【おうちごはんインタビュー vol.29】yuka*cmさん

【おうちごはんインタビュー vol.29】yuka*cmさん

日々のおうちごはんをInstagramに投稿し、ご自身の世界観を発信している方にインタビュー!今回は、カヌレをはじめ、茶色い焼き菓子“地味菓子”を愛するフードコーディネーターのyuka*cmさん(@yuka_cm_cafe)。地味菓子の魅力から上手に作るコツ、昨年出版された初のレシピ本のことまで、たっぷりと伺いました!

地味菓子をこよなく愛する、yuka*cmさんにインタビュー

プロフィール

yuka*cm(ユカセンチ)

フードコーディネーター

日本菓子専門学校卒業。ケーキ店勤務やパウンドケーキ卸売の共同経営などを経て、フードコーディネーターに。Instagramでコーヒーに合う茶色い焼き菓子を中心に投稿し、バスクチーズケーキやカヌレのレシピが話題となる。

2021年6月19日に初のレシピ本『愛すべき地味菓子~うまく焼けるていねいなレシピ』(大和書房)が発売された。

Instagramアカウント:@yuka_cm_cafe

お菓子作りのきっかけは「ひとりでできるもん!」

――小学生のころからお菓子作りをするようになったというyuka*cmさん。当時から茶色い焼き菓子、いわゆる“地味菓子”がお好きだったのでしょうか?

子どものころは、誕生日や特別なときに、ショートケーキとか生クリームでデコレーションしたケーキを買ってもらえるのがうれしくて。

焼き菓子よりも、そういう生菓子を喜んで食べていました。どちらかというと焼き菓子は、家にあっても食べようと思わなかったです(笑)。

――たしかに、子どもにとっては生菓子の方がテンション上がりますよね。お菓子作りをするようになったきっかけは?

「ひとりでできるもん!」(NHK教育テレビ)っていう子ども向けの料理番組が好きで、それを見てお菓子を作ってみたいなと思いました。

でも、初めて作ったお菓子は「ひとりでできるもん!」で紹介されていたものではないんです。

クッキーなんですけど、生地を型で抜かないで天板いっぱいに敷き詰めて焼くという、謎のことをしてしまって(笑)。そのあとからはちゃんと型で抜くようになりました。

――そこからお菓子作りにハマり、やがて日本菓子専門学校に入学。専門学校でいろいろなお菓子の実習をする中で、焼き菓子の魅力に気づいたそうですね。

そうです。

焼き菓子ってどれも基本的にはバターと卵と小麦粉が使われていて、見た目も茶色くて遠目から見たらほとんど一緒に見えちゃうんですよ。

なのに、作り方や作り手によって全く違うものに仕上がるんですよね。地味なのに奥深い。そんなところに魅力を感じました。

――yuka*cmさんのInstagramには、まさにそんな茶色くて魅力的な“地味菓子”がたくさん投稿されていますよね。昨年は初のレシピ本『愛すべき地味菓子~うまく焼けるていねいなレシピ』(大和書房)も発売されましたね。

実は、いつかレシピ本を出したくてInstagramを始めたんです。

なので、レシピ本のお話をいただいたときは、ただただうれしかったです。積み重ねてきたものがちょっと認められたのかなって。

――夢がかないましたね! ご自身の中では「こういうレシピ本が作りたい」という思いがあったかと思うのですが、イメージ通りになりましたか?

まさにイメージ通りになりました。

やっぱり焼き菓子のレシピ本を出したいと思っていましたし、タイトルも私がInstagramのプロフィール欄に書いていた「愛すべき地味菓子」をそのままつけていただきました。

何より、今回お声がけいただいた大和書房の方がとってもいい方で。私が何も言わなくても私の理想通りに進めてくださったんです。本当に良い出会いになりました。

――『愛すべき地味菓子~』では、カヌレ、バスクチーズケーキ、ガトーショコラなど37品が掲載されています。全てレシピ工程写真付きなのがとても分かりやすいです。

お菓子を作るのって結構、材料費がかかるじゃないですか。失敗するとかなりのダメージを受けるので、そういうのをなくしていきたいなって。

一度で成功すると楽しいと思うし、自信にもつながりますよね。なので、レシピは、できるだけ細かく丁寧に書くことを心がけました。

――その分、完成までには苦労もあったのでは?

