「麻薬キンパ」はどんな味?コマキンパの「コマ」って?本場の「キンパ」は奥深い!

「麻薬キンパ」はどんな味?コマキンパの「コマ」って?本場の「キンパ」は奥深い!

すっかり日本でもおなじみになった韓国風海苔巻き「キンパ」ですが、その歴史や韓国現地でのバリエーションはよく知らないという方も多いのでは?韓国料理研究家の本田朋美さんに、知るほどに奥深い韓国キンパ事情と「麻薬キンパ」風に楽しむ「コマキンパ」のレシピを教えていただきます!

こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。

新緑がまぶしい季節になりましたね!ぽかぽか陽気に誘われて、アウトドアで食事をする機会が増えていると思います。

そんなときに用意したい韓国料理といえば「キンパ(韓国風海苔巻き)」ですよね。

今回はキンパについて、ちょっと深いお話をします!

韓国で愛されているキンパのいろいろ

「キンパ」は日本の「海苔巻き」から派生したもの

ここ数年、日本ではキンパの専門店が続々とオープンし、スーパーやコンビニでもキンパが販売されるようになりましたね。「キンパ」という呼び名が定着しつつありますが、韓国語の発音に近い表記では「キム(海苔)パプ(ご飯)」です。実にシンプルな名前ですよね!

キンパは、今では代表的な韓国料理の一つですが、実は日本の海苔巻きから派生したものです。

統治時代にソウルで暮らしていた日本人から韓国人の間に日本の「海苔巻き」が伝わったというのが経緯ですが、このときは「キムサムパプ(海苔巻き寿司、海苔包みご飯)」と呼ばれ、酢飯をベースにかんぴょうやでんぶを巻いた独特なものでした。

後に現地化され、ご飯の味付けがごま油と塩に代わり、具材は韓国の常備菜中心にアレンジされました。キンパによく使われるたくあんも、日本から伝わったものなんですよ。

遠足にも欠かせないキンパ

ひと昔前の韓国では「ご飯は必ずホカホカの温かいものを食べる」という食文化だったので、ランチはお弁当よりも外食が発達しました。このような背景があるにも関わらず、冷めてもおいしいキンパは韓国人にとって特別です。

子どもたちが遠足に持っていくお弁当はほぼ全員がキンパだと、韓国の知人から聞いて驚いたことがあります。子どもたちはそれぞれの親が作ってくれたキンパを交換して、味の品評もするそうですよ。

また、近年では日本と同様に韓国も共働きの家庭が多いので、お弁当を作る時間的余裕のない親たちは専門店でキンパを購入して持たせることもあるようです。

旅のお供はアルミホイルで包んだキンパ

私も現地で何度かキンパを購入したことがあります。

特に朝早くから韓国の地方に行くときは、ソウルのバスターミナル近くにあるお店で購入して、バスの中に持ち込み朝食にします。昔ながらの専門店では注文を受けてから作ってくれるのですが、専門店にいる「キンパの達人」は巻きすを使わずに絶妙な力加減で巻いて、アルミホイルに包んで渡してくれます。

このできたてキンパが、匠の技とアルミホイル包みの相乗効果でご飯の食感がふわっとしていてホカホカ!そんなおいしいキンパを食べながら韓国の地方に向かうのは旅の醍醐味のひとつでもあります。

キンパをトッポッキのソースにつけて…

韓国にはプンシクジョム(粉食店)といって、粉物の専門店が至る所にあります。韓国の粉物といえば、チヂミやマンドゥ(餃子)を思い出しますが、トッポッキやキンパ、串に刺した練り物もプンシクジョムのメニューに含まれます。

ここでユニークな食べ方をひとつご紹介します。

トッポッキとキンパを一緒に頼んだら、最初はそれぞれをそのまま召し上がってください。そして、途中からはキンパにトッポッキのソースをからめて食べてみてください。予想外のおいしさに目が丸くなりますよ!機会があったらぜひお試しください。以前この連載で「10分で作れるトッポッキのレシピ」をご紹介しているので、そちらも参考にしてみてくださいね!

キンパのバリエーション

ここからは、韓国で浸透しているキンパのバリエーションを新旧交えてご紹介します。

折りたたみキンパ

みなさまの記憶に新しいと思いますが、2021年に「折りたたみキンパ(または、四角キンパ)」が韓国で爆発的に流行し、日本でも話題になりました。

キンパは巻いて作るものという概念を覆し、味付けしたご飯と具を海苔の上にのせて、パタンパタンとたたむだけの手軽さと断面の鮮やかさでSNSを席巻しました。

チュンムキンパ(忠武海苔巻き)

チュンム(忠武)は、朝鮮半島の南側に位置する漁師町の昔の地名で、ここの漁師さんが船上で食べたのが「チュンムキンパ」。ご飯を海苔で巻いただけの細巻きに、大根キムチやいかなどの甘辛い和え物、炒め物を添えて一緒に食べるというものです。船上でさっと食事を済ませられる点が良いということで、いわば「漁師飯」として浸透しました。

私も作ったことがありますが、キムチや甘辛い和え物と具のないキンパの相性が良く美味でした。ご自宅で楽しんでみたい方は、ご飯だけを巻いたキンパにキムチやチャンジャを添えると良さそうです。

サムガッキンパ(三角海苔巻き)

小腹が空いたとき、コンビニエンスストアのおにぎりは手軽に買える上に、程よくお腹を満たしてくれるので便利ですよね!韓国のコンビニエンスストアにもチュモッパ(おにぎり)がありますが、三角に握ったおにぎりのことはチュモッパではなく「サムガッキンパ(三角海苔巻き)」と言います。

ご飯のベースはキンパと同じでごま油と塩。具は日本でもおなじみのツナマヨネーズ、プルコギ、豚肉の甘辛炒めと韓国らしいものが定番です。ビビンバ風をうたっているサムガッキンパもありますよ。

マヤクキンパ(麻薬海苔巻き)

「マヤク(麻薬)」という言葉を聞くと、大ブームになった「麻薬卵」を思い出す方が多いかと思いますが、韓国で「マヤク」は「やみつきになる」「くせになる」を言い表した言葉で、卵だけでなく「マヤクキンパ」もあります。

この「マヤクキンパ」が食べられる有名な場所がソウルにあるのをご存じですか?市民の台所であり、観光客で大いににぎわう「カンジャンシジャン(広蔵市場)」です。

市場内にある有名なキンパの特徴は、まずサイズが通常よりも小さく、具はにんじんのナムルとたくあんのみというシンプルさで、食べるときに辛子醤油をつけるということです。ピリッとくる辛味がくせになるので「マヤクキンパ」と呼ばれているんです。

私が昨年2年9か月ぶりに渡韓したときも、カンジャンシジャンを訪れてこの「マヤクキンパ」を味わい、「これこれ!」と懐かしい味に思わずじーんときました。

また、このマヤクキンパのように小さなサイズのキンパのことを「コマキンパ」と言います。コマキンパの「コマ」は「小型、ちびっこ」という意味です。

近年のキンパ専門店では、このコマキンパを中心に扱うところが増え、パン屋のように好きなものをトングで取ってトレーにのせ、会計する方式も取り入れられています。コマキンパの具材の組み合わせも増えているので、あれも食べたいこれも食べたいと迷ってしまいます。キンパの世界はこれからもさらに広がりそうですね!

さて今回は、本場韓国の家庭の味を再現した「コマキンパ」のレシピをご紹介します。

通常のキンパにつけだれはありませんが、今回は「マヤクキンパ」風に辛子醤油のソースを添えてみました。まさにやみつきになるおいしさですので、ぜひお試しください。

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