だが、ちょっと思い返してみてほしい。「いいかげんにしなさい!」と怒鳴った結果、事態が収束したことはあっただろうか? 子どもが「はい、ごめんなさい」とすぐさま反省して素直に謝ったことは? …おそらく、ほとんどのママとパパが首を左右に振るはずだ。
それもそのはず、実は「いいかげんにしなさい!」という叱責は、残念ながらほとんど効き目がないのだという。“子育て練習講座の講師”として活動し、二児のパパでもある伊藤徳馬さんに、その理由を聞いた。
「子どもが3歳くらいになると、会話が成立するようになりますよね。そうすると親は叱るときに『いいかげんにしなさい』『もっとちゃんとして』『何回言えばわかるの』などの言葉を使ってしまいがち。ですがこれらの言葉、実は意味があまり伝わっていないのです」(伊藤さん 以下同)
表面上では会話がちゃんと成立しているのに、子どもにはその“意味”が伝わってない? 一体どういうことだろう。
「子ども、とくに幼児の場合は『いいかげんに』『ちゃんと』といったあいまいな否定の言葉で叱りつけても、どういう理由でだめなのか、なぜその行為がいけないのかといった大人の事情や意図を汲むことまではなかなかできないのです」
あいまいな否定の言葉では、子どもの心には響かない。では子どもを叱るときは、どんなふうに声をかければいいのだろう?
●叱るポイントは「シンプル」「具体的に」の2つ!
「子どもに伝わるのは、シンプルで具体的な言葉。あいまいな言葉で叱りつけるのではなく、具体的に何をすればいいのか、行動について簡潔に伝えましょう」
例えば、スーパーではしゃぐ子どもに対して「走っちゃだめ! お店の中ではちゃんとして!」と叱りつけているママ。よく見かける光景だが、これも“伝わらない叱り方”の典型例だという。
「同じ内容を伝えるにしても、『○○しちゃダメ』ではなく『××しようね』と肯定的に言い換えるのがポイントです。この場合は、『お店の中はママとカートを押して歩こうね』『手をつないで歩こうね』などといった、シンプルで具体的なひと言に言い換えてみてください」
もちろん、これですべての子どもが素直に従ってくれるわけではない。だが、いきなり「~しちゃだめ!」とどなられるよりも、穏やかなトーンで「~しようね」と言われたほうが言葉の意味が心にスッと届くのは、大人も子どもも同じはずだ。
「うちの子は言うことを聞かなくて…」と日々悩んでいるママは、もしかすると「伝えかた」が間違っているだけかもしれない。「いいかげんにしなさい!」と大声を張り上げる前に、子どもの耳に届く表現を工夫してみよう。
(阿部花恵+ノオト)