ本『むっちんさんの極上だれでパパッとごはん』(ワン・パブリッシング)がついに発売されました! 出版が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

率直に言うと「えええええ!!!」という感じでした。

料理を仕事にしていますが、レシピ本を出版することに対してそこまで執着がなかったというのが正直なところで。「私がレシピ本なんておこがましい!」というのが最初の感想です。

とはいえ、料理家の方が大勢いらっしゃるなか、私を見つけて声をかけていただいたからにはこのチャンスを無駄にしたくない、とすぐにスイッチを切り替えました。

亥年生まれなので、そこからは試作、試食、レシピ起こし、また試作……と猪突猛進に突っ走りました。

――レシピ本のテーマは「作り置きだれでできる簡単レシピ」。このテーマについて、むっちんさんご自身はどう感じていますか?

出版社の方から最初にたれがテーマの本を出しませんか、と声をかけていただいたとき一瞬フリーズしたんです。「たれがテーマ???」って。

でもよくよく自分のレシピを振り返ってみると、にらだれとかスイチリマヨとか、とにかくたれをたくさん作っていて。

料理に時間がかかるのって計量と味の調整だと思うんですが、作り置きのたれがあればその両方を一気に解決できる。

料理を始めたばかりで「この味付けってどうすればいいんだろう??」という方にも見ていただきたいし、長年料理を作り続けてきて「最近味付けマンネリだわ~」と思っている方にも、新しいレシピのヒントになればうれしいなと。

あまりにも日常的に作っていたので意識していませんでしたが、いま振り返ってみてもいいテーマだなと思います。

▲「よだれ鶏のたれ」でできる3品。調理法や食材を変えることで、味わいの違う料理を楽しめる。

――レシピ本には、和洋中エスニックなど60種のたれと105のレシピが掲載されていて、たれのレシピだけではなく1種類のたれにつき3品ずつアレンジレシピも紹介されています。レシピ選びや試作は大変だったのでは?

普通のレシピは味が決まらなければ、調味料を足したり引いたりすれば解決すると思うんです。

ただ、今回のレシピ本は1種類のたれから3品のアレンジを展開するため、レシピAにはちょうどいい塩加減だけど、レシピBにはしょっぱすぎる……という問題が。

基本となるたれのレシピを変えると、自動的に3種類の料理も再試作しなくてはならなかったので、その点はかなり苦労しました。

調味料の減るペースも、試作&試食のペースもかなりのものでなかなかに肥えました(笑)。でも、その甲斐あっていろいろな料理に使いやすい、便利なたれレシピができたと自負しています。

編集さんいわく「(レシピ本を)作る側は大変だけど、買う方はかなりお得な1冊!」とのこと。私もそう思います!

▲下味冷凍レシピは、極上下味だれに食材をつけて冷凍しておけば、あとは解凍&調理するだけ。

――どのたれのレシピもとっても気になるのですが、なかでもむっちんさんのおすすめは?

しょうゆ、みそなどは定番調味料なのでどこのご家庭にもありますよね。

その点、オイスターソースやスイートチリソース、コチュジャンなど、「使い方がわからないから買わない」「買ったはいいけど冷蔵庫の奥に眠ってる」系の調味料の魅力はもっと知られるべきだと前から思っていました。

特にエスニックは日本でも人気ですが、味付けに悩みがちですよね。私は東南アジアが好きなので、旅先で食べた料理を思い出しつつ、スーパーで買える調味料をメインに、気軽にアジア気分が味わえるレシピをたくさん載せています。

個人的なおすすめレシピは「ガパオのたれ」を使った「ガパオライス」と、「パッタイのたれ」を使った「パッタイ」や「ヤムウンセン」ですね。

これからの暑い季節に汗をかきながら食べたら、より一層おいしく感じられると思います。黒酢なんかもさっぱりとしておすすめなので、今回は特別に、表紙にもなった「豚こま団子の黒酢酢豚」のレシピを公開させていただきます!

