有給休暇を残したまま退職するとどうなる?弁護士が解説

有給休暇を残したまま退職するとどうなる?弁護士が解説

、残ったままの有給休暇は退職前に買い取ってもらえるのか?



有給休暇が残ったまま退職することは避けたいと考えても、退職日まで忙しくて有休を消化できないという場合もあるでしょう。

有給休暇は買い取ってもらえるという話を耳にしたことがあるという方もいるかもしれませんが、実際に有給休暇の買取りは可能なのでしょうか?

(1)原則的には有給の買取りは禁止されている

有給休暇は労働基準法に定められているものなので、労働者には取得する権利があります。

また、有給休暇を買い取ることは労働基準法39条に違反するとして、原則的に禁止とされています。

有給休暇はあくまでも労働者にリフレッシュしてもらうという目的の制度なので、休暇を与えずに有給休暇の買取りを行えば、制度の趣旨に反してしまうことになるからです。

労働者から買取りの請求することも同様に認められません。

裁判例では、「労働者が現実に休暇を取得することを要するものと解される」と述べているものもあり、会社からも労働者からも有給休暇の買取りを求めることはできないという結論になります。

ただし、次のような場合には、合意によって有給休暇の買取りが、事実上認められることもあります。

  • 法定基準を上回って与えられている有給休暇
  • 時効となる有給休暇
  • 退職時に未消化となっている有給休暇

(2)会社によって買取りの可否は異なる

有給休暇の買取りは原則的に禁止されているものの、退職で消滅してしまう有給休暇を買い取ってもらうことは違法になりません。

ただし、会社によって買取りの可否が異なるという注意点があります。

退職時に未消化である有給休暇の買取りに関する規定が法律上にはないため、買い取るか否かは会社側が自由に選択できます。

退職時の有給休暇の買取りに関して就業規則に記載している会社もあるので、就業規則に買取制度が記載されていれば、退職時に未消化であった有給休暇を買取してもらえます。

しかし、就業規則に記載されていない場合は、会社へ直接確認することが必要です。

、有給休暇が残ったまま退職することにならないようにできる3つのこと



 

有給休暇が残ったまま退職すれば、本来取得できた休暇を捨てることになってしまいます。

有給休暇を残して退職してしまわないようにするには、退職前に有給休暇の扱いについて考えておく必要があります。

(1)退職日の数カ月前から少しずつ消化する

有給休暇が残ったまま退職することにならないようにするには、退職よりも数カ月前から有給休暇を計画的に少しずつ消化しましょう。

有給休暇を取得することに後ろめたさを感じる方もいるようですが、有給休暇は労働者に与えられた権利であり、会社は有給休暇の取得を拒否することはできません。

しかし、突然まとめて有給休暇を取得すれば、職場の周囲の人に迷惑をかけてしまう恐れがあります。

そのため、退職の数カ月前から少しずつ仕事を調整し、有給休暇を取得していくことがおすすめだと言えます。

(2)退職時に有給休暇を取得する

有給休暇は、退職時にまとめて消化することも可能です。

最終出勤日の後にまとめて有給休暇を取得すれば、退職日まで会社には出勤していないものの給料を貰えることになるのです。

退職時にまとめて有給休暇を取得したいという場合には、退職の1ヵ月ほど前には会社に退職の意と有給休暇の取得について伝えることをおすすめします。

ただし、この場合には転職に関する注意点があります。

有給休暇を消化中の状態で転職すれば、新しい会社と前の会社の二重就労になってしまいます。

どちらの会社にも許可を取っているのであれば問題ありませんが、二重就労は雇用保険の二重加入などトラブルになってしまう恐れがあります。

そのため、新しい転職先が決まっている状態で退職する場合には、二重就労の状態となることを避けるためにも、有給休暇を取得するタイミングには注意をする必要があります。

(3)会社へ有給休暇の買取りを相談する

有給休暇の取得がどうしても難しいという場合には、会社へ有給取得の買取りについて相談してみましょう。

会社によっては有給休暇の買取制度を導入している場合もあるので、退職時に残ったままの有給休暇を買い取ってもらえる可能性があります。

有給休暇が買取になる場合、有給休暇の買取価格は「過去3カ月の平均賃金」や「標準報酬月額の日割り額」になることが一般的です。

就業規則に

  • 有給休暇の買取りの可否
  • 買取価格

について記載されている場合もあるので、会社へ相談する前に就業規則も確認してみてください。

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