パトライト盗んだ若者、「先輩の引退式があって……」と説明
被害は、パトライト2点、合計で税込8,000円ほど。
身分を確認すれば、別々の高校に通うという2人は共に17歳で、地元の友だちという関係でした。この店からバイクで20分ほどのところに家族と暮らしているらしく、商品の買い取りやガラウケに困ることはなさそうです。必要事項の確認を終え、2人の扱いを店長に委ねると、通報する前に彼らと話をしたいと言われました。
「おい、おまえら。いつも来ているけど、来るたびにやっているのか?」
「いや、初めてです。信じてください」
「じゃあ、今日は、なんで盗った?」
「先輩の引退式があって……」
話によると、高校を卒業して就職する先輩の引退記念として、週末に集まってバイクで走る約束をしているらしく、その場を盛り上げるために使いたかったということでした。私からすれば普通の子にしか見えませんが、どうやら暴走族のようなバイクチームの一員のようで、そのギャップに驚くほかありません。
「ふん、くだらねえ。おまえら、ほかにも悪いことしてそうだから、警察呼ぶかな」
「いや、ちょっと待ってください。もう絶対にしないので、警察だけは……、すみません!」
「……面倒だし、まあいいか。じゃあ、おまえら、仲間も含めて、ウチには2度とたまらないって、約束してくれるか?」
「します、します。もう絶対に来ません!」
「おれも昔、同じようなことしていたからさ」と警察を呼ばなかった店長
その後、駐輪場で待つ仲間たちのところまで一緒に出向いて、2人の口から出入禁止になったことを伝えさせた店長が、みんなに2度と来ないと約束してもらうことで事態は終結。出入禁止と通告しておきながら、ちゃんと買い物をしてくれるなら来てもいいからと、どこか親しげに話す店長の真意が気になります。
「俺も昔、同じようなことしていたからさ。警察の相手も面倒だし、出禁にできれば、それでいいかなって。今日は、お手柄でした。ありがとね」
法的には、警察に通報して引き渡すべき話で一抹の不安が残りましたが、被害者本人の意向に逆らう立場にもありません。本音を言えば、少年事案の事件処理は甚だ面倒で時間がかかるため、残業せずに済んでよかったと秘かに安堵した次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)
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配信: サイゾーウーマン
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