日本で予想されている地震の1つに「南海トラフ地震」があります。南海トラフ地震では最大震度7や海岸部での大津波も想定されており、社会に大きな影響を与えることから、政府は推進地域や特別強化地域を指定し防災対策を呼び掛けています。
しかし大きな被害が予想されていることは知っていても、具体的にどのエリアが危険かわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、推進地域・特別強化地域に指定されているエリアやどのような危険性があるか解説します。
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南海トラフ地震とは
南海トラフ地震とは、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界で、100~150年周期で発生している地震です。
前回発生したのは1946年の昭和南海地震で、すでに70年以上が経過していることから次の南海トラフ地震発生の可能性が高まっています。
南海トラフ地震では、西日本~東日本の太平洋側で最大震度7の強い揺れや10mを超える大津波が予想されています。
また、本州の内陸や日本海側のエリアにおいても震度4~震度6が予想されており、広範囲に大きな被害が想定されています。
引用:気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
引用:気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
南海トラフ地震で大きな被害が予想されているエリア
南海トラフ地震の地震・津波被害は広範囲に及ぶことが想定されています。
その中でも特に甚大な被害が予想されるエリアに対して、政府は「南海トラフ地震対策特別措置法」に基づき、「推進地域」と「特別強化地域」を指定し防災対策を推進しています。
対象地域となる市町村は、避難路の整備計画や防災訓練実施計画の策定などをおこない、南海トラフ推進計画、津波避難対策緊急事業計画を作成します。
ここでは、推進地域と特別強化地域について詳しく解説します。
■推進地域(南海トラフ地震防災対策推進地域)
引用:内閣府「南海トラフ地震防災対策推進地域の指定」
地震防災対策を推進すべき地域として、1都2府26県707市町村が推進地域に指定されています。
推進地域に指定されているのは上記の通り九州から関東の広い範囲で、四国は全域、近畿や東海についても内陸まで指定されています。
推進地域の指定基準は下記の通りです。
・震度6弱以上の地域
・津波高3m以上で海岸堤防が低い地域
・防災体制の確保、過去の被災履歴への配慮
引用:内閣府「南海トラフ地震防災対策推進地域の指定」
揺れや津波の被害が予想される地域のほか、災害発生時に周辺の市町村と連携することではじめて防災体制がとれる場合も、体制の確保を目的に推進地域に指定されています。
また、過去の南海トラフ地震で大きな被害を受けた地域は、再び被害を受ける可能性があることを想定し、指定基準に満たない場合でも推進地域に指定されています。
推進地域に指定されているエリアは、地震・津波被害が大きくなりやすいため、特に注意が必要です。
■特別強化地域(南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域)
引用:内閣府「南海トラフ地震防災対策推進地域の指定」
津波に係る津波避難対策を特別に強化すべき地域として、1都13県139市町村が指定されています。
九州から関東の太平洋側エリアに及んでいます。
特別強化地域の指定基準は下記の通りです。
・津波により30cm以上の浸水が地震発生から30分以内に生じる地域
・特別強化地域の候補市町村に挟まれた沿岸市町村
・同一府県内の津波避難対策の一体性の確保
引用:内閣府「南海トラフ地震防災対策推進地域の指定」
特別強化地域に指定されるのは、津波による甚大な被害が想定され、なおかつ津波の到達時間が早く避難する時間が少ない地域です。
また、津波が発生してから30分以内に30cm以上の浸水が予想されていなくても、周辺の自治体との津波対策の連携が必要な場合なども特別強化地域に指定されます。
特別強化地域に指定されている地域に住んでいる方は、南海トラフ地震による大津波への備えがより一層重要です。
南海トラフ地震以外にも大きな地震はたくさん予想されている
近年は、被害の範囲が広く切迫性の高い南海トラフ地震がピックアップされがちですが、南海トラフ地震以外にも下記のような巨大地震が予想されています。
・日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
・首都直下地震
・相模トラフ沿いの海溝型地震
・中部圏・近畿圏直下地震
日本には約2,000もの活断層があり、上記以外の大規模地震が発生する可能性もあります。
南海トラフ地震の推進地域や特別強化地域以外のエリアだから安全ということはなく、他の地震で被害を受ける可能性もあるため注意が必要です。
巨大地震に備えるために必要なこと
いつ発生するかわからない巨大地震や津波に備えるためにも防災対策を行いましょう。
地震に備えるためには、住宅の耐震化や家具の固定などハード面の対策が必要です。また、地震が発生してからスムーズに屋外に出るためには、日ごろから荷物を整頓して動線を確保しておくことも重要なポイントです。
津波に備えるためには、ハザードマップで避難所や津波避難タワーを確認しておきましょう。特に特別強化地域に指定されている場合は地震が発生してから津波が到達するまでの時間が短いため、行動が遅れてしまうと逃げ切れない可能性があります。
災害時にすぐに避難ができるよう、地震発生時の行動や安否確認の方法について家族と話し合っておきましょう。
また、避難生活が長期化する可能性もあるため備蓄品も備えておく必要があります。災害が発生してから後悔しないためにも今すぐ防災対策をしておきましょう。
〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。
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配信: 防災ニッポン
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