レシピ自体は、私が15年間の中で作ってきたものの総集編という感じなので、特に苦労はなかったのですが、工程写真はめちゃくちゃ大変でした……(笑)。

ちょっとやっては手を止めてパシャッ、またちょっとやっては手を止めてパシャッって……。

でも、いざ作ってみてうまくいかなかったときに、写真があると自分がどこで失敗したかが分かりやすくなるじゃないですか。

やっぱり工程写真をたくさんつけるというのはやりたかったことなので、大変でしたけど、できて良かったです。

失敗しないコツはレシピ通りに作ること

――『愛すべき地味菓子~』の中で、特に初心者におすすめのレシピを教えてください。

一番簡単なのは、「ロッシェココ」です。これぞ、地味菓子!という見た目の素朴な焼き菓子で、個人的にはすごく推してます!

材料は卵白、ブラウンシュガー、ココナッツロング、シナモン、ナツメグだけ。ただ混ぜて焼くだけなので、とっても作りやすいですよ。

――yuka*cmさんの代名詞の1つとも言える「カヌレ」は、初心者に作るのは難しいでしょうか?

カヌレも作り方自体は結構、簡単なんですよね。ただ、温度が大事なので、自分のおうちにあるオーブンのクセを知っておいた方がいいと思います。

たとえば、うちのオーブンは190℃に設定しても庫内の温度は180℃になるんです。なので、常に設定温度よりも10℃上の設定にしています。

どこに火があたりやすいかとか、同じメーカーや同じ機種でも意外と違いがあるんですよね。

自分のオーブンに合う調整温度とかをつかめれば、カヌレも簡単だと思います。

――やっぱりカヌレが一番お好きですか?

そうですね。カヌレが一番好きです。

カヌレって真っ黒い見た目なのに、外側は“カリッ”として中が“クニュン”としていてラム酒が効いていて……おいしいですよね(笑)。

好きだからこそ、レシピを完成させるのもカヌレが一番苦労しました。試作も30回は超えています。

プレーンは今のものが私にとっての理想形。あとはまたいろんなフレーバーで考えていけたらなって思います。

売っているカヌレもいいけれど、自分で作るカヌレはやっぱり特別な感じがしておいしいんですよ。カヌレ好きな人、みんなに作ってもらいたいです。

――おうちでおいしいカヌレが作れたら最高ですね! お菓子作りに憧れている人って多いと思うのですが、初心者やお菓子作りが苦手な方でも失敗せずに作るコツはありますか?

一番いいのはやっぱり、レシピ通りに作ることですね。

Instagramでもよく、「〇〇がないんですけど、これで代用できますか?」っていうコメントをいただくんですよ。「小麦粉の代わりに米粉でもいいですか?」とか。

そうなると別物になってしまうので、だったら米粉のレシピで作った方がいいのかなと。まずは代用せずにその通りにやってみることが大事だと思います。

あと、たとえばタルト生地やマフィンを作るとき、バターにお砂糖と卵を入れて分離しちゃったら、バターと卵が常温に戻っていないことが原因かも。

レシピに「バターを常温に戻す」って書いてあったら、しっかり戻した方がいいです。もうこれぐらいでいいかな?だとやっぱり分離しやすいので。

ちなみに私の場合、バターを常温に戻すときは、薄くスライスしてからラップに包んでポンとおいておきます。指で触って簡単にへこんだら常温に戻っています。

――レシピ通りに作ることが大事で、温度にも気を付けた方が良いんですね。

はい。お菓子作りは計量と同じぐらい温度が重要だと思っています。

オーブン庫内や生地の温度を測れる温度計があると便利ですよ。

――お菓子作りに必要な道具については『愛すべき地味菓子~』の中でも紹介していますね。温度計以外におすすめの道具は?

クッキーをよく焼くのであれば「シルパン」。オーブン用シリコンマットで、繰り返し使えます。

それを使うと使わないでは全然違うんです。すごくサクサクに焼き上がるので、ぜひ使ってみてほしいです。

――『愛すべき地味菓子~』を手にとった方は、お菓子作りの初心者から上級者までさまざまだと思いますが、どんなふうに活用してもらいたいですか?

