瑕疵担保責任とは?知っておきたい4つのキホンを弁護士が解説!

瑕疵担保責任とは?知っておきたい4つのキホンを弁護士が解説!

「瑕疵担保責任」というキーワードが不動産売買では必ずと言っていいほど登場します。

文字面だけ見ると難解な言葉という印象を受けますが、その意味はとっても当たり前でとっても簡単です。

たとえばあなたが友人から友人が持っていたゲーム機を2000円で買ったとしましょう。

そうしたところ、充電してもうんともすんとも言わなかったらどうしますか? 

やっぱりいらない、お金を返して、となるでしょうか。ゲーム屋で修理してもらった修理代金はお前が払えよ、と言うでしょうか?

それとも友人に対して直してよ、と言いたいでしょうか。

お金を払って買った物だからこそ、その物に不備があった場合、買った人は満足できないわけです。

このように、売った物に対して売主がどんな責任を負うのか、という問題が「瑕疵担保責任」です。

このことは、家などを購入する場合にも同じように問題となります。

今回は瑕疵担保責任について

  • 瑕疵担保責任の意味
  • 瑕疵担保責任にはどういう意義があるのか
  • 瑕疵担保責任に関する日本の法律
  • チェックポイントや欠陥が見つかったときの対応

以上の項目を解説します。

本稿がマイホームの購入を検討されている方や、今まさに欠陥についてお悩みの方の参考になれば幸いです。

1、瑕疵担保責任とは

(1)瑕疵担保責任とは(民法第570条)

瑕疵担保責任の「瑕疵」とは、キズや欠陥等のことで、不動産においては雨漏りやシロアリ被害といった購入時には気づきにくい欠陥を指します。

瑕疵担保責任とは、一般的な注意では発見できなかった売買の対象物の瑕疵に関して負担する 売主の責任のことをいいます。

(2)これはわかりやすい!瑕疵担保責任の事例

瑕疵担保責任について、お店で買った場合を想定すると少しわかりにくい部分も出てくるため、まずは、冒頭でも記載したような基本的な売買を例に取りその性質を確認してみましょう。

Aさん(売主)が、自分が持っているパソコンをBさん(買主)に3万円で売るとしましょう。

Bさんはパソコンが一通り動くことを確認した上で購入しましたが、数日後、すぐに電源が落ちてしまうことが判明しました。

Bさんのチェックによっても見つからなかったパソコンの欠陥。

Bさんは、せっかく3万円も出したのに!Aさんひどいよ!と困ってしまいます(このとき「安かったから仕方ないな。ちゃんとお店で買おう」と思うようなBさんはちょっと横においておきましょう)。

法律上、BさんはAさんにどんなことが言える(請求ができる)のでしょうか。

これが瑕疵担保責任の問題です。

この基本的な売買には、以下の特徴があることを押さえてください。

①Aはパソコンを作った人ではない

Aは、基本的にパソコンを作った人ではなく、単なる所有者です。

そのため、「修理してよ」という請求(瑕疵修補請求)はナンセンスであることがわかると思います。

②パソコンの値段がAとBの個人的な気持ちで決められている

その値段が初めから適当なのかどうかは本人たち以外はわかりません。

そのため、「安くしてよ」という請求(減額請求)は、どのくらい安ければいいの? という部分も本人たち次第であり、難しいといえるでしょう。

③このパソコン自体(パソコン内に重要な個人情報が入っていたり、Bに必要なアプリが充実していたり)は唯一無二

Bがこのパソコンに目をつけた理由はさまざまで、似たものはあるかもしれませんが、「同じ」ではありません。

そのため、代わりをくれ!という請求(代替物請求、追完請求)は、どの代わりならBが本当に満足するのか、第三者にはわかりかねます。

法的請求が難しい、ということがわかるかと思います。

(3)なぜお店で購入するときはわかりやすい事例にならないの?

瑕疵担保責任が問題になるのは、(わかりやすくいうと)買ったものが「1点もの」である場合です。

法律上これを「特定物」というのですが、お店で購入した場合の多くは、たくさん同じものが並んでいる中の1つ(または一部)を購入しています。

たとえばパソコンにしても、同種のパソコンはたくさん存在するのです。

つまり、「1点もの」ではありません。

お店で買う場合、並んでいる中から選んだ瞬間「特定物」となるわけですが、選ぶ前から欠陥があった場合は「特定物」にはならないことになっています。

なので、お店で買うケースは、瑕疵担保責任の説明には使いづらいのです。

ちなみに、お店で買った場合、選ぶ前から欠陥があったとき、瑕疵担保責任でないとしたらお店にはどんな責任があるのでしょうか。

あなたならお店にどんな請求をしたいですか?

