「実家の片づけで悩む多くの親子を見てきましたが、必ず起こるトラブルが、片づけで“目指すゴールの違い”なんです」
そう話すのは、片づけの専門家・渡部亜矢さん。目指すゴールの違いとは?
「どうしても、子世代の人たちは自分たちが理想とする物のないスッキリした家を目指してしまうので、“こんな物捨てたら?”“使わないでしょ?”と、親の思いを無視して理想を押し付けてしまいます。しかし、今まさに暮らしている親にはプライドもありますし、物への思いもある。さらに、何十年も続けてきた習慣もあるので、分かり合えないんです。では、実家を片付ける目的と目指すべきゴールは何か? それは、“年をとった親が安心・安全・健康に暮らせる家なんですね」(渡部さん 以下同)
実家の片づけはあくまでも親が主役。つまり、親の思いを尊重しつつ安心・安全・健康に暮らせる家を目指すことが大事だそう。
「実家の片づけで一番大事なのは、コミュニケーションです。一方的に進めてもトラブルになるだけ。まずは、親の話をじっくり聞きましょう。“そして、片づける理由として、物を捨ててスッキリさせることではなく、“ここにあると危ないから、移動させる”“つまずいて転ばないようにしまう”“賞味期限が切れて健康を害するから捨てる”など、安心・安全・健康に暮らせる家が親子共通のゴールだと設定しましょう!」
さらに、親の家の片づけを円滑に進めるツールとして、片づけはじめる前に“ライフメモ”を書くことはお勧めだという。
「ライフメモは、親の人生を“見える化”したもので、年表のようなもの。これまでの親の人生を振り返り、節目の出来事、大事な思い出、家族の人数や家の広さの変化などを書き出すことで、物が増えた経緯や原因、大切な物の変化などがわかり、これから何を残すか? 何を片づけるべきか? を親に気づいてもらうきっかけにもなるんですね」
実家の片づけをすると、親が大切にしている物が明確にわかり、受け継いでいくべき物もわかる。安心・安全・健康に暮らせる家を確保することもできる。実は、その目的以上に親子に大きなメリットがあるという。
「物を通して、親の愛を再確認できる、片づけによるコミュニケーションをとおして、親子関係を再構築できるなどのメリットがあります。つまり、実家の片づけの先には、豊かな親子関係が待っているのです」
実家の片づけは、自分たちが日ごろから目指す片づけとは違う。このことをまず理解し、親の思いを尊重しつつ、安心快適に暮らせる家を目指してください!
(構成・文/横田裕美子)