労災遺族年金・一時金とは?絶対に知っておきたい8点を解説

労災遺族年金・一時金とは?絶対に知っておきたい8点を解説

労災遺族年金についてご存知ですか?

業務災害や通勤災害で労働者が亡くなった場合、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」といいます。)では、その労働者の遺族に対して労災遺族(補償)年金をはじめとする手厚い給付が行われます。

今回は、この労災遺族年金等の遺族給付について、弁護士が分かりやすくご説明します。

さらに、労災保険以外に知っておくべき給付もご説明します。

万が一の労災死亡事故に備えて、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

労災の認定について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

1、労災遺族年金について知る前に|労災の遺族(補償)給付とは

まず、遺族(補償)給付の概要をご説明します。

(1)遺族(補償)給付とは何か

業務災害や通勤災害が原因で労働者が亡くなった場合に、その遺族に対して給付が行われます。

業務災害の場合は「遺族補償給付」、通勤災害の場合は「遺族給付」と呼ばれます。

本稿ではまとめて「遺族(補償)給付」と記載します。

(2)どんな場合に誰がもらえるのか

業務災害や通勤災害で労働者が亡くなった場合に、一定の範囲の遺族に支給されます。

支給対象となる遺族の範囲はかなり複雑です。

はじめに給付を受けていた遺族に再婚・死亡などの事情が発生すると、次の順位の遺族がもらうことができるという仕組み(転給)もあり、なおさら理解が難しくなっています。

次項で詳しくご説明します。

(3)どんな給付があるのか

年金と一時金があります。

「遺族(補償)年金」:死亡した労働者と関係の深い特定の範囲の遺族に支給されるものです。

「遺族(補償)一時金」:被災労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合等において、特定の範囲の遺族に支給されるものです。

遺族(補償)給付のメインは「遺族(補償)年金」であり、本稿はこれを中心にご説明します。

「遺族(補償)一時金」は別項「5」で簡単にまとめます。

(4)参考:それ以外の給付

葬祭を行った遺族などは「葬祭料(業務災害の場合)」または「葬祭給付(通勤災害の場合)」がもらえます。

315,000円に給付基礎日額(注)の30日分を加えた額です。

この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額60日分が支給されます。

本稿では詳しい説明は省略します。

(注)給付基礎日額とはボーナスを除いた賃金の平均日額のことです。詳細は後述します。

2、労災遺族(補償)年金の受給資格者〜誰がもらえるの?

遺族(補償)年金は、次に説明する「受給資格者」(受給資格を有する遺族)のうちの最先順位者(以下、「受給権者」といいます。)がもらえます。

2種類の年金と手厚い一時金の組み合わせです。

受給権者が死亡や再婚、年齢超過などで受給権を失うと、その次の順位の者が新たに受給権者となります(これを「転給」といいます。)。

「受給資格者」は、次の2つの要件を満たす人です。

  • 被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持している
  • 被災労働者の配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹

もっとも、妻以外の遺族は、被災労働者の死亡の当時に、年齢や障害の状態について一定の要件が定められています。

(1)受給資格者の要件その1(生計維持関係)

被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していたことが要件となっています。

なお、被災労働者に全面的に生計を依存していなくても、生計の一部を維持していれば足ります。

例えば被災労働者と「共稼ぎ」していた配偶者も要件を満たします。

(2)受給資格者の要件その2(一定の続柄・年齢または障害要件)

被災労働者の死亡当時に以下の要件を満たすことが必要です。

年齢要件・障害要件はいずれか一方を満たしていれば足ります。

 【「受給資格者の要件」と「受給権者の順位」の一覧表】

受給権者の順位

受給資格者の要件

(年齢要件・障害要件はいずれか一方を満たすこと)

続柄要件

年齢要件

障害要件

妻(注1)

夫(注1)

60歳以上

一定障害(注2)

子(注3)

18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間であること

一定障害(注2)

父母

60歳以上

一定障害(注2)

18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間であること

一定障害(注2)

祖父母

60歳以上

一定障害(注2)

兄弟姉妹

18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間であるか 60歳以上であること。

一定障害(注2)

55歳以上60歳未満

父母

55歳以上60歳未満

祖父母

55歳以上60歳未満

兄弟姉妹

55歳以上60歳未満

(注1)配偶者は事実婚でも差し支えありません。

(注2)一定障害の内容:「障害等級第5級以上の身体障害」であること。

(注3)被災労働者の死亡の当時、胎児であった子は、生まれたときから受給資格者となります。

(注4)⑦~⑩の55歳以上60歳未満の夫・父母・祖父母・兄弟姉妹は、受給権者となっても、60歳になるまで年金の支給が停止されます(これを「若年停止」 といいます)。

(参考)厚生労働省       労災保険 遺族(補償)給付・葬祭料(葬祭給付)の請求手続

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