同種同等の品物が他にもたくさんあって、どうしても欲しいなら、おそらく「(欠陥がないものと)替えてください」というのが一般的かと思います。

これは法的に言うと、売買契約上の売主の引渡義務(調達義務)の履行をもう一度求める、ということとなり、瑕疵担保責任とは別の単純な契約上の義務という説明になります。

(4)一般生活の中での瑕疵担保責任は「不動産売買」でだけよく見かける理由

このように、お店から購入する場合は瑕疵担保責任を追及する場面は少ないことがお分かりいただけたと思います。

また、事例で出したような個人から物を買うことも、実際はあまりないでしょう。

あったとしても知人間での売買であれば、大きな紛争にもなりづらいです。

そんな実際から、瑕疵担保責任は、生活の中においては「1点もの売買」である不動産の売買において問題となることが多いのです。

ちなみに、商人間のビジネスにおいては、システム系の請負契約で問題になることが多いと思います。

本記事では、ビジネス上の瑕疵担保責任ではなく、生活の中で不動産を購入する、つまりマイホームを買うときの瑕疵担保責任について、以下、説明を続けてまいります。

2、瑕疵担保責任における売主の具体的責任は?

さて、瑕疵担保責任を追及するとき、買主は売主に対し、どんな請求または権利行使ができるのでしょうか? 

以下の通り、契約解除と損害賠償請求となります。

(1) 契約の解除

契約の解除とは、「これやっぱり返す。だからお金も返して」というものです。

これは「請求」ではなく、解除権の行使です。

相手がこれに応じるか応じないか、という問題は発生しません。

解除権を持つ者が解除権を行使すれば、もう契約の解除は決定です(相手がお金を返してくれないときは、返還請求といって別の請求をしていくことになります)。

(2)損害賠償責任

マイホームの場合、立地や金額などあらゆることを考慮して購入を決断したはずです。

欠陥があったとしても、なんとかして住み続けられないか、と考える方も多いのではないでしょうか。

そんなときは損害賠償請求です。

瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、信頼利益の範囲に限るとされています。

信頼利益とは、その欠陥なんかないと信じたために発生した実費等の損害額です。

たとえば、売買契約にかかった印紙代や、契約のために一定の場所に赴いたときの交通費などです。

この基本からは、修理にかかった修理代は認められません。

しかし判例では、修理にかかった修理代の請求も認められています。

どんな損害が損害賠償の請求対象となるかは、詳しくは弁護士にお問い合わせください。

(3)修理請求はできるの?

瑕疵担保責任での売買の基本的な考え方として、売主はその「物」を作った人ではない、単なる所有者である、ということは前述の通りです。

そのため、瑕疵担保責任の追及としては、基本的には修理請求は難しいと言えます。

ただ、マイホーム(建物)については事情が変わってきます。

作る(建築する)会社と売る会社が同じ、というケースが多いからです。

この観点から行けば、中古物件の場合では、(他社で建築されたものを)販売だけする会社、というケースもあると思います。

そのため、新築住宅と中古住宅で考え方が異なります。

①新築物件の場合

新築物件は瑕疵担保期間10年間の義務化が「住宅品質確保促進法」という法律で規定されています。

引き渡し後に住宅の基本構造部分に瑕疵が発見された場合、売主は10年以内であれば無償での修理を行う義務があります。

②中古物件の場合

中古物件の場合は、新築物件のような法律は存在せず、基本的に民法の規定に従うことになります。

つまり、基本的に修理請求はできず、(解除の他は)修理にかかった費用を損害賠償請求する方向で検討することになるでしょう。

(4)減額請求はできるの?

現行法では、瑕疵担保責任に基づく減額請求はできません。

瑕疵による担保責任ではなく、数量不足などについての担保責任(民法第565条、第563条)では認められる減額請求。

数の不足についてなら減額が認められる理由は、客観的に減額額がわかりやすいという点にあるといえます。

一方「瑕疵」という程度感のある原因では、どの程度の減額が適切なのかが見えないため、このような結論となっているのでしょう。

減額をする、という目的を果たすには、現行法上では「一部を解除」「損害賠償」という方法をとることになります。

(5)責任追及できるのは買主が欠陥に気づいていなかった場合だけ

売主の瑕疵担保責任は、あくまでも買主のチェックで発見に至らなかった「隠れたる瑕疵」に限定されます。

新築物件の場合はそもそも瑕疵などないはずですし、あったとしても「気づいていただろう」などという話になることはあまり想定されません。

注意すべきは中古物件の購入時。説明を受けた欠陥部分は全て実際にチェックし、また気になる家の中の動作は全て確認しておきましょう。

住んでみなければわからない雨漏り等はチェックしようがないため、「隠れたる瑕疵」となる可能性が高いでしょう。

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