●働いている人と接する機会を与える
子どもの職業観育成に詳しい、学び総合研究所代表の西尾竜―さんによると、まずは“仕事とはこういうもの”という仕事観を養うことで、より具体的な職業観が身についてくるといいます。
「親子の会話や日々の生活を通して、子どもは“世の中にはこんなお仕事をしている人がいるんだ”という仕事観が育まれます。そのうえで、小学校高学年くらいになると、自分だったらどんな仕事をしたいかということを考えるようになります。仕事に興味関心を持つようになったら、実際に働いている大人と交流することが、子どもの職業観育成にいい影響があると考えられます。たとえば、お父さんやお母さんが働いている職場の同僚と会わせることも有効でしょう」(西尾さん、以下同)
子どもにとって“働いている大人”というのは遠い存在。その大人を身近に感じることで、より具体的に働くということをイメージできると言います。
「働いているところを直接見せるというのは難しいかもしれませんが、たとえば職場の外で行われるイベントなどに、可能であれば子どもを連れて行くのも効果があると思います。そのときに、意識していただくといいのが、20代くらいの若手の人と引き合わせること。親が30代から40代中盤だとして、同世代の人だと、親と接するのと同じような感覚になってしまいます。年齢的にも一番近い20代のお兄さんお姉さんが何をやっているのか、その場の雰囲気からうかがい知ることができます。これは非常に貴重な機会だと言えるでしょう」
●若手社会人のリアルな声が子どもの刺激に
子どもが参加できそうな会社のイベントをはじめ、家でホームパーティを企画するときなどにも若手の社員を呼ぶことで、子どもも素直に話を聞けるのだそう。
「若手は社会に出て苦労しながらも、こんな夢を持っているとか、仕事にはこんな大変さもあるけど、こういう面白さがあるというのを率直に話します。小学校高学年にも差し掛かると、親の言うことを素直に聞かなくなります。しかし、その頃にしっかりと職業観を育むことで、日々の行動や努力するポイントも大きく関わってきます。そうした大切な時期に、親や身近な人以外の働いている人から生の声を聞くことは大事だと思います」
子どもの頃にしっかりとした職業観が身につけば、子どものなかでより具体的な努力目標が生まれ、日々の行動も変わってくるものです。子どもの価値観を揺さぶる人との出会いを演出してあげるのは、職業観育成において親ができる効果的なアシストだといえるでしょう。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)