家族が突然万引きで逮捕…実は〇〇の病気だった!

第3回 突然の万引きは脳の病気だった!
ニュース番組や万引きGメンなどの特番で、よく目にする老人や主婦の万引き。大量の草餅や刺身など、「なぜこんなものを?」といぶかしく思うこともあるが、実はこの万引きの影に、「前頭側頭型認知症」という病が隠されていることも! そこで「性障害専門医療センター SOMEC」代表の福井裕輝氏を取材。前頭側頭型認知症と万引きの関係性について聞いた!

●不合理性のある万引きは要注意!

「常習的な万引きと聞いて、まず挙がるのが“クレプトマニア(盗癖症)”という精神疾患。この病は発症が早く、10代から表れます。摂食障害や解離性障害、依存系障害などを合併しながら盗みを続けてしまうのが1つのパターン。これは、小さい頃のトラウマを抱えて発症する精神疾患なので、“前頭側頭型認知症”とはまるで違う病気です。“前頭側頭型~”は、その名の通り、前頭葉や側頭葉の前方が萎縮することによって“脱抑制”が表れ、衝動的になってしまう脳の病気。少しのことでカッとするようになり、善悪を瞬時に判断することができなくなってしまうので、人によって様々な犯行に出てしまうのです」(福井氏 以下同)

通常の万引きと違うのは、そこに合理性があるかどうか。

「単純に窃盗が目的である場合は、例えば“大量に盗んでそのもの自体を売る”とか、そこには合理性が見受けられますよね。ところが、“前頭側頭型~”によって万引きに至る場合は、盗んだものをそのまま放置して腐らせる、食べきれないほどの草餅を盗む、いらない歯ブラシを20本盗むなど、そこに必ず不合理性がある。ある意味、大胆不敵な万引きでもあり、そのケースを見ただけで、これは明らかに病気の兆候があると見て取れます。症状が顕著であるにも関わらず、この病気はいまだに、あまり世間に認知されていない。これからもっと研究するべきであると私は考えます」

家族が万引きで逮捕!

今のところ、予防法や原因などはまったく解明されていないという「前頭側頭型認知症」。妻または夫が、このような症例があることを知っているだけで、将来的に助かることがあるのかもしれない。

(取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

性障害専門医療センター・SOMEC代表理事・福井裕輝
福井裕輝
性障害専門医療センター・SOMEC 代表理事
京都大学工学部、京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神科、法務省京都医療少年院、厚生労働省国立精神・神経センターなどを経て現職。内閣府性犯罪被害者支援に関する検討委員会委員。大阪府青少年健全育成審議会委員。京都大学医学部精神科非常勤講師。京都大学博士(医学)、精神科専門医、精神科判定医。
京都大学工学部、京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神科、法務省京都医療少年院、厚生労働省国立精神・神経センターなどを経て現職。内閣府性犯罪被害者支援に関する検討委員会委員。大阪府青少年健全育成審議会委員。京都大学医学部精神科非常勤講師。京都大学博士(医学)、精神科専門医、精神科判定医。