「親御さんは、ついお子さんのその時点での身長の絶対値や他の子との比較ばかりに目を向けてしまいがちなのですが、実はどのように成長しているか? つまり、その子なりに正常範囲に沿った成長ができているかがとても重要なのです。子どもの成長が順調であるかを確かめるのに有効なのが、“成長曲線”です」(田中先生 以下同)
成長曲線は、小児科やインターネットなどで入手できるという。
「お子さんの身長・体重を測ったら、成長曲線に記入していき、身長の程度を示す“SDスコア(標準偏差)”が、-2SDのライン以下のお子さんは“低身長”と定義され、同年齢の約2%にあたります。また、お子さんの成長曲線のカーブが、標準の成長曲線と平行に推移しない場合は要注意です。なぜなら、ホルモンの病気など治療が必要な病気が隠れているかもしれないからです。成長曲線をつけていると、低身長や肥満、やせすぎ、隠れている病気など、さまざまなお子さんの成長の危険信号に気づくことができるのです」
では、わが子が将来低身長になるかを見極めるポイントは、いつごろになるのだろうか?
「生まれてから3~4歳までの“乳幼児期”は、もっとも身長の程度の変化が大きい時期。4歳から思春期になるまでの“前思春期”は、身長の変化が少ない時期なんです。したがって、4歳の時点で小柄な子は小柄のまま思春期までの時期を過ごすことがほとんどで、思春期が遅くくることで、後からグッと伸び追いつく傾向にあります。しかし、マイナス2SD以下の“低身長”のお子さんの場合は、将来平均身長より高くなることはほとんどありません。つまり、将来お子さんが低身長になるかもしれないと判断するポイントは、4歳ごろがポイントと言えます。その場合は、医師に相談してみてください」
さらに、注意が必要なのが、ほとんど身長の程度に変化がない前思春期(男の子は4歳~9歳くらいまで、女の子は4~7歳くらいまで)に急激に身長が変化した場合だそう。
「前思春期の時期に、身長が伸び悩みクラスでどんどん背の順が前になっていく場合も、何か病気が隠れているかもしれないので注意が必要ですが、逆に身長が急激に伸びた場合は、 “思春期早発症”の可能性があります。思春期に分泌される性ホルモンは、初期は背をぐんぐん伸ばしますが、後半は骨を成熟させて成長を止めてしまいます。従って、早く思春期がきてしまうと早く成長が止まるので、最終的に低いままにおわってしまうのです」
最終的な背の高さは、思春期が始まるときの身長が大きく関係しているという。
「一般的に背が高い子は早く思春期がくる傾向があり、小柄の子は思春期が遅い傾向があるので、あとから追いつくかたちになります。しかし、小柄な子が早く思春期に入ってしまったり、みんなと同じように思春期に入ってしまったりすると、みんなに追いつけないで小さいまま背が止まってしまうので要注意です。思春期が始まる時期は、女の子の場合は、乳房の発育、男の子は精巣の増大でわかりますが、これが一般の人にはなかなかわかりにくいんです。そういう場合に、成長曲線をきちんと記録しておくと、急激に身長が伸びる推移で早期発見することができ、早期治療にもつながるのです。背が止まりかける思春期の終わりに気付いても手遅れなので、しっかり見極めましょう」
低身長の原因の8割は、病気ではなく、遺伝的要因や体質的要因によるものだそうだが、このように何らかの病気が原因の場合は、早期治療で改善可能なケースも! どうかお子さんの成長をしっかり把握し、治療時期を逃さないように気を付けてあげましょう!
(構成・文/横田裕美子)