●言葉だけでなく親の態度からもコンプレックスは伝わる
心理カウンセラーのみずがきひろみさんによると、コンプレックスの伝染はあり得るといいます。
「たとえば、もし自分自身に学歴がないと、子どもに学歴を追い求めてしまいますし、優秀な子どもと比較して『勉強しないといい人生が歩めない』というように不安感を抱かせてしまいます。また、容姿に自信がないと子どもに対しても、つい『あなたは笑顔しか取り柄がないので笑っていなさい』と言ってしまうなど、親の思い込みを押しつけてしまうことがあります」(みずがきさん、以下同)
これは、親が子どもに自分を投影し、無自覚に自分のコンプレックスを子どもに映し出してしまうからなのだそう。
「言葉の押しつけだけではなく、親の態度からもコンプレックスが伝染することがあります。子どもは親がいないと生きていけないので、親が何を良しとして、何に嫌悪感を持っているかということに神経をとがらせ、一挙手一投足を観察しています。たとえば、子どもって歩き方や話し方などちょっとした仕草が、お父さんやお母さんと似てきますよね。もちろん遺伝の影響もありますが、子どもは10歳くらいまでの間に、人間としてどのように振る舞い、生きていくか親を手本にしているんです。そのなかで、物の見方や判断基準を読み取るので、コンプレックスがダイレクトに伝わるような言動だけではなく、親の無自覚な振る舞いも影響します」
●コンプレックスとの向き合い方をしっかり伝える
となると、もはや親自身がコンプレックスを解消しないかぎりは、子どもに連鎖してしまうのは防げないのではないでしょうか?
「大切なのは、コンプレックスとどう付き合ってきたかというのをしっかり子どもに伝えることです。たとえば、『学歴がなくて苦労したけど、こういう努力をしたから今好きな仕事に就けている』とか、『容姿には自信なかったけど、卑屈にならずに自分の長所を活かして人に接するようにした』など、まずは自分のコンプレックスを認めたうえで、どう克服してきたのか言葉にするのです。きちんと話すことで、子どもは親の姿を学ぼうとするはずです」
子どもは親の背中を見て育つと言いますが、コンプレックスにおいても同じことがいえるようです。まずは、親自身がどんなコンプレックスを感じ、そのコンプレックスとどう付き合っているのか、子どもに真摯に伝えていくことが大事なのかもしれません。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)