いつも試合を見に来てくれた父について大人になって感じること

いつも試合を見に来てくれた父について大人になって感じること

あんふぁんWebをご覧のみなさん、こんにちは! 子育てポータルサイト「パパしるべ」の編集長の杉山です。

僕の父は、20年前、ちょうど還暦の時に病気で亡くなりました。生きていれば80歳。傘寿のお祝いでしたね。妻はほんの数回ですが顔を合わせることはできたものの、妻の両親と会ったのは一度きり。それも病室の中で、父が「こんな格好ですみません」とひたすら恐縮していたのを覚えています。

娘たちには残念ながら会えていません。つまり、僕は自分が父親になった後に父と話したことがないのです。これは本当に残念でなりません。父が何を考えていたのか?どんな思いで僕たちに接していたのか?もっと聞いてみたかった気がします。
ただ、今思い返すと、父の行動にはいろいろなメッセージが込められていたように感じます。

今でも覚えている父の分厚い手
例えば、家を出るときは必ず手をぎゅっと握りあうことが習慣でした。男兄弟3人なのでハグという感じでもなかったんだと思いますが、このライトさがよかった。大学を卒業した後も実家に帰ると、家から出る際は必ずしていました。恥ずかしいとか、そういう抵抗がなかったから続けられたと思います。ほんの小さなきっかけで、ほんの短い時間でできる些細なスキンシップかもしれませんが、きっとその積み重ねに家族を大事にしている気持ちがこもっていたように感じます。

そして、その分厚い手の感覚は20年経った今でも鮮明に覚えています。僕の中で父の存在は消えていないのです。そして僕は、父に教えられた通りに家族を大事にしようと過ごしています。

試合には必ず父がいた
思い返してみて、特にすごいと感じるのは、僕たち兄弟が高校生くらいになるまで、父はとにかく部活の試合を見に来ていたこと。
長男は水泳、次男はサッカーからラグビー、僕はサッカー。もちろん試合がかぶった時はどうにもならなかったと思いますし、平日の練習試合などは来られなかった時もあったと思います。
でも僕には、試合の時、父がいた記憶しかありません。

父が来なくて寂しいと思ったことも、「パパ、試合見に来て!」と言った記憶もありません。きっと、母が試合日程を伝えると、何も言わなくても勝手にスケジュールに入っていたのだと思います。大人になった今、これは本当にすごいことだと思います。父は昭和の典型的なサラリーマン。職種は営業だったので平日の帰りは毎日遅く、午前零時を過ぎることがほとんど。週末、たまにつき合いのゴルフや、趣味のヨットにも行っていましたが、その予定が試合とかぶった記憶はありません。今思えば、確実に子どもの試合を優先してくれていたのでしょう。

特に高校生くらいになると試合が地元で行われることはないので、試合会場まで1、2時間かかることもざら。それでも見に来てくれます。しかも、そういう時は母も一緒に。デートだったみたいです。だから、試合後に「じゃあ、今日は二人でメシ食って帰るわ」と言われることも珍しくなかったです。ちょっとだけ「オレのごはんは?」と思ったこともありますが、だいたい家に帰ると、母が作ったものが置いてあったので取り越し苦労に終わりましたが。

もちろんイクメンなんて言葉もなく、男性の家事育児参画なんてほとんどの人が考えたこともないような時代です。そんなに試合を見に来る父親はまずいませんでした。それでも父はあんまり気にしている様子はなかったです。

そして、試合の後。試合の話はほとんどしません。こっちが聞いた時は、それなりに答えてくれましたが、短い感想だけ。「オレはサッカーしたことないから」といってダメ出しをされた記憶もほぼありません。「おまえ、足速いな」とか、「思いっきりぶつかっていくのが気持ちよかった」と褒めてくれる方が多かった、と思います(それしか覚えていない可能性もありますが)。だから父が来ることを拒絶するようなことがなかったんだと思います。

ただ、ひとつだけイヤだったのは、その感想の中でよく「かわいかった」と言われることでした。たぶん末っ子あるあるなんでしょうけど、兄たちに肩を並べたい、兄たちのようにかっこよくなりたい、と思っていたので、かわいいと言われるのは本当に抵抗がありました(ちなみに高校生の時も言われていました)。でも、今はその気持ちも少しわかります。下の娘はなんかかわいいんです。頑張っているんですけど、もう小学校高学年ですけど、長女の時に見ていた感覚とは違うんですよね。きっとそんなもんなんでしょう。

「見守ってくれる安心感」が今も
さて、こうして父が試合を見に来てくれたことで伝えたかったメッセージは何だったのでしょうか?
僕には今でも「父が見ていてくれる」という感覚がずっとあります。一言で表すとそれは「安心感」なのだと思います。余計なことを言わないからこそ、見守ってくれている感覚です。また「誰も自分のことなんか見ていない」と感じると、きっと自暴自棄になってしまったり、自分勝手なことをしてしまったりするような気がします。それをいい意味で見張ってくれていたように感じるところもあります。つまりそれは「ひとりじゃない」と感じられたことなんだと思います。

ただ、決して正解を聞くことはできない今、本当にそれが伝えたいメッセージだったかを知る術はありません。もしかしたら、父が伝えたかったことではなく、僕が勝手に感じたことかもしれませんが、まあ、どっちでもいいかなと思います。

「親」という漢字について、よく「木の上に立って見ている」と説明されますが、僕の父はまさにそれを体現してくれたと思います。その経験があったからこそ、今、僕も娘たちの行事やコンクールなどには極力足を運んでいて、行くことが当たり前になっています。
忙しかったり、疲れていたり、いろいろな事情があると思いますが、ぜひ子どもが頑張っている姿を見に行くことを、たくさんのパパにオススメしたいと思います。

教えてくれたのは

杉山錠士
1976年、千葉県生まれ。
兼業主夫放送作家(株式会社シェおすぎ所属)。子育てポータルサイト「パパしるべ」編集長。ファザーリング・ジャパン会員。
18歳と10歳という年の離れた2人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆。
地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。FJ内プロジェクト「秘密結社 主夫の友」では広報を担当。「主夫の友アワード」「娘のためのパパ家事スクール」「パパ家事サイエンス」「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、パパ向けスクール「スゴパパ工場」工場長。
■著書
*新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~(主婦の友インフォス情報社)
*急に「変われ」と言われても(共著:熊野英一 小学館クリエイティブ)

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