【おうちごはんインタビュー vol.26】横浜高校野球部の元寮母・渡邊元美さん

【おうちごはんインタビュー vol.26】横浜高校野球部の元寮母・渡邊元美さん

魅力的なおうちごはんをInstagramに投稿している方に聞くおうちごはんインタビュー。今回は、横浜高校野球部の元寮母・渡邊元美さん(@omusubi.48)。6/1放送の「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日系)では、3分間のガチンコ料理対決に見事勝利!番組の裏話や寮母時代の話、日々のおうちごはんなどについて伺いました。

「食事は楽しく」がモットー!「家事ヤロウ!!!」で大注目の渡邊元美さんにインタビュー

プロフィール

神奈川県出身。父は横浜高校元監督である渡邊元智さん。息子は東北楽天イーグルス渡邊佳明選手。

父の元智さんが横浜高校野球部の監督を務めていたため、幼少期から野球部員とともに育つ。30歳を迎える頃、母の紀子(みちこ)さんから横浜高校野球部合宿所の寮母を引き継ぐ。

2006年に横浜栄養専門学校卒業。2017年に管理栄養士免許を取得。2018年に寮母を引退し、現在はokome DE chargeをコンセプトとした「お結び(omusubi)」を立ち上げ、栄養指導と補食の提供で学生アスリート身体作りのサポートを行なっている。

モットーは「食事は楽しく」。

Instagramアカウント:@omusubi.48

「家事ヤロウ!!!」では、無心でキャベツに集中していました(笑)

――6/1放送の「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日系)では、新企画「フリースタイルキッチン」で、料理の腕前がプロ並みのお笑い芸人・キングさん(ポンポコ団)と料理対決を繰り広げました。出演オファーがきたときは、どんなお気持ちでしたか?

正直ご連絡いただいたときは、「家事ヤロウ!!!」という番組のことをあまり知らなくて(笑)。言われてみれば、見たことあったかも?くらいの認識でした。

電話をいただいた翌日すぐ、若いプロデューサーの方とアシスタントの方が私の仕事場まで来てくださって。福島県出身で楽天イーグルスのファンだというプロデューサーの彼が一生懸命番組の説明をしてくれたので、「私で良ければ出演させていただきます!」と快諾しました。

帰り際には「帰ってから食べてね」と、その日作った補食のおむすびを5、6個お土産に渡す世話焼き母さんに変身する余裕も。でも、その後、番組や対戦するキングさんについて調べていたらようやく事の重大さに気づき、怖くなって逃げ出したくなりました(涙)。

なぜ私にお声を掛けていただいたのかは分かりませんが、ただただ頑張る選手たちにおいしいごはんを作ってあげたいという思いで20年続けてきたことが、今回のこのようなオファーに繋がったのかと、そう思っています。

――料理対決のテーマ食材は「キャベツ」で、「キャベツのお好み焼きトースト」「クリーム明太キャベツパスタ」「キャベツの春巻きカレーソース」の3品を作られていましたね。キャベツを使った料理のレパートリーは多い方ですか?

野菜のレパートリーは多い方かもしれません。基本的に、あまり箸の進まない野菜をどうやったら選手たちにおいしく食べてもらえるのかと、常に考えていたので。

キャベツのレパートリーが特別多いというわけではないのですが、別の料理に使っていたレシピをうまくキャベツに応用できたかなと思います。

一品目のお好みトーストは大学の寮でも朝食に出していたので、キャベツと言われて一番にこれを作ろう!と思いました。今思えば、野菜以外のお題が出ていたら頭が真っ白になっていたかもしれませんね。

▲クリーム明太キャベツパスタはその後、自宅でも作ってご両親をおもてなし。黒い粒は生胡椒で、トッピングするとパンチの効いた味わいに

――これまでにも時間と闘いながらお料理されてきたことは何度もあるかと思いますが、1品3分という時間に挑んでみていかがでしたか?

とにかく時間に追われるのは得意……というか慣れていましたが、3分という短い時間内に料理を作れと言われたのは初めてでした。そもそも3分クッキングなんてしたことなかったので、本当に完成させられるのかそれだけが心配でした。

残り時間をカンペで30秒ごとに出してくれていたのですが、私は全く気が付かず、とにかく無心でキャベツに集中していました(笑)。こんなにキャベツに向き合ったのは人生で初めてです。未だにキャベツのことが頭にこびりついて、レシピが思い浮かんでしまいます!

