●もしも「お金を貸して!」と言われたら…?
そもそも夫の兄弟との付き合いで、妻はあらかじめ、どこで線引きすればいいのか?
「特に法的な決まりはありませんので、どこで線引きするのか…夫婦で話し合うということが大切です。その価値観は、それぞれの家庭環境に起因しますが、どちらかの基準を優先させるのではなく、夫の考え方、妻の考え方をそれぞれが話し、2人のルールを作っていく必要があります。この時、自分の基準に照らし合わせて“正しい、間違っている”という言葉で相手に意見を伝えると、思わぬケンカに発展してしまうので注意が必要です」(大門氏 以下同)
具体的な事例に対し、大門氏にアドバイスしてもらった。
ケース1:もしも夫の兄妹にお金を貸してと言われたら、どう断るべきなのか? また、貸してしまった場合、催促のしかたは?
「まずは夫婦で話し合い、貸すか貸さないかの判断をすることが大切です。断るのであれば、あれこれ理由を言う必要はありません。理由を言えば、その理由は間違っている、その理由は一般的ではないと責められる場合もあります。何を言われても、“お金は貸せない”とだけ伝えるのがベストです。貸す場合は、返済方法やその返済方法が守られなかったときのことまできちんと決めておくことをお勧めします。催促する場合は、決して相手を責めないこと。“返すという約束だったのだから、ちゃんと返してください”と言うのは、“間違っているのはあなたですよ”と相手を責める言葉になってしまいます。“○月○日までにお金が必要なので、その日までに返済してくださいね”と、お願いスタイルで返済を迫りましょう。相手は反発しづらくなります。人は罪悪感を刺激されると攻撃的になります。借りるだけでも罪悪感があるので、督促されたらさらに攻撃的な態度になる可能性も。本来、貸し借りはしない方が無難です」
ケース2:独身で寂しいのか、決まって毎週末わが家にやってきては、夕飯を食べていく夫の姉。どうやって断るべき?
「“毎週来られるのは、迷惑です”と直接話すのは、“お姉さんは迷惑をかける悪い人”と言っていることに値します。人は当然ながら“悪い人”と言われれば気分を害しますし、“私を悪い人扱いするあなたこそ悪い人”となって、もめごとになりがち。こちらも断る時は“お願いスタイル”です。ですがこのケースの場合は、奥さんからではなく、できれば旦那さんにお願いしてもらうといいですね。例えば、“家族でゆっくり食事する時間が欲しいから、週末は家族水入らずにさせてほしい”とお願いしてみましょう」
ケース3:アパートを経営しています。そのうちの1部屋を、独身の夫の弟が間借りすることになりました。経営も大変なので家賃を取りたいのですが、どう切り出すのがベスト?
「人は言いづらいことを言うとき、あれこれ余計なことを話してしまうものです。“私は悪くない。そのことは理解してください”ということを心のなかで思いつつ伝えようとするので、話が回りくどくややこしくなります。でも、“私は悪くない”ということを理解してもらおうということは、“あなたは、私を悪い人だと思いますよね? 兄弟なのに家賃をとるなんて、ひどい奴だとあなたは思いますよね?”と、あなた自身が、端から相手を良い人として扱っていないとも言い換えることができます。こう出られると、人はその期待通り、悪い態度をとってしまう傾向にあります。伝えにくいことほど単刀直入に伝えることが望ましく、一番理解してもらいやすい、つまりは相手を良い人として扱うことになるのです。経営が大変であること、家賃を支払ってもらいたいことを打ち明け、“お願いしますね”と相手に伝えればいいだけの話なのです」
言いづらいことこそ、くどくど言わず、単刀直入に…。基本は“お願いスタイル”で! この2つをしっかりとわきまえておけば、わずらわしい義兄弟との付き合いも、少しはスッキリするのかも!
(取材・文/吉富慶子)