親の心構えや、子どもに対して言ってはいけない&やってはいけないことなどについて、淀屋橋心理療法センター所長で医師の福田俊一先生に聞いた。
「拒食症の場合は特に親が子どもになんとか食べさせようとしますが、そこで『いやいや、私にとって痩せることは大切なこと』などと主張するような子であれば、親子の対話がきちんとできていて、自分の気持ちの発散の仕方もわかっているので、問題ありません。でも、そういう子はあまりいないのです」(福田先生 以下同)
たいていは「食べようとはしているんだけど」などと一応合わせるものだそう。
「親が食べろと言い、子どもが表面上合わせる場合には、かえって不完全燃焼で中途半端な親子関係になってしまうので、意味がありません。食べることを直接勧めたり、話題にしたりするのではなく、むしろ食以外の分野で話せる関係を築きましょう」
体重の話題は避け、親子で揉めたり、本人に動揺させたりしないよう、体重計を隠す家庭もあるそう。
「ただし、体重管理は必要ですので、家庭では体重の話に細かく立ち入らず、医療機関でだけ体重をはかるなども良いと思います」
●「食」以外のエネルギーの行き場を見つけること!
ところで、「体重以外の話」というと、具体的にどんな話をすべきなのか。
「摂食障害の子は、拒食症にしろ過食症にしろ、『痩せたい』という思いを強く持つあまり、食ばかりに異常に強い執着を示してしまう傾向があります。そのため、何か別の間接的なエネルギーの行き場を作る必要があります」
話題は実はなんでも良いそうで、大切なのは、その子の「喜怒哀楽をきちんと出せるようにすること」という。
「例えば、『ケーキ職人になりたい』と言ってオーガニック食材などの研究をし、アメリカ留学もして、摂食障害が治った人もいます。パン職人になった人も、着物の着付けの先生になる目標を見つけた人もいます。もともと食に対する執着が強い子が、自分のなかの『食べること』の優先順位が下がることで、解放されることが多いのです」
また、小さな子の場合は、「自分の気持ちが表現できなかった」「良いことは話せるけど、嫌なことは話せなかった」などのケースがあり、お母さんときちんと話せるようになったことで拒食が治ることもあるそう。
「摂食障害を持つ子は、秘めたるエネルギーがある子」と福田先生はいう。親も子も悲観的にならず、長い目で向き合いながら、子どもの伸ばし方を考えることができたら、子も解放され、親の自信にもつながるかも。
(田幸和歌子+ノオト)