▲「家事ヤロウ!!!」の際に作ろうかと頭をよぎった「キャベツのかき揚げ」。自宅で作ってみたら3分では無理だったので「やらなくて良かった~!!」と胸をなでおろしたそう

――たしかにあれだけの熱戦を繰り広げた後は、しばらく引きずってしまいそうですよね。放送後、周りの反応はいかがですか?

私は「謎の主婦」という設定で、途中から正体が明かされることになっていたため、周囲には出演することを伝えていなかったんですよね。

それでも番組放送後にケータイを見たら、今まで見たことのないような数のメッセージを受信していました。これ、本当に私のケータイ?っていうぐらい(笑)。

卒業生からは「元美さんのごはんが久しぶりに食べたくなりました!!」ってLINEをもらったり、保護者の方や友人からも「作ってみる!」って連絡もらったり。たくさんの方が見てくださっていて、やはり嬉しかったです。

なかでも特に嬉しかったのは、今は中学校の野球部の顧問となり指導者として子どもたちに野球を教えている卒業生から「ぜひ、僕の教え子たちのために栄養指導に来てください!」と連絡が入ったことです。「もちろん、行かせていただきます!」と即答しました。

栄養指導はもちろんですが、彼が横浜高校野球部時代にどんなに頑張っていたかを、彼の教え子たちに伝えに行きたいです。

▲横浜高校野球部合宿所の寮母時代に「食に関する専門知識を学び、少しでも部員たちの役に立ちたい」と管理栄養士免許を取得した元美さん。現在は、食育セミナーや栄養指導などの活動も積極的に行なっている

――それは楽しみですね!さまざまな反響があったようですが、あらためて出演を振り返って感想を聞かせてください。またオファーがあったら挑戦したいですか?

今まで試合に挑む選手を送り出す立場にいたのが、まさか自分が試合に挑む立場になるとは夢にも思っていませんでした。

選手たちには、試合中にエネルギー切れにならないようにしっかり朝食を食べるよう言い続けていたのに、私は収録の日、飲み物すら満足に口にすることができませんでした。おいしそうなお弁当を用意してくださっていたのですが、ごはん一粒さえ入らない(泣)。

あらためて彼らの立場を身をもって体験できた時間でした。これからの栄養指導に役立てていきたいと思っています。

次のオファーが万が一あったら……。3分じゃなくて5分だったら出させていただこうかな……(笑)。いやいや、どんなことでも全力で頑張ります!!

合宿所の人気メニューはから揚げとハンバーグ

――元美さんは、横浜高校野球部合宿所の寮母をしていたお母さまを手伝ううちに、自然と引き継ぐことになったそうですね。用意する食事は基本的に部員20名分に加えて、監督やコーチなど指導者の分。それだけの量を時間内に手早く作る秘訣は何でしょうか?

私も始めた頃は、野菜すら満足に切れず時間もすごくかかったし、選手の食事の時間に間に合わないこともありました。

でも、そんな失敗を重ねるうちに時系列分析ができるようになったんです。

何時までにこの準備をして、何時から揚げ物を始め、盛り付けにどのくらい時間が掛かる……というようなことを常に考えながら調理をしていたので、無駄な時間が減ったのかもしれません。

▲寮母時代に作った大量のキッシュ

▲茶わん蒸しも定番のメニュー

――毎日のメニューはどうやって決めていましたか?

メニューは、大体10日から2週間分を一気に書き起こします。私はまず、牛→豚→鶏→魚→ひき肉→豆腐といったように主菜の順番を決めていました。

例えば鶏肉の主菜の日、あぶり焼きチキンにしたら次の鶏肉のときは手羽先の甘辛炒めとか、豚肉の主菜で生姜焼きにしたら、次の豚肉のときはポークチャップとか……。このようにメニューに落とし込んでいくと意外と重複しないですし、決めやすいかもしれません。

寮での昼食は作りたてを食べられるのですが、夕食は帰寮時間が遅いのでどうしても作り置きになってしまいます。夕食は温め直してもなるべくおいしく食べられる物が良いので、揚げ物は避けていました。食事時間が遅くなってしまう選手にとっては、消化の観点からも良かったと思います。

何よりも大切にしていたことは、厳しい練習から帰ってくる選手が食事を単なる空腹を満たすための物だけではなく、楽しみにそしておいしく食べてもらうということでした。

――なかでも選手たちに人気のメニューは何でしたか?

やはり鉄板メニューのから揚げとハンバーグはみんな大好きでした!

