●共働き夫婦を苦しめる固定費のワナ
そうしたなか、共働き家庭でも思わぬ落とし穴により、貧困に陥るリスクも考えられます。何が分かれ道になるのか、ファイナンシャルプランナーで共働き夫婦の家計管理にも詳しい、武藤貴子さんに話を聞きました。
「夫婦で働いていると、世帯年収で700万円くらいに達するという家庭も多いのですが、そうすると固定費にお金を掛けがちになります。それくらいの年収があると住宅ローンも3000万円以上組めるようになりますので、理想の家が見つかったときなどは、少し無理をしてでも問題ないだろうと、返済額を設定してしまうケースが割と多いですね」(武藤さん、以下同)
とくにリスクが高いのはボーナス頼りの返済計画を立ててしまうこと。ボーナスカットやリストラといった緊急事態に対応できず貯金を切り崩すことにもなり、いつの間にかローン返済を中心に家計が回り始めるそうです。
●大雑把な家計管理が共働き夫婦の落とし穴に
もちろん、すべてが計画通りに進めば問題はないはずですが、経済状況や会社の経営状況、個人のライフイベントなどの環境の変化で、想定通りには進まないこともあります。
「妻が出産を期に退職してしまうとか、転職で給料が目減りしてしまうことで思ったより世帯年収が少なくなり、固定費の支払いに窮することも多いケースです。そうなるまで、『夫婦共働きだから、どちらかが働けなくても大丈夫だろう』と大雑把に考え、お財布も別にしていて家計を把握していない。事が起きたときに初めてお互い貯金していないことが分かったなんてことも少なくありません」
武藤さんいわく、そうした夫婦に共通してみられることがあるとか。
「固定費の支出割合が高いことに加えて、どんなことにもお金を掛けすぎていることが多い傾向が見られます。たとえば、車の維持費や教育費、日常的な外食などで、毎月の支出額が自然と大きくなってしまいます。また、見栄を張ってステータスの高いエリアに居を構えてしまうと、生活レベルも急には落とせません。こうしたことの積み重ねによって、すぐに環境の変化に対応しきれず、貧困に陥りやすいのではないかと思います」
“身の丈に合った生活が一番”とはよく言われることですが、それは現状の生活だけを見据えてはいけないのかもしれません。
夫が会社をリストラされたり、自分が働けなくなったりしたときに利用できる制度などをあらかじめ調べておく、また夫婦どちらかの収入だけで生活してみるといったことが貧困を予防するうえでも効果的なのではないでしょうか。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)