※「豚こま団子の黒酢酢豚」のレシピはインタビューの最後でご紹介します!

▲「パッタイ風焼きそば」は、いつもの焼きそばの味に飽きたときの救世主!

――東南アジアが好きというお話がありましたが、レシピ本には旅の思い出の味を紹介するコラムなどもありますね。

はい。海外旅行が大好きで、年に3~4回東南アジアを中心に旅行していました。

観光もそこそこに、現地のローカルスーパーや市場を巡ったり、どローカルな食堂で現地の味を堪能したり。料理のヒントになった味を写真とともに紹介しているので、読んでくださったみなさんも旅行気分を味わっていただければうれしいです。

コラムでは、愛用の料理道具も紹介していまして、料理道具は一度買ったら一生愛すレベルで選んでいるので、文字数の限界まで語らせてもらいました。

実際撮影のときに推しポイントを紹介しながら使っていたら、編集さんやスタイリストさんが個人的に買ってくださったほど。

「テレビショッピングやったら絶対売れますよ」のお声も頂戴しました。高くても安くても本当にいいものはいいので、忖度なしで推したいアイテムだけをチョイスしています。

コラムから読みたいほどコラム好きな人間なので、みなさまが飽きないよう工夫しました。肩の力を抜いて楽しみながら読んでいただきたいです。

▲パスタの盛り付けに便利なアイテムや、お気に入りのスライサーなどの調理道具も要チェック!

――最初から最後まで読み応え満点だなと思います。このレシピ本をどんなふうに楽しんでほしいですか?

これまでにも、たれをテーマにした本はたくさん出版されていると思うのですが、たれを使ったレシピがしっかり載ったものが少ない気がして。

せっかくたれを作ったら、あれこれいろいろ活用してほしくて、組み合わせる食材や調理法を手を変え品を変え、「時短もおいしいも諦めない」をテーマに1冊の本の中にいろいろな工夫を詰め込みました。

計量の時間や味の調整に迷いがなくなるだけで、料理がグッと簡単になる、ということを自分自身も改めて感じました。

たれを使って時短が叶い、味がバシッと決まる爽快さを、みなさんにも味わっていただければ。日々の献立作りに困ったらぜひ開いてみてくださいね。

今後挑戦してみたいことは?

――今後挑戦してみたいおうちごはんや、気合を入れて取り組みたいメニューはありますか?

年齢も年齢なのでみそや梅干しなど、日本らしい季節の手仕事系に力を入れていきたいです。

昨年から梅干を漬け始めたのですが、愛着がわきすぎてなかなか手を付けられず。何年も寝かせて食べ比べをしてみたいです。

――料理以外で挑戦してみたいことは?

ちょうど一年前にYouTubeを始めました。

ほとんど見ることもなかったYouTubeを自分が作るとは思いませんでしたが、動画の撮影や編集についてもっと勉強して、よりわかりやすいレシピをお伝えしていくことが今後の目標です。

つたない部分はありますがぜひ見ていただければ。

あとは、英語がもっとしゃべれるようになりたいなと。幸い相手の英語はほぼ聞き取れるのですが、想いを伝えるのはほぼパッション頼りだったので(笑)。

しゃべれないなかで通じたときの喜びもあるんですけどね。次に海外に行けるときまでにもっと上達できればなと。

―― 最後に、むっちんさんにとって「おうちごはん」とは?

同じものをおいしいって思えるってとても大切な感覚で。おうちごはんとは、“胃袋でつながる感覚”ですね。

ありがとうございました!

毎日忙しいと、料理は手早く楽に作れたらいいけれど、むっちんさんの言うようにそれによって味が劣ってしまうのだとしたら残念ですよね。

むっちんさんがモットーにしている「どうせとるならおいしいカロリー」は名言だなと思いました!

とはいえ、やっぱり時間はなるべくかけたくない。そんなとき、「極上だれ」があればきっと助けになるはず。おいしさと時短を叶える『むっちんさんの極上だれでパパッとごはん』をぜひチェックしてみてくださいね。