お昼に帰ってくると「今日はから揚げのにおいがする」と、においに釣られて厨房までやってくる選手もいました。

また、大きなオーブンレンジがなくて家庭用レンジが4台あっただけなので頻繁にはできなかったのですが、明太クリームドリアも人気でした。

野菜だけだとなかなか箸が進まないのですが、ビビンバのように野菜をナムルにしてお肉と合わせるとモリモリ食べてくれます。

ほかにはアスパラの肉巻きやピーマンの肉詰めフライ、チンジャオロースなど、やはりお肉と一緒に調理すると良く食べてくれました。

▲ワンプレートでさっと食べられて見た目がおしゃれな「ロコモコ丼」は、選手たちに大人気

▲「餡かけからあげ丼」は、サクサクのからあげと甘辛の餡との相性がピッタリ!

――スポーツをしているお子さんを持つ保護者の方に、すぐに実践できる料理のコツや裏技などがあれば教えてください。

私はなるべく一食の献立に5色を入れるようにしています。

5色と言うのは「赤・緑・黄・白・黒」のことで、これらの色味の食材を入れると必然的に栄養バランスが整いやすくなります。栄養価を細かく考えて献立を作ろうとすると難しくなりますが、これを少し意識するだけでも健康的な食事に繋がると思います。

今の時代はスポーツに限らず、塾や習い事で子どもの夕食時間がどんどん遅くなっています。ゆっくり時間をかけて食事することが、なかなか難しいのが現状なんですよね。

そんなときこそ野菜をたっぷり使い、これだけ食べれば栄養満点という丼ぶりものがおすすめです。洗い物が少ないのも作り手にとっては嬉しいですね(笑)。選手に人気のビビンバなどは典型的な例だと思います。

また、夕食の時間が遅すぎると就寝中も消化器が休まらず、結果、朝も起きられなくて朝食が食べられないということも。

そのような場合は、蒸す・茹でるといった調理方法を積極的に使い、脂質を減らして消化器に負担を掛けないようにすると良いと思います。

たった1日や2日で身体は変化しません。習慣になってこそです。朝食をしっかり食べることは1日のスタートを切るうえで大切ですから、朝食を食べられる体にシフトしていけるような工夫も必要ですね。

補食で学生アスリートの身体づくりをサポート

――元美さんは現在も学生アスリートの身体づくりをサポートされていて、補食サービス「お結び(omusubi)」を展開されています。補食とはどういうものでしょうか?

運動量の多い成長期の学生アスリートが、1日3食で必要なエネルギーを摂ることは至難の業。エネルギー不足は致命傷なので、効率の良い栄養補給=補食が大切なんです。

「お結び」のコンセプトは、okome DE charge! エネルギー補給の食材としてお米を推奨しています。白米は体内でエネルギーに変わるのがとても速いからです。

「お結び」の補食は運動前に100~150g、運動後に200~300gというように体が必要とするタイミングに適切な量を取り入れるように推奨しています。

――ラインナップは九州のチョーコー醬油が味の決め手の「鶏めし」やカレー味の「印度めし」など、20種類以上あるそうですね。補食を作る上で、心掛けたことや大切にしたことは?

私自身も学生アスリートを持つ親だったので分かるのですが、朝早くからお弁当と補食の両方を作るのは大変。特に夏場は、お昼のお弁当までは保冷剤で衛生を保てるけれど、部活後に食べる補食の衛生を保つのは難しくて。

そういう悩みと負担を少しでも軽減させられるよう、保護者の方に寄り添ったサービスを心掛けています。

具材となるタンパク質も動物性、植物性とさまざまな食材を使用し、余分な脂身を取り除き、鶏肉は皮を剥いで、できるだけ脂質を抑え、ガス釜で炊き上げています。

身体づくりはダイエットと同じく毎日続けることで成果がでるので、選手たちが飽きないように種類をたくさん揃え、習慣にしてもらえるよう工夫しています。

ときには選手たちのリクエストで新メニューを開発することもあるんですよ。ここでも、おいしくそして今日の補食は何かなって楽しみにしてもらえるように選手の声を大切にしています。

▲ごはんの中にお揚げやひじき、にんじんなどをたっぷり入れて。食べるとお稲荷さんの味わい

▲約1年前から試作を重ねてようやく誕生した冷凍食品

――冷凍食品の販売も始まって利用しやすくなりましたね。興味を持った方も多いと思うのですが、アスリート以外や大人も食べてOKでしょうか?

