●母親と子どもの性格、傾向性、生き方、取り巻く環境、これらはみんな違う!
「子どもにとって3歳くらいまでの幼児期が人間の土台を作るとても重要な時期ということは、どんな母子にとっても間違いなく言えることです。しかし、その時期にお母さんが子育てに専念してずっと一緒に過ごさなければ悪影響を及ぼすとう考えは、鵜呑みにすべきではないと思います。そこには、個別のケースに応じていろいろな角度から考慮すべきことがあるのです」(親野先生 以下同)
その真意は、母親と子どもの性格、傾向性、生き方、取り巻く環境などの違いを考える必要があるのだという。
「子育てに専念したいお母さんもいれば、仕事をしながら子育てをしたいお母さんもいます。もし、仕事をしたいお母さんが仕事を断念して子育てに専念したことによってストレスをため、子どもに適切な接し方ができなかったらどうでしょうか? むしろ、子どもにとっては母親と一緒に居ることが苦痛になってしまい、それでは本末転倒になってしまいます」
●母親の性格・傾向性・生き方に合った環境づくりをしよう!
さらに、母親の性格・傾向性・生き方の違いもあるという。
「子どもとずっと一緒にいて幸せを感じられるお母さんもいれば、適度な距離をもつことで愛情をより実感できるお母さんもいます。(前者がのちのち子離れで苦労することもありますので、どちらがよいということでもありません)ですから、一概に母子がずっと一緒に過ごすこと=幸せとはきめつけられないのです」
つまり、お母さんのイライラを一日中受けるのであれば、父親、祖父母や保育士さん、地域の人など周りのサポートを受けながら子育てするほうがはるかに子どもにとっては幸せなのです」
また、子どもの性格・傾向性にも違いがあることも忘れてはいけないと、親野先生は話します。
「親と離れて大丈夫な子、まだ離れるのは難しい子もいます。保育園も大人数のところ、少人数のところなど、向き不向きがあります。つまり、一般論はあくまでも一般論で、それをふまえたうえで、母子が幸せに過ごせる環境づくりをし、子どもが安心して愛情に満たされた日々を送れるかどうかが何より大事ということを忘れないでください」
“3歳児神話”を信じるにしても、否定するにしても、最終的に大事なことは“自分はどうか? わが子はどうか?”という視点で決断をしなければならない。それが最大のポイントのようです。
(構成・文/横田裕美子)