「地震発生時に火は消さない」って本当?防災の新常識

火を消す前に優先すべきこと

火を消す前に優先すべきことは身の安全を確保することです。キッチンにいる場合はコンロや戸棚、冷蔵庫などから離れましょう。大型家具や家電などからも離れ、揺れが収まってから避難できるように扉を開けて出口を塞がれないようにします。

寝室・リビング・トイレ・お風呂にいる場合も、火の元を確認する前に揺れが収まるのを安全に待ちましょう。特に夜間の地震は割れた窓ガラスや照明器具の破片で怪我をしやすいため、揺れている間に歩きまわるのは非常に危険です。

ただし、地震発生時に火を消さない対応が必ずしも正しいとは限りません。地震の揺れが小さく家具の転倒や調理器具の飛散リスクが小さい場合、地震が発生した瞬間に火のそばにいる場合は、火を消してから安全確保をするほうが火災のリスクを減らせます。

揺れが収まったあとの対応について

地震発生時は身の安全を第一に行動し、揺れが収まったあとはあわてずに火を消します。出火している場合は初期消火を行います。初期消火は消火器を使うのが効果的なので、あらかじめ家庭用消火器を用意しておきましょう。落ち着いて消火を行ってください。

大規模災害が発生すると、消防局には膨大な数の119番通報が入ります。火災は緊急性の高い災害なので119番通報し、通じないときは身の安全の確保を優先しながら火災の状況を自治体などに報告しましょう。

また、関東大震災当時にはなかった火災の発生リスクとして通電火災があります。通電火災とは、電気ストーブや照明器具などを使っている最中に地震が発生して停電が発生し、停電の復旧直後にストーブや照明器具と可燃物が触れることによって発生する火災です。

ほかにも、地震によって被覆や電気機器本体が損傷した状態で通電すると火花が飛んで火災につながることや、雨漏りなどによって濡れた配線が通電するとショートを誘発して火災につながるケースもあります。

通電火災を防ぐためにも、揺れが収まって避難をする際にはブレーカーを落としましょう。電気が復旧したあとは、燃えやすいものが近くにないかを確認してからブレーカーを戻します。

阪神淡路大震災や東日本大震災時に発生した火災原因の約60%は電気関係です。ガスや調理器具が原因の火災を大きく上回っており、昔と今では地震発生時の火災原因も変わっています。

万が一、地震によって発生した火災に巻き込まれて危険が迫っている場合は、一時集合場所や避難場所に避難しましょう。火災に直接巻き込まれていなくても、火災発生時にはさまざまな有毒ガスが発生することがあるので、消火が困難な場合は火災現場から離れる必要があります。

地震はいつどこで発生するか分かりません。地震発生時の火の扱いやその後の対応について、今一度家族で話し合っておきましょう。

〈執筆者プロフィル〉

田頭 孝志

防災アドバイザー/気象予報士

田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

<関連する記事はこちら>

南海トラフ地震の発生確率「40年以内」なら90%!備えは大丈夫?

関連記事:

配信元