●やがては孫の就活にまで口を出すようになるかも…
「夫は高学歴で、結婚した当初は、大手商社に勤めていましたが、ストレスで突然会社を辞め、現在は中小企業に転職。もちろん給料は減りましたが、イキイキと働いているので、私も幸せです。義父はもう引退しましたが、かつては銀行マンでやはり高学歴。義母にとって夫は、大事な大事な自慢の1人息子であり、 夫の職業が変わったことについては納得がいかない様子でした。そんななか、私たちに長男が生まれた途端、夫にそっくりな孫が生きがいになってしまったようで、私たち夫婦の子育てにも、何かと口を出すようになりました」(Yさん 以下同)
千代田区在住のYさんは専業主婦。自分の実家は遠く離れた九州にあるため、子どもが生まれてからは、何かと面倒を見てくれる夫の実家を度々訪れるようになった。
「私が頼りすぎたのもいけなかったかもしれません。義母は、“お勉強は、何でも早い方がいいのよ。お稽古代は私が出すから…”と口癖のように言い、七田式の右脳教育のお教室に息子を入会させようとしたり、英語の早期教育を始めようとしたり、とにかく孫に英才教育をさせようと必死でした。英語のお教室は親子で参加できて楽しそうだったので、暇つぶしに通うことにしましたが、右脳教室はやんわりとお断りしました」
姑の助言はまだまだ続く。エスカレーター式の幼稚園に入れるため、お受験塾を提案。月10万近くの月謝も、すべて夫の両親が支払ってくれたという。
「ママ友からは“払ってくれるなら、ありがたく通っていればいいんじゃない?”と言われましたが、私は息子を地元の公立に通わせたかったし、男の子なのでいろんな体験をさせて、根性のある子に育てたいという思いがありました。でも、義母の熱意に負けて、結局お受験させてしまったんですね。息子は、見事に義母が望んだ第一志望の学校に合格しましたが、入学してからも、義母の口出しは止まるどころか、ますますエスカレートしていきました」
当然ながら、お盆や年末年始の長期休みも義理の両親と旅行へ。ハワイやグアムなどの旅費はすべて負担してくれるものの、旅先でも、「サイエンス教室に入れたらどう? 夏の間だけ留学させて、英語を話せるようにした方がいい」などと助言され、さすがのYさんも、そんな姑の過干渉にイライラするようになった。
「実はいまだに、息子の学費は夫の両親が出してくれています。私立はお金が高いし、夫の稼ぎでは到底無理。夫は早くからそんな義母に愛想を尽かし、“転職した俺への当てつけかもしれない…”と言っています。息子は素直な性格でおばあちゃん子なので、義母も操縦しやすいのでしょう。でも、今年中学に上がり、そろそろ難しい年頃。いい加減、義母の過干渉をやめてほしいという思いもあります」
何ともありがた迷惑な話だが、ひとつだけ、Yさんがお姑さんに感謝していることがある。
「実はうちの息子、英語が飛びぬけて出来るんです。こればかりは、義母の早期教育のおかげかな?と。小学生の頃も、夏休みは、2週間で15万円ほどするアメリカンスクールに通わせてもらいましたし、中1で英検3級に合格できたのは、まぎれもなく義母の努力の賜物。お稽古ごとの送り迎えも協力してくれたので…。早期教育して良かったなと感謝する気持ちはもちろんありますが、このまま就活にまで口を出すんじゃないかと思うと、ちょっとゾッとしますね。でもまぁ、その頃までには息子が成長して、自分で反抗するようになるかな?」
姑が孫の教育にまで口を挟むようになったら、ママはどう対処するべきなのか? カウンセラーの那賀まき氏に聞いた。
「子育てを一通り経験し、夫の母でもある姑は、息子夫婦を子どものように扱い、良かれと思って孫の教育に口を出します。“自分はいいことをしている”と思っているので、姑は、自分のやり方を強く勧めます。逆に嫁は子育て経験が短いので、自分の子育てに自信を持てず、姑のパワーに振り回されてしまいがちです。まるで、自分が子どもだった頃、親の都合に振り回されたように…。そうならないために大切なのは“心の対等性”です。大人同士として正々堂々とYes、Noを伝え、自分たちを子どものように扱おうとする姑と心理的に対等であるために必要なのは、お嫁さんの“自信”。この自信は、毎日の生活を営むなかで、“自分の価値”を確認していくことで培われていきます。お姑さんと対等でいるために…まずはこの自信を養うことから始めて下さい」
自分の育児に自信が持てないがために、姑に踏み込まれる結果に至ってしまったYさん。子育てと同じで、姑との仲も最初が肝心! 育児や家事に自信を持ち、YES、NOをハッキリと伝えられる対等性を、最初のうちから築き上げることが大切なのだ。
(取材・文/吉富慶子)