「ここ一番の局面では、誰もがプレッシャーを抱えて臨むのですが、それをうまく手なづけて自分の持つ潜在能力を発揮できる子と、プレッシャーでガチガチに固まってしまってまったく実力が出せない子に分かれるんです。よくプレッシャーは悪者扱いされますが、実はそれは間違っていて、プレッシャーがあるからこそいいパフォーマンスができるんです。確かに身体的には冷や汗をかく、心臓がバクバクする、手足が硬くなるなど不快な感覚が起こりますが、それほど集中し気持ちの持ち方として高いレベルにあるという証拠なんです」(児玉先生 以下同)
つまり、プレッシャーがかからない状態で試合や本番に臨んでも、なかなかいいパフォーマンスは発揮できないという。では、本番に弱い子はそのプレッシャーをなぜ味方にできないのだろうか?
「それは、勝ち負けや結果に囚われて、目の前のパフォーマンスに集中できていないからです。つまり、勝敗よりもべストを尽くすことに没頭できる集中力こそが本番に一番大事なことなんです。というのも、結果はいくら考えたところでコントロールできないからです。コントロールできるとしたら目の前の一瞬のことだけ。結果はそのあとについてくるものにすぎません」
●親や指導者の勝敗・結果思考が子どもを追い込む
実は、子どもが目の前のプレーやパフォーマンスに集中できない原因は、本人の集中力の問題だけでなく、親やコーチ、先生など大人たちの対応の影響であることも多いと児玉先生は指摘します。
「親御さんやコーチが“勝たなきゃダメだよ!”とか、“1番になろうね”、とか“”ミスしちゃダメだよ!など勝敗や結果にこだわった言葉を口にしてしまうと、とたんにお子さんは“勝たなきゃ”とか“また怒られる”といった恐怖からガチガチになってしまい、プレッシャーに支配されて押しつぶされてしまうのです。どうか、勝敗や結果については一切口に出さないくらいのつもりで接してあげてください」
では、どのようなアドバイスが効果的なのだろうか・
「自分は今どのようなプレーや、パフォーマンスをするのか? したいのか? そのプロセスに終始集中することをアドバイスしてあげてください。そして、結果がどうであろうと、それができていたならば、その頑張りを褒めて、“次また頑張ろうね!”と励ましてあげてください。きっとお子さんはそれだけでも本番との向き合い方が変わるでしょう」
子どもの力を伸ばし上手に引き出すのも、せっかくの才能を封じ込めてしまうのも大人の対応次第。励ますつもりが、逆にお子さんを追い込んでしまわないように、温かく見守ってあげてください。
(構成・文/横田裕美子)