ママは万引き犯! 幼い我が子の前で24点を窃盗……「警察に相談します」店長が怒りの通報

万引きママに店長が「子どもたちの前で、とんでもないことしているわね」

 正気を取り戻したのか、犯行を素直に認めた女は途端に涙を流して、わなわなと震え始めました。その顔を正面から見れば、まだ幼さが残っており、ふたりの子を持つ母親には見えません。いつものように、大丈夫だからとなだめながら事務所に連れていき、盗んだ商品をデスクの上に出させたうえで身分確認を求めます。

 差し出された運転免許証によると、女は23歳。土地勘がないので住所を見てもわかりませんが、この店から車で5分ほどのところにある一軒家で暮らしていると話しています。

 今回の被害は、計24点、合計3万8,000円ほど。

 買い取れるだけのお金を持っているか尋ねると、現金はないけどカードでなら支払えると、涙ながらに言いました。うつむく母親の顔を、不安気に覗き込む子どもたちは、場面を読んでいるのかひと言も発しません。その様子を、苦々しい顔で眺めていた店長が、子どもたちに聞こえないくらいの声で女に問いかけます。

「あなた、子どもたちの前で、とんでもないことしているわね」

「ごめんなさい……」

「これ、なんのために盗ったのよ? 転売目的よね? いままでに捕まったことはあるの?」

「……本当に、ごめんなさい。子どもがいるので、警察だけは勘弁してください。お願いします!」

 ひどく慌てた様子で店長にすがりついた女は、右腕を抱きかかえて泣きつき、お願いしますを連呼しています。

万引きママに「あの女、前が大麻じゃなかったら、子どもらと家に帰れたんだけどね」

 ひどく困惑した様子で、子どもたちと私の顔を交互に見た店長が、犯行の理由を改めて問い質しました。

「こんなにたくさん盗って、そう簡単には許せないわよ。どうして盗ったのか、理由があるなら聞いてあげるから、言ってごらんなさいよ」

「実は、旦那が逮捕されちゃって、どうしていいかわからないんです。働くにしても、子どもを預けられるところなんてないし、助けてくれる人なんて誰もいなくて……」

「だからって、盗ったらダメでしょ。ここで見逃しても、あなたは同じことするほかないわよね? 子どもたちのためにも、警察に相談します」

 結局、警察に引き渡された女は、その場で逮捕されることになりました。別々のパトカーで所轄警察署に向かい、調書作成のため刑事課の取調室に案内されると、ずいぶんとフレンドリーな初老の刑事が担当でした。ベテランながらも、あまり仕事ができそうにない感じのする人で、着席すると同時に被疑者の背景を話しはじめました。

「あの女、前が大麻じゃなかったら、子どもらと家に帰れたんだけどね。旦那もお勤め中だし、パクるほかないよ」

「子どもたちは、どうなるんですか?」

「とりあえず児相(児童相談所のこと)だね。ちゃんとした親族が身請けして、面倒見てくれたらいいけど、世の中の状況も悪いから難しいよな」

 午後11時過ぎ。逮捕手続きを終えて警察署を出ると、すっかり寝入ったらしい子どもたちを抱きかかえた職員が、どこに行くのかワゴン車に乗り込むところを見ました。母娘を引き裂く結果を招いた自分の仕事に、嫌気がさしたのは言うまでもないでしょう。

(文=澄江、監修=伊東ゆう)

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サイゾーウーマン
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