非弁行為とは?なる例・ならない例・非弁連携との違いについて解説

非弁行為とは?なる例・ならない例・非弁連携との違いについて解説

非弁行為とは、簡単にいえば、弁護士でない

  • 企業
  • 個人

が、弁護士がすべき業務を行うことをいい、非弁行為を行った場合には罰則があります。

気づかないうちに非弁行為を行ってしまっているというケースは珍しくありません。

本記事では、

  • 非弁行為になる例
  • ならない例

について紹介し、非弁行為を行わないために、どうすれば良いのかについて分かりやすく解説します。

1、非弁行為とは?具体例や罰則・非弁連携との違い

(1)非弁行為(非弁活動)とは

非弁行為とは、弁護士でない者が、弁護士業を業として(商売として)行うことをいいます。

弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、“報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事務に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすること”ができない。」

引用:弁護士法

と定めています。

上記の行為については弁護士が独占権を持っています。

したがって、弁護士以外の者がすることは禁止されています。

①実質的に、弁護士業を行うことも禁止されている

弁護士法72条は、自分の権利について、自分で訴訟等を行うことを禁止するものではありません。

いわゆる「本人訴訟」のように、自分の権利について、自分で裁判を起こし、権利実現を図ることは禁止されていません。

本人訴訟の具体例としては、例えばアルバイト先を不当に解雇された人が弁護士を利用せずに自力で裁判を起こすようなケースがあります。

本人訴訟が禁じられている訳ではないとすれば、他人から権利を譲り受けた上で、自分の権利として主張すれば、弁護士法72条に違反しないのではないか?という疑問が出るかもしれません。

しかし、弁護士法73条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができない。」と定めており、一見、自分の権利を主張するようにみえても、実質的に、弁護士業を行っていると認められる場合には、非弁行為として禁止の対象とされています。

②非弁行為が禁止されるのは紛争当事者の利益保護のため

なぜ非弁行為が禁止されているのでしょうか?一言でいえば、紛争当事者の利益保護のためです。

紛争に巻き込まれてしまった人は、一般に、大きな不安と心配を抱えています。

そういった人の不安や心配に付け込んで、不当な利益を得ようとする人が少なからず、世間にはいます。

また、紛争を解決するためには、法的な知識が必要です。法的な知識を持っていない人が、紛争を解決しようとすると、かえって紛争に巻き込まれた当事者が不利益を被ることがあります。

そこで、弁護士法は、紛争の解決について、国から法的な知識を有すると認められた弁護士に独占権を与え、弁護士以外の者が紛争解決を業として行うことを禁止し、紛争当事者の利益を保護しているのです。

(2)非弁行為の具体的事例

非弁行為の具体的事例を2つ確認していきましょう。

  • 事件屋
  • 退職代行業者が未払賃金を請求するケース

①いわゆる「事件屋」

「事件屋」とは、他人の紛争に介入して、利益を得ようとする人のことをいい、非弁行為の典型例です。

例えば、多額の借金を抱えて首が回らなくなっている人を対象に「借金をチャラにできる・減らすことができる」と謳って債務整理案件を大量に引き受けるケースなどが挙げられます

他には「何でも屋」などと謳って紛争解決を請け負い、報酬を請求するケースなどが「事件屋」の例といえます。

②退職代行業者が未払賃金を請求するケース

昨今、「退職代行業者」が流行っています。

これは、一般的には、退職するという意思を会社に言い出しにくい従業員に代わって、会社に退職の意思を通知することを商売とする業者のことをいいます。

退職の意思を「伝書鳩」のように伝達するだけであれば、他人の「代理」をしているわけではないため、非弁行為にあたらないと解釈する余地があります。

しかし、退職の意思表示は、これにより雇用関係を終了させることを含むため、厳密には、グレーゾーンと考えられます。

また、退職の意思をただ伝達するという範疇を超えて、

  • 退職の条件について交渉をしたり
  • 未払賃金を請求すること

などは、「法律事務」に関して他人を「代理」しているといえるため、非弁行為にあたります。

(3)非弁連携との違い

非弁行為と似たものに、非弁提携というのがあります。

弁護士法27条は、

「弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない」

引用:弁護士法

と定め、弁護士が、非弁行為を行う者(弁護士法72条~74条に違反する者)から事件の紹介を受け、あるいは、そうした人に弁護士としての名前を貸すことを禁止しています。

非弁行為は、「弁護士以外」の人が弁護士業を行うこと禁止するのに対し、非弁提携は、「弁護士が」非弁行為を行う者と提携することを禁止するものです。

このように弁護士法は、非弁行為を行う者を取り締まるのと同時に、非弁行為を行う者に協力する弁護士を取り締まることで、世の中に非弁行為が広がらないよう規制しているのです。

(4)非弁行為の罰則は?

非弁行為を行った者(弁護士法72条及び73条に違反する行為を行った人)に対する罰則については、弁護士法77条に定めがあり、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。

2、非弁行為(弁護士法72条違反)と判断される条件とは?

(1)弁護士・弁護士法人でないこと

当然ですが、弁護士又は弁護士法人以外の者であることが非弁行為の条件です。

(2)報酬を得る目的があること

次に、「報酬を得る目的」が必要です。

ここでいう「報酬」とは、明確な対価性のあるものだけではなく、お礼のようなものも含むと解されています。

条文からすると、完全に無報酬の場合には非弁行為にあたらないことになりますが、何の見返りもないのに他人の紛争に介入するというケースはあまり多くはないといえます。

(3)反復継続して行っていること

また、「業として行っていること」、つまり反復継続して行っていることが条件となります。

非弁行為は、弁護士業を業として行うことを禁止するものです。

「業として」とは、反復継続して行うことをいいますから、1回限りのことは非弁行為にあたらないということになります。

(4)法律事務を取り扱い、又は、そのあっ旋をすること

弁護士法72条は、弁護士以外の者が、

「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事務に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」

引用:弁護士法

を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを禁止しています。

このカッコ書きの部分を広い意味での「法律事務」といい、これらを取り扱うことや、そのあっ旋(和解を勧めることなど)は禁止されます。

(5)法定の除外事由がないこと

法定の除外事由とは、罪とはならない事情を指します。

たとえば、認定司法書士法は、訴額140万円以下の事件について、簡易裁判所における代理人となることができます(司法書士法3条)。

このような法定の除外事由がある場合には、非弁行為にはあたりません。

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