少年犯罪と家庭環境の関係、子を犯罪者にしないために親ができること

第3回 いい子がだった…が、なぜ犯罪を犯したのか?
子育てをしていると、テレビから流れてくる少年犯罪事件のニュースに心を痛めたり、不安になることもあるのではないでしょうか? なかには“いい子だった子が…”というケースも。もちろん、どんな親御さんも皆“ウチの子に限って…”と思うものですが、決して人ごとではないことも事実です。犯罪を犯す子にはいったい何があったのでしょうか? そして、わが子を犯罪者にしないために、親として何ができるのでしょうか?

「犯罪を犯す理由については、これが理由と言いきることは難しいです。それぞれにケースが違い、様々な要素が重なって犯罪に至るからです。しかし、犯罪者の多くに共通することはあります。それは、生きていくうえで何より大事な“自己肯定感”、“自尊感情”を育んできていなかったということです。自己肯定感が低く、自尊感情を持てなければ人は自暴自棄になり、その感情は他者に向けられたり、犯罪行為に向かってしまうのです」

そう話すのは、駿河台大学心理学部教授の小俣謙二先生。では、自尊感情とはどのように育まれるのだろうか?

●幼少期の親子関係が、生きる上での土台となる“自尊感情”を育む

「“自分は愛されている”“存在する価値がある”という自己肯定感や自尊感情のベースとなるのは、やはり養育者である親との関係なのです。つまり、小さいころにどれだけ愛されるかなのです。家に例えれば、それが大事な土台になるわけで、その土台がもろかったら不安定でいい家は建たないですね? だから、幼少期の親子関係のなかでたくさん抱きしめてやり、愛してやることで自尊感情を育て、しっかりした土台を作っておくことが大事なのです」(小俣先生 以下同)

ただし、幼少期に家庭環境に恵まれなかった子の場合でも、その後のサポート次第で救われるという。

「もし土台がゆらゆらとしていたとしても、あとになって周りの人がつっかえ棒をしてやれば、救われるわけです。つまり、親子関係や周りのサポート次第で犯罪は抑止できるのです」

子を犯罪者にしないために親ができること

●家庭が子どもの心理的ベースキャンプになっていますか?

犯罪には大きく分けて2つのパターンがあると、小俣先生は話します。

「ひとつは、自己肯定感や自尊感情を持たない子が自暴自棄で起こす犯罪。もうひとつは、親子関係や人間関係が良好な子が、思春期などの成長段階に興味やスリルで起こす犯罪。後者の場合は、多少の紆余曲折があったとしても、ベースがしっかりしているので、その都度、親や周囲の人が真剣に向き合って叱ってやれば、数回でもうやらなくなるものです。しかし、前者の場合はベースがしっかりしていないために非常に深刻化してしまうのです」

わが子がそうならないためにも、日々の子育ての重要性をしっかり理解しておくことが大事だという。

「心理学では、“心理的ベースキャンプ”“居場所”などとも言われるのですが、ありのままの自分を受け入れてくれる場所、素の自分で居られるところ。家庭、地域、友人…そういう場所があることが子どもたちが健全に育っていく環境なのです。どうか、お子さんのいい面も悪い面もすべてを受け入れ愛し、家庭が心理的ベースキャンプになるように心がけてください。親御さん自身が何か問題を抱えていて、なかなかそういう環境を作ってやれない…ということであれば、一人で抱え込まずに、早い段階で周囲の人やサポート機関に相談するようにしてください」

子どもの問題は“家庭の反映”なのだそうです。今一度、親子関係や家庭環境を振り返って、お子さんにとっての心理的ベースキャンプになっているかを見直してみてください!
(構成・文/横田裕美子)

お話を伺った人

小俣謙二先生
小俣謙二
駿河台大学心理学部教授
犯罪問題(とくに暴力や攻撃、犯罪被害者問 題、防犯活動など)を犯罪心理学と社会心 理学の両面から研究。また、子ども部屋問題や 高層住宅問題など、居住環境についても研究 している。日本犯罪心理学会理事、同編集委 員、日本環境心理学会会長、犯罪や地域の 防犯活動に関する講演活動、犯罪に関する新 聞、TVニュースなどマスメディアのコメントなど多 方面で活躍。
犯罪問題(とくに暴力や攻撃、犯罪被害者問 題、防犯活動など)を犯罪心理学と社会心 理学の両面から研究。また、子ども部屋問題や 高層住宅問題など、居住環境についても研究 している。日本犯罪心理学会理事、同編集委 員、日本環境心理学会会長、犯罪や地域の 防犯活動に関する講演活動、犯罪に関する新 聞、TVニュースなどマスメディアのコメントなど多 方面で活躍。