子の非認知能力を伸ばす教育は3・8・14歳が重要?

第3回 教育界の注目ワード「非認知能力」はどう養う?
これからの社会で求められるのは、「非認知能力」の高い人材だといわれている。さまざまなことに興味を持てる好奇心、目標を決めて粘り強く努力する意欲、他者と力をあわせる協調性、誠実さ。そういった「非認知能力」を伸ばすために、親は何ができるだろう?

早くからこのスキルの重要性に気づき、3人の息子の子育てにも実践してきたアグネス・チャンさんに話を聞いた。

●3、8、14歳は脳の発達段階が変わる非認知能力向上の重要転機

「子育てのゴールをどこに設定するかというのは人によって違うと思いますが、私は子育てにおいては、脳の発達段階が変わる3、8、14歳が大きな節目だと思っています」(アグネスさん 以下同)

体と脳が急速に発育する3歳までは、愛情をたっぷり注いで世界への信頼と自己肯定感を育む。と同時に、さまざまな体験をさせて脳に情報をどんどん送り込む。これらはいずれも学力の土台となる非認知能力の向上にもつながってくる。

「脳のシナプスは8歳までに最も多く作られ、それ以降は使わないシナプスは消滅していきます。この頃から得意・不得意がはっきりしてくる。だから8歳までにさまざまな体験をさせ、シナプスを複雑にしていくことが大事。そうすると8歳以降の選択肢の幅が格段に広がります」

発見や学びの楽しさや新たな知識を吸収する力、そして集中力、理解力。これらの脳の回路を8歳までに作っておくと、思春期以降の学びが親の側からしても格段に楽になるのだそう。

笑顔の女の子

「8歳を過ぎると好き嫌い、得意・不得意がはっきりしてきます。そうしたら得意なことにとくに力を入れて、ぐんぐん伸ばしてあげて。それが自信につながり、うまくいけば不得意ジャンルの底上げにもなります」

だがその先、14歳ともなれば、子どもは自分をコントロールする術を学ばなければならない。ここからはむしろ親は、一歩離れて応援する立場に回ろう。そうでなければいつまでたっても、「勉強は親から催促されてするもの」という意識が抜けないまま子どもは成長してしまうからだ。

「成長とともに、親は子を世の中に放り出していくこともしなければなりません。そうやって世間と対峙させることで、自分から質問する力、傷ついてもめげない力、他者を思いやる力を身につけさせるのも親としてやるべきこと」

●非認知能力を伸ばしたい親が子に絶対言ってはいけないNGワード

「うちの子はもう3歳、8歳の大事な時期を過ぎてしまった!」と心配しているママもご安心を。勉強が苦手でコンプレックスが強かったアグネスさんが、自己肯定感を得て学びの楽しさを知ったのは中学生になってからだったそう。

「『お前ができないのは親似だから』というような発言は絶対に子どもに言わないで。親からそう言われると、『そうか、僕は頭悪いんだ』と言い訳ができて、本当にできなくなる。でも『大丈夫、できるよ』と根気よく支えて言い続ければ、子どもは本当にできるようになるんです」

ありったけの愛情を伝えて自己肯定感を持たせること。「君ならできる」とそばで見て支えること。得意なことを見つけてあげること。どれも親がちょっと考え方を変えれば実践できることばかり。非認知能力とは、すなわち学力より大切な“生きる力”なのかもしれない。
(阿部花恵+ノオト)

お話をお聞きした人

アグネス・チャン
アグネス・チャン
1955年香港生まれ。72年、「ひなげしの花」で日本歌手デビュー。94年、スタンフォード大学教育学博士号を取得。歌手、エッセイスト、教育学博士として幅広く活躍中。
1955年香港生まれ。72年、「ひなげしの花」で日本歌手デビュー。94年、スタンフォード大学教育学博士号を取得。歌手、エッセイスト、教育学博士として幅広く活躍中。