【MY FAVORITE】台湾の著名人に聞いた いま気になるスポットへ。 (前編)

気軽に旅に出られる日を、どれだけ待ちわびたことだろう。海外への渡航が緩和されたらすぐに出かけたかった、あの場所。ずっと会いたかった台湾へ。台湾のいまの魅力を知るには“生の声”を聞くのが一番。現地のカルチャーに精通した編集者やクリエイター、インフルエンサーにおすすめのスポットをリサーチしたら、またひとつ、台湾の新しい魅力が見えてきた。

ノスタルジックな気分を誘う町の豆花店がお気に入り。

最先端の台湾カルチャーを発信する雑誌『FOUNTAIN 新活水』の編集長を務める黄麗群さん。数々の文学賞を受賞するなど、作家としての活動も高く評価されている彼女が、多忙の合間をぬって「週2回通っている」のが〈雹仔豆花(ハオサイトウファ)〉。木桶で蒸す伝統的な製法で作る豆花が人気で、黄さんもその昔懐かしいヘルシーな味のファンなのだという。台湾に豆花専門店は数あるが、ここに通う理由は?
「私の母が料理家で、子どもの頃から体にいいものをおいしく食べるという習慣がありました。ここの豆花は食用石膏を使わずに作っているので大豆のナチュラルな味を楽しめるんです。小さいときに大好きだった豆花の優しい味に似ていて、食べると心がほっとなごみます」

カウンターの飾りタイルや石材も昔は台湾の住宅でよく用いられたもの。食も文化も、古き良きものが自然なかたちで受け継がれてきた“台湾らしさ”を求めて店に通う若い世代も多いという。
「情報はできるだけ自分の足で探すようにしています。さまざまなトレンドに触れ刺激を受けるなかで、昔から変わらない台湾らしさに癒されるのだと思います」


店は台湾経済の中枢といわれる中正エリアに。シンプルな豆花のほかにタロイモ団子入りや小豆入りなども。
1番人気は黒糖の香ばしさ、つるんとした手づくり豆花の喉越しを楽しめる傳統豆花(50元)。

〈雹仔豆花〉
住所:台北市中正區臨沂街27巷9之4號 忠孝東路134巷 │ 中正
営業時間:11:00~21:00
定休日:無休
席数:7席
TEL:0900-771-131

黄 麗群 『FOUNTAIN 新活水』編集長

コウ・レイグン/1979年台北生まれ。台湾で世代を問わずに支持を集めるカルチャー誌の編集長であり、エッセイや小説も多数執筆。時報文学賞、林栄三文学賞などの受賞歴も。

リアルな生活がある場所に創作のヒントを求めて。

広告ディレクターに映画監督、小説家など、いくつもの肩書を持つ盧建彰さん。20歳まで台南に暮らし、台北での生活のほうが長くなったいまでもたまらなく故郷が恋しくなることがあるという。そんなときに彼が人間観察がてら訪れるのが〈旭三代圓環肉焿(チューサンダイユエンワンルウゴウ)〉だ。

店先でぐつぐつと音を立てる寸胴からは食欲をそそる香りが漂い、次々に入る注文にスタッフが手際よく応対。運ばれてきた魯肉飯を頬張りながら、盧さんは「懐かしい台南の味だ」と目を細める。

夜市から始まり、3代続く魯肉飯の専門店。店構えは大衆向けのファストフードそのものだが「高級車を乗りつけてやってくるVIPも多いのが、この店の面白いところ。ここには台湾の日常とリアルな生活がある。つねに観察する目と心を持っていたい僕にとって、この味はなくてはならないソウルフードなんです」。


夜市の屋台からスタートした店の名物は、甘みをおさえた魯肉飯。店先でマークシートを渡して注文するシステム。蝦巻(50元)や排骨(50元)などの一品料理を一緒にオーダーするのもおすすめ。
テイクアウトも可能。

旭三代圓環肉焿
住所:台北市大安區復興南路一段293號 │ 大安
営業時間:11:00~19:30
定休日:無休
席数:12席
TEL:02-2700-0590

盧 建彰 クリエイター

ルー・カート/1976年台南生まれ。広告ディレクターや小説家、映画監督など、台湾を代表するクリエイターとして活躍。近著の『自由、平等、博愛、ando you?』が発売中。

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