『ワイドナショー』武田鉄矢を「老害」から「いじってもいい人」に味変させた野沢直子のスゴ技

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。


野沢直子にしてやられた武田鉄矢(C)サイゾーウーマン

<今回の有名人>

「重要だって、あたしは」野沢直子

『ワイドナショー』(11月13日、フジテレビ系)

 テレビを見て、こんなに笑ったのは久しぶりだ。11月13日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)にリモート出演した芸人・野沢直子。彼女が米サンフランシスコ在住ということもあり、アメリカの中間選挙についてコメントしていた。

 同番組コメンテーターのダウンタウン・松本人志は「いらんいらん、野沢、いらんて」と、野沢が出演する必要はないと言っていたが、野沢は「いるって。いるって。あたし、いるって」「重要だって、あたしは」と、最近のテレビではとんと見なくなった、いい意味での“あつかましさ”を見せてくれる。

 松本がそれほど親しくないゲストに「いらん」と言ってしまったら、このご時世、「松本がパワハラしている」と批判されかねないが、野沢とは『夢で逢えたら』(同、1988~91年)で共演した仲のため、松本も軽口を叩けたのだろう。

 しかし、この日の野沢は「重要だって、あたしは」という発言通り、ものすごい“ワザ”を見せてくれた。

 同番組ゲストの西川貴教は、アメリカの中間選挙に関して、同国の若者は「政治参加の意識がすごい高い」「18歳~29歳までの方の『選挙行きますか?』という(質問の)答えに、40%の方が『選挙行きます』っておっしゃっていて……」と指摘。それに対し、日本の若者は「SNSとかで、ああだこうだって政治のこと批判する割に、誰も全然(選挙に)行かない」「『何でなの?』って(聞いたら)、『わからないから』とか。そんな無責任な形で、結局、白票を投じたりとか、意味のないことに結局、時間を使ってしまっている」と、苦言を呈していた。

 しかし、西川が話し終えていないのに、同じくゲストの俳優・武田鉄矢が突然「すいません、海の向こう、ひとつ聞いていいですか?」と割り込んできた。

 西川が話している最中なので驚いたが、人の話をさえぎってまでする質問なので、おそらく西川の発言に関係することを野沢に聞きたいのだろう……そう思っていたら、武田は「やっぱり、物価っていうのは高いの?」と、まったく無関係な質問をしたのだ。

 この事態に、ほかの出演者が固まる中、野沢がどう切り返したかというと、「高いんですよ」と即答した後、「この間、ほら、出た時に武田鉄矢さんと一緒だったじゃないですか」と、武田に確認。確かに2人は、10月9日放送の同番組でも共演しており、武田が「はいはい」と答えると、野沢は「この(物価高の)話、すごいしましたよね」と、ほんの1カ月前にも、同じような話をしたことをさらっと指摘したのである。

 司会の東野幸治は「それ、言わんでええのよ」とツッコみ、武田本人も「そうだよな。そんなこと言わなくていいよな」と乗っかってみせたが、面目を潰されたと思ったのか、再度野沢に「最近、ラーメン食べた?」と、これまでの話に関係のないことを質問。すると野沢は「ラーメン食べましたよ」と答え、「だから、ラーメン(の話)も前に言ったじゃないですか」と指摘したのだった。

 見ている側はヒヤヒヤしたものの、武田に発言権を奪われた西川が「全然覚えてないんですね」と笑ってツッコみ、私にはその場が丸く収まったように感じた。

 自分より若い芸能人が話しているのに、それをさえぎって会話に入ってくる武田を、「老害」と見る人もいるだろう。しかし、野沢が「この話、すごいしましたよね」とはっきり言ったことで、武田は「老害」から「いじってもいい人」「しょうもない人」へと見事に“味変”を遂げたように感じる。

 発言をさえぎられた西川は気の毒ではあるものの、スタジオ全体に笑いが起きたので、これはこれでアリではないだろうか。野沢も自身の面白さをアピールできたし、出演者の誰も損をしていない。

 ひと昔前のテレビでは、武田のような大御所に若い女性タレントがツッコみ、大御所がやに下がって喜ぶ……という場面がよく見られた。しかし、今のテレビでそれをやると、「セクハラ的」と見る人もいるだろう。何より、今の武田はキャリアの浅い若い女性タレントでは制御できないように思われる。そこにきて、キャリアのある野沢の立ち居振る舞いは、視聴者を嫌な気持ちにさせないし、見事と言わざるを得ない。

 そういえば武田は、同番組にゲスト出演していた、アメリカ大統領選挙に詳しい明治大学の海野素央教授に対し、「映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくる悪役のビフはトランプをモデルにしたというのは、本当か?」といった質問もしていた。

 海野教授の専門ではないことは明らかなだけに、西川は「どこに行こうとしているんですか?」とツッコんでいたが、どうしても皮肉めいて聞こえ、また困った顔をしていたため、笑えなかった。やはり、武田を必要以上に追い込まず、かつ明るい笑いに変える腕を持つ人は野沢くらいに思えてならない。

 コロナ禍の影響で、リモート出演が当たり前になったことにより、これまで1年に1~2回、日本に“出稼ぎ”に来る時しか見ることができなかった野沢を頻繁に見られるようになったのは、いち視聴者としてラッキーとしか言いようがない。

 テレビの世界には、ちょっと扱いに困る大御所がたくさんいる。洒脱なトークで、ほどよく彼らをイジる野沢が見たいと思うのは、私だけではないはずだ。

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サイゾーウーマン
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料理や収納など暮らしに関する情報や、芸能、海外ゴシップの最新ニュースを連日発信中。ほかにも、皇室や女子刑務所のウラ話、万引きGメンの現場レポなど、個性豊かなコラムも展開。ほかとは異なる切り口で、女性の好奇心を刺激する記事をお届けします。
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