選手に補食として提供しているごはんと同じものの一部を冷凍販売することになりました。ホームページから購入できます。

運動するアスリートには補食として提供していますが、成長期のお子さんのおやつを始め、ご年配の方の夕食やカロリーを気にされる女性のランチ、試験勉強中の学生の夜食にも向いていると思います。

タンパク質も入って栄養満点ですし、レンジでチンして気軽に食べられるのでぜひ試してみてください。これから選手に人気のメニューも冷凍ご飯販売に加えていきたいと思っています。

おうちごはんで家族の体調や心の内を知る

――元美さん家のおうちごはんについても気になります。Instagramには、日々の夜ごはんをアップされていますよね。普段、おうちごはんをどんなふうに楽しんでいますか?

我が家でいえば、私は「渡邊家」専属シェフです(笑)。Instagramに投稿しているMotoki’s kitchenのお客さまは毎回、両親である渡邊夫妻なので、健康に気を付けた野菜中心のメニューが多くなります。トマトの皮は湯剥きするなど、年配の両親が食べやすいように工夫しています。

お芋が好きな母にはポテトサラダは多め、逆に苦手な父には少なめなど、外食だったら無理をいってお願いしなければやってもらえない事でも、おうちごはんでは専属シェフである私ならではのサービスが可能です。

とはいえ、たまに息子たちが帰ってくると父と母の好みなど完全に無視(笑)。夕食のメニューには息子たちの大好物が並びますが、そんなこともおうちごはんならでは……だと思います。

まだまだ気軽に外食ができないので、少しでも外食気分を味わえて楽しんでもらえるように、いろいろな料理を作るのですが、おうちごはんが最高においしくなる魔法のスパイスは、家族の朗報ですかね。

私の息子が試合でヒットを打った日の夕食は箸も進むし、会話も弾みます(笑)。 

▲この日のメインは、バターチキンライス。バターチキンライスは薄力粉を使わずに作れるのでカロリーが抑えられ、鶏もも肉の皮を剥ぐことでさらにヘルシーに

▲石焼きビビンバは、ビビンバ鍋に入った本格派!

――趣向を凝らした食卓から楽しい雰囲気が伝ってきます。ずばり、元美さんにとって「おうちごはん」とは何でしょう?

父がコロナ禍の中、選抜高等学校野球大会の解説を務めるため大阪入りしたのですが、極度のストレスと慣れない食事で体調不良に陥ってしまって。

私と母で大阪まで迎えに行き、3人で家に帰りました。その後、父は安心したようで、我が家のごはんを食べたら体調も良くなりました。

最近は、病院へ行ってもお薬とともに栄養指導を促されることが多くなり、食習慣が健康維持や体調管理に重要なキーワードになっています。

やはりどんなおいしい外食より、家族の健康や好みを熟知したおうちごはんは最強です。

朝起きてきたときの顔色を見て、何気ない会話をしながら家族の体調や心の内を知ることができる、大切な時間なのだと思います。

――最後に今後、挑戦したいことや力を入れていきたいことはありますか?

Instagramに載せた写真を見ると、実物の方がもっとおいしそうなんだけどな~って思うこともあるのですが、なかなか上手に撮れません(泣)。

おうちごはんさんとのご縁をきっかけに、Instagramでの写真の撮り方や、SNSの活用方法を学んでいきたいと思っています。

今はまだ免許証の顔写真と同じレベルなので、本物の方がもうちょっと良いんじゃないかな~と温かい目で見守っていてくださいね(笑)。

ありがとうございました!

元美さんの作るごはんは、食べる人のことを第一に考えて栄養も愛情もたっぷり。どれもおいしそうで、食べるのが楽しみになるものばかりです。

元美さんが「家事ヤロウ!!!」で披露した3品のレシピは、番組の公式Instagramで公開中。参考にしながら作ってみてはいかがでしょうか。

また、寮母時代のエピソードをもっと知りたい方は著書『甲子園、連れていきます!横浜高校野球部 食堂物語』(徳間書店)もチェックしてみてくださいね。野球だけでなく、部活に打ち込む全ての学生とそのご家族は必読の一冊ですよ!

(text by コノ)

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食卓アレンジメディア「おうちごはん」は、おうちでごはんを楽しむ方に向けて毎日の食卓が楽しくなるようなアイデアや情報を発信しています。 いつもの「いただきます」を楽しく、ちょっとの工夫でおいしい食卓を。 生活の中にある笑顔を増やし、食卓シーンを彩り豊かにしていきたいと思っています。
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