無期懲役から仮釈放されるのは何年後?その後の人生はどうなる?

無期懲役から仮釈放されるのは何年後?その後の人生はどうなる?

無期懲役には仮釈放という制度があります。

無期懲役の「無期」とは無期限の意味で、つまり生涯にわたって刑務所に収監される刑、それが無期懲役です。日本では死刑の次に重い刑罰とされています。

しかし、受刑者は必ずしも死亡するまで刑務所に収監されるとは限らず、仮釈放が認められると社会に復帰して通常の生活を送ることも可能です。

しかし、無期懲役からの仮釈放はそう簡単に認められるわけでもありません。

ご家族や身近な方が無期懲役になった、あるいは無期懲役になるかもしれない、という方にとって、いったい何年経てば仮釈放が認められるのかはとても気になるところでしょう。

そこで今回は、

仮釈放とは
無期懲役で仮釈放が許される条件
無期懲役受刑者の仮釈放の実態

などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

「大切な方が無期懲役になったら、もう一緒に暮らせる日は来ないのか」とお悩みの方に、この記事がお役に立てば幸いです。

1、無期懲役には仮釈放がある!

無期懲役には仮釈放という制度があるので、受刑者はやがて社会に復帰する可能性があります。まずは、無期懲役や仮釈放について、基本的なことをご説明します。

(1)無期懲役とは

無期懲役とは、被告人(受刑者)を無期限で刑務所などの刑事施設に拘置し、「所定の作業」をさせる刑罰のことです。

なお、無期限で刑務所などに拘置され「所定の作業」が課せられないものを無期禁錮といい、現行法上、有期の場合も同様に区別されていますが、令和4年の改正により、「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止され、「拘禁刑」という名称に変更されて刑務作業の義務がなくなります。詳しくは、こちらをご覧ください。

それに対して、「懲役○年」というように刑期を定めて言い渡される懲役刑のことを有期懲役といいます。

有期懲役の場合、定められた刑期が満了すると釈放され、受刑者は確実に社会に復帰します。

しかし、無期懲役を言い渡された人は一生涯、懲役刑の受刑者のままです。無期限の懲役刑なので、死亡するまで刑期が満了することはありません。

(2)仮釈放とは

懲役刑の判決が確定すると、原則として受刑者は刑期が満了するまで刑事施設に収容されます。しかし、一定の要件を満たす受刑者については、刑期が満了する前に仮に釈放して社会復帰の機会が与えられます。この制度のことを仮釈放といいます。

刑期が残っているので正式な「釈放」ではありませんが、保護観察に付され、一定の遵守事項を守ることを条件として、仮に社会内で生活することが認められるため、「仮釈放」と称されているのです。

仮釈放制度の趣旨は、受刑者の更生を促進することにあります。受刑者もやがて社会に復帰する以上、早い段階で社会に戻し、社会内で更生させることが望ましいといえます。

無期懲役の受刑者についても、仮釈放が認められています。

(3)無期懲役と終身刑との違い

終身刑とは、日本では採用されていませんが、被告人(受刑者)が死亡するまで刑事施設に収容する刑罰のことです。

アメリカなどの一部の国では、仮釈放がない「絶対的終身刑」が採用されています。絶対的終身刑は、一生涯、受刑者が刑事施設から出られる可能性がないという点で、日本の無期懲役と異なります。

ただ、終身刑を採用している国でも多くの場合は「相対的終身刑」が採用されており、こちらは国によって条件や内容が異なるものの、仮釈放が認められる可能性があります。

日本の無期懲役は、仮釈放が認められる場合があるため、相対的終身刑に分類されます。

(4)無期懲役と死刑との違い

死刑とは、被告人(受刑者)の生命を剥奪する刑罰です。

無期懲役は生命までは奪わず、身体の自由を奪う刑罰であることから「自由刑」と呼ばれますが、死刑は生命を奪う刑罰であるため「生命刑」と呼ばれます。死刑を言い渡された受刑者も刑事施設に収容されますが、「所定の作業」は課せられません。

無期懲役の受刑者は原則的に刑務所に収容されるのに対して、死刑の受刑者は拘置所に収容されるという違いもあります。

死刑は刑場の設置された刑務所又は拘置所で執行されますが、死刑の受刑者は拘置所で死刑の執行を待つのです。

また、死刑には仮釈放がないという点も、無期懲役との大きな違いです。仮釈放は、懲役または禁錮に処せられた者に改悛の状がある場合に認められるものだからです。

2、無期懲役で仮釈放が許される条件

無期懲役の場合に仮釈放が許される条件は、法律で定められています。ただし、実際には運用によってさらに厳しい条件が課せられていることに注意が必要です。

(1)法律上は10年で可能

法律上、次の2つの条件を満たせば、無期懲役からの仮釈放が許されます。

刑の起算日から10年が経過していること(刑法28条)
受刑者に改悛の状があること(刑法28条)

「改悛の状」が認められるかどうかは、受刑者に悔悟の情や改善更生の意欲があるか、再び罪を犯すおそれがないか、施設内での処遇よりも社会内で保護観察に付することが改善更生につながるか、など、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。

それだけでなく、重大犯罪を犯した無期懲役受刑者を仮釈放すると、社会にも何らかの影響を及ぼすおそれがあることは否定できません。そのため、社会感情がその受刑者の仮釈放を許すかどうかも重視されます。主に、遺族など被害者側の人たちの心情が考慮されます。

これらの要素を満たせば、刑の起算日から最短10年で仮釈放される可能性が理論上はあります。しかし、実際には以下の運用が行われているため、10年で仮釈放が許されるケースは事実上ありません。

(2)運用上は最低30年

法務省の運用では、無期懲役の受刑者の仮釈放については、刑の執行開始から30年が経過したときに初回の審理を開始するものとされています。

参考:法務省保護局長|無期刑受刑者に係る仮釈放審理に関する事務の運用について(通達)

その理由は、有期懲役の上限が30年であるため(刑法14条2項)、それより重い刑罰である無期懲役の受刑者を30年以内に仮釈放することは相当でないと考えられているからです。

逆にいえば、無期懲役の受刑者はどのように改悛の状が深まり、改善更生が進んだとしても、最低30年は刑の執行を受けた後でなければ仮釈放が許されないということです。

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