●予防のためにアレルゲンを排除するのは間違い?
「子どもをアレルギーにしないためには“妊娠中、授乳中の母はアレルギー食品を避ける”“乳製品や卵を与え始める時期にも気を使ってきた”というお母さんは多いと思いますが、全部逆です。アレルギー食品を避けることが、かえって発症リスクを高めていた可能性を提示した『NHKスペシャル』を見て、私も本当にビックリしました。うちの息子は2人とも卵アレルギーだったので、常に気をつけていたんです…」(坪田氏 以下同)
「アレルギー食品を避けずに食べる」とは、いったいどういうことなのだろうか?
「欧米では、アレルギー患者が多いピーナッツ。世界的権威があるアレルギー学会で発表された研究によると、アレルギーになりやすい赤ちゃんを、一定量のピーナッツを食べさせる子と徹底的に避けさせる子の2グループに分け、5歳になった時点での発症率を調べたところ、ピーナッツを食べたグループの方がアレルギーにならなかった。つまり、早い段階で食べさせた方がアレルギーを予防出来ることが判明したのです」
それでは、なぜ食べる方がいいのだろうか? これは免疫の誤った攻撃を止める「Tレグ」という細胞の一種が、食べることによって作られているからだと考えられている。アレルギー反応という攻撃を抑えるのが、このTレグ。あえて食べて腸に入れることで、アレルギーの攻撃を止めるTレグを増やすことができるという。
「妊娠中、授乳中のお母さんは、自分にアレルギーがない限り、“出来るだけたくさんの種類の食品をバランス良く食べた方が良い”というのが最近の研究者たちの見解です。ただし、子どもに新しい食品を初めて与える際には、すでに発症している恐れがあるので、耳かきひとさじ程度から試すなど慎重さが必要です。すでに食物アレルギーを発症してしまった子も、医師の立ち会いのもとでアレルゲンを食べられる限界量を調べて、少しずつ食べ進めていくと、かなりの割合でアレルギー症状が消えると言われています」
離乳食は、生後6カ月からというのが世界的にも一般的だが、今年発表されたイギリスの研究では、アレルギーになりやすい食品を、生後3カ月から食べ始めた子どもの方が、アレルギーの発症率が低く抑えられたという結果も発表されている。日本でも、赤ちゃんに卵や牛乳を早い時期から与える育児が推奨されるようになるかもしれない。
(取材・文/谷亜ヒロコ)