「こんな明るい実話があるの?」と撮影中は疑っていました
若年性認知症を扱った作品には悲しいイメージを持っていましたが、『オレンジ・ランプ』は、前向きで明るいお話です。いま、母が認知症の祖母の介護をしていることもあり、この作品を通して、認知症になっても明るい世界があることを伝えられたらと思い映画のオファーを受けました。
撮影中は、実話だと分かっていながらも「こんなにいい人ばかりの世界は奇跡で、明るい話はファンタジーでは?」と、少し疑っていたんです(笑)。でも試写後に、本作のモデルとなった丹野智文さんが号泣しながら「そのままだ」と伝えてくださって。会社も家族も友達も、みんなが理解してくれるやさしくて明るい世の中が本当にあることに驚いたと同時に、とても励みになりました。この奇跡の実話が当たり前になる世の中になればいいなと思います。
真央という役柄について、監督からは「とにかく明るい奥さんを演じてほしい」と言われていたんです。でも、どの程度明るく演じればいいのか、どこまで感情を出せばいいのかという加減はすごく悩みました。私だったらイラッとしてしまうようなことも、真央は怒らないんですよ。夫に対しても心配なはずなのに「自分のことは自分でやってもらう」と決断したり。本当に強くて前向きな女性だと思いました。
丹野さんには、撮影中に実際にお会いしました。奥さまの話などはあえて聞かず、世間話をしていました。言われなければ若年性認知症だと分からないくらいで、本当に驚きました。
作品を通して知ってほしい認知症の方への言葉や行政の支援
丹野さんを演じた和田正人さんとは2度目の共演でした。役柄についてはあまり話をしなかったのですが、和田さんご自身がお父さんでもあるので、撮影中は安心感がありましたし、とても頼もしかったです。1人の人間として積み重ねてきたものが、お芝居にも出ていると感じました。
真央がここまで明るくいることができたのは、2人の子どもの存在があったからだと思うんです。子どもたちが真っすぐな気持ちでお父さんを心配するシーンには心を動かされました。
私自身、昔から家族の中では頼もしい一員でありたいと思っています。何かあった時に、私が指針を示せるようになれたらいいなって。夫は、一番の親友でもあります。秘密がなさすぎるほど、何でも話せる関係。だから、何があっても大丈夫だと思っています。
作品を通して思ったのは、認知症について知っておくのが大事だということです。どんな言葉が認知症の方の自尊心を傷つけ、どういった行政の支援があるのかを、この映画を見て知ってもらえたらと思います。相談できるところがあると心に留めておけば、実際に自分の身に起きた時に、だいぶ違いますよね。
いつも明るい真央が、自分の気持ちがあふれ出し泣いてしまうシーンがあります。介護をする人は、どうしても自分のことが後回しになってしまうと思うんです。でも、認知症に限らず、どんな介護であっても、1人で抱え込まず、我慢しないことが大事だと思います。
配信: たべぷろ