こうした「虐待やDVの連鎖」は、本当にあるのだろうか。母娘関係改善カウンセラーの横山真香さんに聞いた。
「虐待やDVの『連鎖』といわれるものは、統計上では9%とか30%以上とか、さまざまな数字があります。しかし、質問の仕方や切り取り方で大きく異なりますので、データは鵜呑みにしないでほしいと思います」(横山さん 以下同)
とはいえ、横山さんのもとには、実際にこうした不安を抱く人の相談が多数あるそう。そうした人に、カウンセリングで、まず伝えることがあるという。
「不安だということは、虐待の可能性に気付いているということ。虐待は、実は無自覚にやってしまっているケースが多いのですが、虐待を受けてきた人は、ほかの人よりも心身の『痛み』をよくわかっています。心のなかに『子どもを怒鳴りそう』『手をあげてしまいそう』という、気づきの防波堤があるのです」
●DV・虐待の連鎖は「育児環境」で防げる!
「親にやられたことを、自分も子どもにしてしまう」と不安を抱く理由は、虐待やDVの被害者に共通する「自己肯定感の低さ」にあるそう。
「自分の判断力や決断力に自信を持てず、育児にも自信がない。だから、気持ちがグラグラしがちなのです」
また、虐待やDVをしてしまう人には、「自分の感情を言語化するのが苦手な人」「感情のコントロールができない人」が多く、イラッときたとき、一瞬で怒りが沸点に達し、爆発してしまうタイプが多いそう。
「そうした母親を持つ子は、人の心を読み取るのが非常にうまい一方、恐怖が体感的に刷り込まれているケースも多いです。こうしたトラウマを持つ人は、自分が怒っているときも、見えているのは、目の前にいる子ではなく、脳裏に浮かぶ自分の母親の怖い顔だといいます」
とはいえ、性格やトラウマにより、必ず虐待してしまうわけでは決してない。大切なのは「育児の環境」だという。
「夫が浮気をしたり、暴力やアルコール中毒などがあったりすると、不安定な状況になりやすく、子どもにイライラが向かいやすくなります。逆に、夫の理解やサポートがあったり、祖父母やご近所など、周りにサポート役や引き止め役がいたりする場合には、虐待は起こりにくいのです」
まずは「孤独な育児」に陥っていないか、育児環境の見直しをすること。相談相手がいない場合には、カウンセリングを受けてみるのもオススメだ。
(田幸和歌子+ノオト)