レシピの難易度はそれぞれ★の数で表しているので、初心者の方は簡単なものから作っていただいて、どんどん上達しながら楽しんでいただきたいです。

これまでいろいろ作ってきたという方にも、ボロボロになるまで使い込んでもらえたら幸せです。

作り手と距離の近いフードコーディネーターでいたい

――さきほど、レシピ本を出したくてInstagramを始めたとおっしゃっていましたが、それはいつ頃のことですか?

最初に投稿したのは2015年です。その前はブログを書いていたのですが、全然のびなくて……(笑)。

そもそも文章を書くのがあまり得意ではなかったので、写真がメインのInstagramの方が見てもらえるかなと思って始めました。

――アカウント名の「yuka*cm」にはどんな思いが込められているのでしょうか?

作り手さんと距離の近いフードコーディネーターでいたいという思いから、自分の名前の後に単位の「cm」をつけました。

みなさんとの距離を縮めたくて、インスタでも「どういうレシピを知りたいですか?」とか「これとこれだったらどっちがいいですか?」とか聞くようにしています。

――こちらから見ていてもyuka*cmさんはInstagramでお菓子好きな方々との交流を楽しんでいる印象があります。

知り合いは増えましたね。ユータくん(@yutaokashi)とかそうですし。

私は基本、フランス菓子を作ることが多いんですけど、ユータくんはアメリカっぽいお菓子が多いんですよね。見ているだけで知らないお菓子をたくさん知れるので、刺激になります。

ユータくんとぐっちさん(@gucci.tckb)と一緒にライブ配信する「同級生LIVE!!」もまたやりたいなと思っています。

――それは今から楽しみです! 最近はどんなモチベーションでInstagramに投稿していますか?

最近、自分の投稿数は減ってきちゃっているんですけど、毎日誰かしらが「作りました」っていう通知がくるのがうれしくて。

自分のレシピで作ってもらって、それが見られるってすごいですよね。すごい時代だなと思います(笑)。

――yuka*cmさんの投稿は写真もとてもきれいなのですが、上手に撮るコツは?

自然光でしか撮らないことですかね。

一眼レフを使っているのですが、カメラの勉強は全くしていないので多分、わけの分かんない設定で撮ってます……(笑)。

自宅の中の狭い一角に撮影台と撮影ボードを置いて、こじんまりと撮影しています。

――どのお写真も素敵です。これから新たに作ってみたいお菓子はありますか?

日本ではあまり知られていないけど、フランスのおいしい郷土菓子ってまだまだいっぱいあるんですよね。「ガトーバスク」とか「ファーブルトン」とか。

おこがましいですけど、私が作ることでみなさんに知ってもらいたいなっていうのはあります。本当、おこがましいですけど……(笑)。

――それは今度ぜひ、教えてください! ちなみに、お料理も好きですか?

好きです。

でも、作るのはフランス料理ではなく、家庭料理です。わりとがっつり系が好きなので、お肉が多いですね。

――最後に、yuka*cmさんにとって「おうちごはん」とは?

え~、何だろう……。

「おいしいという幸せの共有」ですかね。

ありがとうございました!

とにかく地味菓子への愛情が半端ないyuka*cmさん。お子さんも派手なデコレーションケーキよりもシンプルな地味菓子が好きなのだとか。

『愛すべき地味菓子~うまく焼けるていねいなレシピ』(大和書房)には、yuka*cmさんが約15年間の中で作ってきたお気に入りのレシピや想いがギュッと詰まっています。

みなさんも今度のお休みに作ってみませんか? 初めてでも、レシピ通りに作ればおいしくできるはずですよ!

愛すべき地味菓子 (単行本)

(text by コノ)

配信元

おうちごはん
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食卓アレンジメディア「おうちごはん」は、おうちでごはんを楽しむ方に向けて毎日の食卓が楽しくなるようなアイデアや情報を発信しています。 いつもの「いただきます」を楽しく、ちょっとの工夫でおいしい食卓を。 生活の中にある笑顔を増やし、食卓シーンを彩り豊かにしていきたいと思っています。
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