暮らし上手なフーディストさんにフォーカスし、毎日のお料理がよりおいしくなる気づきや、心地よく暮らすヒントをお届けする不定期連載「おいしい暮らし」。今回は、29万人ものTwitterフォロワー数を誇る料理研究家のジョーさん。に、レシピに込めた思いや毎日の食事作りのアドバイス、暮らしを楽しむコツを教えていただきました。
台所担当さんが着席して、みんなで「いただきます」ができる食卓を
——ジョーさん。が、食の世界でお仕事をするようになったきっかけについて教えてください
「子どもの頃、母の手伝いの延長で料理が好きになって、学生時代も料理自体はずっとしていました。大きなきっかけになったのは、新卒で入った会社を退職したこと。そのときに、『どうせなら、好きなことを仕事にするために自分の人生を賭けてみよう!』と思い立って、料理研究家の方が経営している会社にアルバイトから修行に入り、料理家の卵として働き始めました」
——フーディストとして、ご自身のレシピをSNS、とくにTwitterで発表するようになったきっかけは?
「まずは自分のホームページを立ち上げて、そこでレシピを発表していました。Twitterでレシピを公開し始めたのは、そもそもはそこに流入させるのが目的だったんです。そうして試行錯誤するうちに、SNSに投稿するレシピはSNSの中の人に喜んでもらえるものを投稿したほうがよい、と思い直して。それからTwitter内で完結するレシピにシフトしたところ、順調に『いいね!』数が増え始めて、今に至ります」
久しぶりのレシピ投稿は
妻のつまみ食いが止まらずリスみたいになってたやつ“ベーコンバター肉じゃが”
1cm幅に切ったベーコン150gを焼き
4等分にしたじゃがいも3個くし切りした玉ねぎ1個を加え炒めたら酒大2 みりん大2を入れ炒め
しょうゆ大1 水80mlを加え8分位煮る
水分飛んだらバター20g入れ完成 pic.twitter.com/gsh3WBBWuc— ジョーさん。(料理研究家) (@syokojiro) August 18, 2020
——レシピを考えたり、お料理をする上で大切にしていることは?
「まずは、作り手がとにかく楽になることです。実際の手間という意味ではもちろん、気持ち的にも楽になるようなレシピを心がけています。たとえば、2回に分けて加熱した方がおいしいけれど、あえて1回加熱でOK!など、少しでも負担が軽くなるよう試作をします。
わが家は両親が共働きで、母がいつも食卓につかずに僕たちのごはんを作ってくれて、僕たちが食べ終わったあとに冷めたものを食べていて…。それが寂しかったので、台所担当さんが着席して、みんなで『いただきます』ができる食卓を作るお手伝いができればと思っています」
——お母さんへの思いが、ジョーさん。のレシピには込められているんですね
「それと、もう1つは“作る気”になるかどうか。おもしろい組み合わせだからやってみようとか、たまたま冷蔵庫にあるから、簡単そうだからなど、SNSなどでレシピを見た方が作る理由になるフックを常に考えています。
これも、やっぱり母のような存在の人を楽にしたい、という思いはあります。台所に立つ人が増えたら、きっと台所担当さんも楽になりますよね。みんなで台所に立つのが当たり前という世の中に、ますますなっていくといいなと思っています」
これ…すごい…
マジでいくらみたいな濃いうま味がする…「サーモンの塩昆布漬け」
刺身用サーモン150gに
塩昆布20g(大さじ1強)を全体にまぶして、ぴっちりラップするかジップロックに入れて
20分くらい漬けるだけ。1日漬け込んでもOKです。 pic.twitter.com/caMcdJ6n5f
— ジョーさん。(料理研究家) (@syokojiro) February 25, 2020
——楽になる、というお話が出ましたが、お忙しい毎日、お時間のない中で「味も見た目もおいしくするコツ、準備」などアドバイスをお願いします!
「油だけはちょっといいものを使うこと、がおすすめです。良いオリーブオイルやごま油、バターは香りがよくてコクがあり、それでいてしつこくないので、料理全体のベースアップになります。
それに、油は料理の仕上げに少しかけると、照りが出ます。この照りというのは、料理カメラマンが苦労してそこにだけライトを当てて作り出すくらい『おいしそう!』と思わせるために重要なポイント。油をサッとかけると簡単に照りが出ます。上質なオリーブオイルやごま油なら、こうしたちょい足しの油として使っても罪悪感が少ないですよ」
——見た目といえば、どんな食器がお好きですか?
「青色のお皿が好きです。青は普通の食品にはない色なので、どんな料理をのせても、食材の色が埋没してしまうことがないんです。清潔感を感じる色でもあるので、いわゆる“男めし”的なガッツリ系の食事でも見栄えしますよ。
青は食欲が減退する色、なんていわれることもありますが、旅館などで出てくる食事って、普通に青いお皿で出てきますよね」
——キッチンクロスの使い方も素敵ですね!
「親しみやすさと、作ってみようと思えることを大切に料理をしているので、SNSの写真はあまり凝りすぎないようにしています。その分、リネンのキッチンクロスは、敷いたりちょっと写り込ませたりするだけでアクセントになるので重宝しています。ふだんは倉庫にしている部屋にずらりとかけていて、料理との組み合わせを考えて選んでいます」
読んでいるだけでお腹が空く名著
——プライベートでは、本や映画もお好きとか。思い出の作品といえば?
「じつは、学生時代は小説家として出版社から作品を出すところまでやっていたので、今でも本はよく読んでいます。料理に関するものでは、向田邦子さんのエッセイ『霊長類ヒト科動物図鑑』。そこに登場する、向田さんが記憶を頼りに、いちじくをブランデーで煮てコンポートを作る一編が大好きです。いちじくが半分透き通り、アルコールは飛んでうまみだけが残る、という描写がなんともおいしそうで、印象に残っています。
あとは、石井好子さんの『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』。読んでいるだけでお腹が空く名著です。
映画では、『かもめ食堂』でおなじみ荻上直子監督の『トイレット』。もたいまさこさん演じる日本語しか話せない“ばーちゃん”が、カナダ人の孫3人と“ギョーザ”を作るシーンが印象的です。食卓を囲めば誰でも家族になれるということを表現してくれる、僕にとって大事な一幕です」
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わずか140文字のテキストと写真で、読者の気持ちをがっちりつかむジョーさん。のレシピ。そこには、ジョーさん。ご自身のさまざまな経験、そしてお母さまやご家族への思いが込められているんですね。
配信: フーディストノート